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【市況】カナダドルに政局含みの先安観【フィスコ・コラム】


主要通貨のなかで比較的安定した値動きのカナダドルに、目先弱含む可能性が浮上しています。アメリカの金融政策に影響を受けやすいほか、トランプ政権の原油高けん制に加え、珍しい政局リスクにより対ドルで2年ぶり安値が視野に入りました。


主要国の中銀が金融正常化レースから次々に脱落するなか、カナダ銀行(中銀)は利上げ方針を維持してきました。が、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)の利上げゼロ観測が広がり、カナダも影響を受けざるを得ない状況です。カナダ銀は7日の定例会合で、予定通り政策金利据え置きを決定。同時に、国内経済の減速懸念で今後の利上げに関しては不透明性が増したとし、当面見送る公算です。


カナダの足元の経済指標をみると、消費者物価指数(CPI)は昨年7月の+3.0%をピークに鈍化傾向を示しています。12月は堅調な内容となりましたが、今年1月は予想と前回を下回るなど失速ぎみです。10-12月期国内総生産(GDP)は下振れ予想よりも強かったものの、小売売上高などで消費の弱さが目立ち始めました。やはり、経済のつながりが深い隣国アメリカの影響を受けているのでしょう。


カナダドルとの相関性の高いNY原油先物(WTI)は昨年末にかけて1バレル=42ドル台まで値を下げた後、主要産油国の減産で持ち直し、足元では55-56ドル付近で推移しています。中銀は景気・物価見通しの試算にあたり50ドルを前提としていますが、トランプ大統領の原油価格引き下げ圧力を考慮すると、現在の水準を大きく上回るシナリオは描きにくいのではないでしょうか。

カナダドルの対ドルレートは、昨年12月の原油安を背景に1ドル=1.36カナダドル台まで弱含みましたが、原油価格の持ち直しとFRBの引き締め休止観測で1.3250カナダドルを挟んだ水準に回復。しかし、その後は方向感が定まっていません。国内景気や金融政策、原油価格といったカナダドルへの下押し圧力に政治リスクが加われば、再び下落基調に振れトランプ政権からにらまれる可能性が出てきます。


トルドー政権ではこの1カ月の間に2人の閣僚が辞任し、そのうちの1人で司法相から退役軍人相に降格後に辞任したウィルソンレイボールド氏は議会での証言で、贈賄の疑いの建設大手を不起訴とするようトルドー首相と側近から圧力を受けたと述べています。それが政界を揺るがす事態となり、野党はいっせいにトルドー首相の辞任を求めるなど、支持率低迷に悩む政権にとっては大きな痛手となっています。


カナダでは昨年、オンタリオ州とケベック州で議会選が行われ、政権与党の自由党がいずれも敗北する波乱がありました。特にケベック州の選挙はポピュリスト政党が過半数を獲得しており、リベラル国家のカナダにとってはかなり衝撃的な結果になりました。今年10月の総選挙はそうした流れもあり、トルドー政権には強い逆風となりそうです。カナダドルにも試練の時期かもしれません。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《SK》

 提供:フィスコ

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