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【特集】ピクスタ Research Memo(6):パンアジアンコンテンツの開発・拡充を柱に、海外事業の成長加速を図る

ピクスタ <日足> 「株探」多機能チャートより

■中長期の成長戦略と進捗状況

3. 海外PIXTA事業
ピクスタ<3416>の海外展開は、現状はPIXTA事業によることを基本方針としている。PIXTA事業は国内での事業運営を通じた知見やノウハウの蓄積が進んでおり、それを海外市場において応用することで海外事業の成長スピードを上げる狙いがある。地域的には韓国、台湾、タイが当面のターゲット地域となっている。

韓国はストックフォトの市場規模としては日本、中国に次いで第3位の潜在的市場規模があり、同社が最も高い期待を寄せている。この市場を攻略すべく、同社は2017年3月に韓国のTopic Images Inc.を子会社化し、同年7月にPIXTA韓国語版をリリースした。当事業はTopicが運営主体となっているが、韓国ローカルのクリエイターやコンテンツの獲得は順調に拡大してきている模様だ。

台湾市場は、市場規模は韓国に比べて小さいものの事業基盤は確立できていることもあって、順調な成長が続いている。2017年12月期下期から強化したプリペイド販売が好調なほか、定額制プランも順調に伸びている模様だ。また、タイは市場規模が3ヶ国の中で最も小さい一方、将来の潜在的な市場規模は一定程度見込めるため、サイトやサービスのあり方、マーケティング戦略、コンテンツの充実などについてPDCAサイクルを回しながら進めている状況だ。

こうしたなかで、今後のアジア展開は、日本国内のPIXTA事業とより一体的な運営を進め、国内外の枠を超えた、言わば“アジアPIXTA事業”として成長を目指す形になっていくものと弊社では推測している。

この背景には、売れ筋のコンテンツとして、“パンアジアンコンテンツ”、すなわち、日本や中国といった特定の国ではなく、西洋に対する“東洋”といった、アジア全体に共通するようなファッションやメークの写真が人気化していることがある。現状はそのスタンダード的なポジションに韓国女性のファッションやメークが位置しているようだが、韓国に特有なわけではなく、台湾やタイでも共通して見られる現象となっている。こうした現状に鑑み、同社はアジア全域のクリエイターに対してパンアジアンコンテンツの制作の指導・教育を強化し、同時に、日本における拡販などを進めていく方針だ。

なお、TopicにはPIXTA韓国語版の運営事業のほかに、ライツマネージドと呼ばれる高価格帯のコンテンツライセンス事業がある。2018年12月期決算から同社は売上高内訳の情報開示の区分けを一新したが、その中で「韓国既存事業」とされているのがこれだ。こちらはPIXTA事業とは異なるモデルであり、現在、事業の縮小を進めている。2018年12月期から2019年12月期にかけては全社ベースの売上高の伸びを抑制する形となるため、注意が必要だ。


2018年の撮影件数はニューボーンフォトの好調もあり前期比1.8倍で着地。2019年は新規ジャンルの確立にも注力
4. fotowa事業
同社は2017年12月期からの先行投資計画において、fotowa事業を主たる強化対象事業の1つと位置付け、広告宣伝強化による認知度向上、全国展開、フォトグラファーの誘致・育成などに取り組み、出張撮影プラットフォームとしての価値向上を図ってきた。結果的に2018年12月期第4四半期に秋田・山形・佐賀・宮崎の4県が加わり47都道府県でのサービス提供体制が整った。また登録フォトグラファーも順調に増大した。

2018年12月期は期初に、撮影件数において前期比3倍増となる15,000件を打ち出して強気で臨んだが、実績としては前期比1.8倍の8,417件で着地した。弊社では、3倍増はともかく2倍増は十分達成可能とみていたが、夏場の猛暑によるお宮参り撮影の不調や台風・地震などの自然災害の影響もあって、想定を若干下回ることとなった。

fotowa事業の成長戦略で重要なことは、何か特別な施策よりも出張撮影ニーズの掘り起こしだと弊社では考えている。この点は同社自身も強く感じている模様で、いくつか当初はなかった需要の掘り起こしに成功している。その好例がニューボーンフォトだ。これは生後28日以内の赤ちゃんを撮影するもので、この時期の赤ちゃんは外出が難しいため、出張撮影とピタリとかみ合う。2018年12月期実績では、撮影件数が前年比で4.5倍に増加した。

また、カップルやペット、シニア、法人なども、当初の“子供写真館市場の代替”という狙いを飛び越えたニーズであるが、これらも着実に増加している。

こうしたニーズの多様化に応じて、料金メニューやサービスメニューの見直し(現行は七五三やお宮参りを念頭に料金や写真のカット数が設定されていると考えられるが、イベントの中身によって参加人数や要求度合い、撮影対象人数なども変わってくると考えられる)なども併せて行うことで、収益拡大につなげることができると弊社では考えている。

2019年12月期について同社は、2018年12月期実績を踏まえて一段の集客強化に努めるほか、機能・サービスの向上に取り組む方針だ。

集客強化では、オフラインでのイベントや広報露出での認知度拡大、共同イベントやギフト券提携の拡大などに取り組む計画だ。

機能・サービスの向上ではプリント商品の追加でユーザー満足度と客単価を向上させるほか、友だち紹介機能の追加により口コミの拡大を狙う計画だ。

弊社では、これらの施策は非常に的を射たものと考えている。ギフト券連携など外部との提携は提携先の知名度・集客力を活用できるのが魅力だ。プリント商品の追加も重要で、fotowa事業で唯一欠けていたピース(既存の写真館に負けていた部分)がここだった。ここを手当てすることで、写真館とfotowaを比較検討して最終的に写真館を選んだ層を取り込める可能性が出てきた。

同社の新規事業の中ではfotowa事業の収益貢献が最も近いと考えられる。仕組みづくりを終えれば追加費用はほとんどかからないため、売上高が一定ラインに達して一旦黒字化すれば、その後は安定的に収益貢献が期待できる。これまでの取材等の調査を通じて、弊社では2019年12月期中の単月黒字化は十分可能だと推測している。


事業モデルが確立し、業容拡大に向けた取り組みを本格化へ
5. Snapmart事業
Snapmart事業についてはこれまで、あまり積極的なプロモーションはせず、試行錯誤を重ねてベストプラクティスを追求し、その上で事業モデルを確立するという方針で運営してきた。その結果、マーケットプレイス事業とオンデマンド撮影サービスの2つの事業モデルがほぼ固まってきたこともあり、2019年12月期は一段の成長を目指す方針だ。

具体的な第1歩として、まずはクリエイター基盤の拡大に取り組む予定だ。現状は、スマートフォンのiPhone向けのアプリしかリリースしておらず、片肺飛行状態にあった。今期中にAndroid用アプリをリリースしてクリエイター基盤を拡大させ、またクリエイターコミュニティを強化して、Snapmartの知名度アップや活性化を図る方針だ。

販売面では、マーケットプレイス事業では定額制など料金プランのファインチューニング等を行って訴求力を高める方針だ。一方、オンデマンド撮影サービスでは撮影クリエイターの増大に合わせて、企業側に対する認知度向上の働きかけ(アウトバウンド営業の強化や代理店の開拓など)を進めることを計画している。

Snapmart事業の成長に向けた施策がいよいよ本格的に動き出すということで、今後の進展が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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