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【特集】原油高の抑制を目指す米国、標的となるベネズエラ <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

●原油高抑制がトランプ米政権の至上命題

 先週、トランプ米大統領は「 原油価格が高すぎる」とし、石油輸出国機構(OPEC)に増産を呼びかけた。発言を受けて一時的に売りが集まったものの、その翌日にブレント原油やウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)など指標原油は年初来高値を更新した。トランプ米大統領の意向に反して、OPECが減産を継続する見通しで相場は上向きである。

 原油高はOPECの減産だけが手がかりではない。米国がイランやベネズエラに制裁を課し、両国の原油が流通することを妨げていることも背景にある。トランプ米政権が原油相場を刺激すると同時に抑制しようとしていることはこれまで通りだが、昨年とは異なり、トランプ米大統領の口先介入は功を奏していない。

 WTIが60ドルの節目を超えたなかで、トランプ米政権は原油高を妨げる次の手段を講じるだろう。ユーロ圏や中国などに続き、米国でも景気減速の兆候が鮮明になっており、原油高は経済にとって余計な向かい風となる。二期目を目指すトランプ米大統領にとって、原油価格を抑制し、米景気拡大を維持することは至上命題である。

●イラン制裁を緩和すれば価格抑制にはなるが

 原油高を阻止する最も効果的な手段は、イランに対する石油制裁の柔軟化である。現在、米国はイラン産原油の購入を一部の国について時限的に許容しているが、これを継続する、あるいはさらに石油制裁を緩和すれば、原油価格を圧迫する可能性が高い。昨年末にかけての原油安も米国の対イラン制裁の緩和が背景にある。

 ただ、イスラエルの最大の敵であるイランに対する制裁を今後も緩和すると、2期目の米大統領選に響く恐れがある。米国のイラン制裁は同国経済の弱体化につながっているにせよ、原油収入という生命線は絶たれておらず、イランの核や弾道ミサイル開発を制限し、シリアなど紛争地域への介入を中止させるという米国の目標は達成されていない。米国がイラン制裁を調整するにしても、選択肢は限られるのではないか。

●ベネズエラ制裁に活路

 一方で、ベネズエラ制裁については様々な選択肢があり、独裁的なマドゥロ政権が打倒されるまで米国は制裁を強化できる。ベネズエラ市民を救うのであれば、あまりためらいは必要ない。マドゥロ政権は、人道的支援物資の受け入れを拒否し、国際的な非難を浴びており、世論は米国の味方である。ベネズエラでは医療品や食料品、飲料水など幅広い物資が不足し、難民の発生源となっている。最近では大規模な停電が続き、経済状況は末期的であるという表現では言い尽くせない。米国は反マドゥロ政権の旗振り役であるグアイド国会議長を暫定大統領であると認めつつ支援し、現政権の転覆を目指している。

 マドゥロ大統領が現在の地位から退く兆しは今のところまったくなく、ロシアからベネズエラに兵士が派遣されるなど、軍事的な緊張感が高まってきているが、ベネズエラで西側寄りの政権が発足し、石油産業の立て直しが図られるなら、原油価格の抑制と安定化に寄与することはほぼ間違いない。ベネズエラの原油生産量は日量100万バレル程度まで落ち込んでいるものの、ピークで日量300万バレル近くあり、適切な設備投資が行われるなら、産油国として生まれ変わる。

 もちろん、ベネズエラで親米政権が発足したところで、財政再建に伴う資金は巨額である。数百億ドルにのぼるとの試算もある。生産量が回復するにしてもすぐにはありえない。ただ、マドゥロ政権に転覆の兆しが出てくるだけでも、原油相場は素直に反応するだろう。米国が矢継ぎ早にベネズエラ制裁を繰り出しているのは、原油価格や景気、大統領選をにらんでのことだと思われる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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