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【特集】システム ディ Research Memo(5):コンプライアンス経営の推進、ガバナンス強化の流れの中、順調な拡大が続く

システムディ <日足> 「株探」多機能チャートより

■事業部門別動向

3. ソフトエンジニアリング事業
ソフトエンジニアリング事業では幅広い業種の民間企業や金融機関、公益法人、学校法人等に、文書・契約書等の管理システム等を提供している。具体的商品としては、『規程管理システム』や『契約書作成・管理システム』、『マニュアル作成・管理システム』などがラインナップされている。ソフトエンジニアリング事業の業容拡大を後押しするのは、官民の別や業種を問わず、コンプライアンス経営やコーポレートガバナンスの強化が、経営上、組織防衛上の最重要課題になってきていることだ。

2018年10月期の売上高は前期比16.2%(24百万円)増加の174百万円となった。前述のコンプライアンス経営の推進やガバナンス強化の流れのなか、システム ディ<3804>製品は高機能と高コストパフォーマンスが評価され、順調に販売を伸ばした。2018年10月末の導入件数(法人数ベース)は358件と2017年10月末の313件から順調に増加した。

今後の成長戦略として期待されるのは、金融機関と官公庁や地方自治体の公共部門だ。金融機関については当局からのライセンス(免許)を得て行うという事業の性質上、コンプライアンス重視の姿勢は一般企業よりも強いと考えられ、同社製品へのニーズもそれだけ大きいと考えられる。官公庁や地方自治体の公共部門については、文書管理の適正化のニーズが高まると考えられ、同社の文書管理システムはそこにフィットすると期待される。


公立高校(都道府県レベル)での高シェアを生かして小中学校向け(市町村レベル)の市場でも導入学校数が本格的に伸びるステージに
4. 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小・中・高校向けに校務支援システム『School Engine』を提供している。公立学校のほうが予算の制約が厳しく、中小規模の学校が多いこと、さらに全ての学校に均一のシステムを提供したいという教育委員会に適合すべく、同社では『School Engine』をクラウドサービスで提供している。競合の中にはパッケージソフトで提供しているところも多く、クラウド対応をしているのは業界の中では同社だけという状況だ。

同じ学校向けソフトウェア事業であっても公教育ソリューション事業は提案先が県あるいは市町村の教育委員会であるという点で、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業と大きく異なる。公教育ソリューション事業のモデルでは、商談がまとまれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入される流れとなるため効率が良い。しかし一方で、公共向けビジネスでは入札という関門がある。

こうしたなか同社は、機能性に加えて完全クラウドサービスによる導入コスト低減を強みとして導入自治体を拡大させてきた。公立高校は一部の大都市を除いて都道府県立が基本となっている。その中で同社は18県・4政令指定都市を始めとして全国の教育委員会に納入し、公立高校においては市場シェア50%(都道府県数ベース)を獲得している。

2018年10月期の売上高は、前期比20.1%(83百万円)増の500百万円となった。トップシェアを有する公立高校案件で順調に件数を伸ばしたことに加え、大規模自治体を含む市町村の小中学校案件の導入件数が伸び、大幅増収を達成した。2018年10月末の導入学校数は2,001校で、1年前の1,334校から50%の増加となった。

弊社では、公教育ソリューション事業の成長余地は大きく、現状から4~5倍程度は十分に可能だとみている。この見方は従来から変わっていない。

公立高校は基本的には都道府県の教育委員会が管轄しているが、政令指定都市(全国20市)や中核市(全国48市)などの市立高校も対象となる。同社のシステムは18県・4政令指定都市において導入されており、都道府県数ベースのシェアは約38%(18県/47都道府県)だ(何らかの校務支援ソフトを導入した都道府県ではシェアは約50%)。都道府県レベルの教育委員会はクラウドサービスに対する理解が進んでおり、同社のサービスの機能やコストパフォーマンスが素直に評価されたことが高シェア獲得につながったとみられる。

公立高校についてはシステムの導入を決定していないところが10都道府県ほど残っているとみられる。同社はここについてもシェア50%の達成を目指して5都道府県前後の受注獲得に取り組むとみられるが、都道府県数ベースではゴールに近づきつつあるのは事実だ。

それに対して小中学校向けの市場は依然として成長余地が大きい。小中学校は基本的に全国の1,741市町村(東京の23特別区を含む)の教育委員会が交渉相手となるが、この市場では同社のシェアは高校に比べて低い。先行・競合企業が10社前後あり、同社は5番手のポジションとみられる。苦戦している背景の1つはクラウドサービスという同社の提供形態だ。競合他社がパッケージソフトの売り切り(利用者側から言えばオンプレミス型の運用)であるのに対して、同社のサービスはクラウド型であり、セキュリティ面での懸念からクラウド導入への抵抗感が都道府県レベルと比較してまだ根強く残っているとみられる。また市町村によって意思決定メカニズムがそれぞれ微妙に異なるケースが多い点も、拡販を妨げる一因となっているもようだ。

しかしながら、こうした状況も着実に変わりつつあるのもまた事実だ。クラウドサービス自体は日常生活において様々な形で浸透してきている。また、少子化で学校当たりの生徒数が減少していく流れのなかでは、オンプレミス運用(ソフトの自前運用)よりもクラウド型の方が低コストであるのは明白だ。こうしたクラウドの利点の理解が深まれば、市町村レベルにおいても同社のシェアは着実に拡大していくと弊社では考えている。

加えて、同社が都道府県の教育委員会で約50%のトップシェアを有している点も、有利なポイントだと考えられる。市町村立の小中学校は当該市町村の教育委員会の管轄であることは前述のとおりだが、県下共通施策や人事に代表されるように県の教育委員会が市町村の教育委員会に関与することも少なからずあり、校務支援ソフトについても県の教育委員会の主導によって県下の小中学校がソフトの選定・導入をするケースが増えつつある。公立高校向け市場で高シェアを有する同社は、それだけ有利なポジションにあると考えられる。

文部科学省の平成30年度学校基本調査によれば、2018年5月1日現在で公立小学校は19,591校、公立中学校は9,421校、公立高校は3,559校ある(いずれも国立は含まない)。全体で32,571校の市場において同社製品の導入学校数は2,001校であり、伸びしろは大きいと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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