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【特集】ネットイヤー Research Memo(4):2019年3月期は営業利益、経常利益で3期ぶり黒字転換の見通し

ネットイヤー <日足> 「株探」多機能チャートより

■今後の見通し

1. 2019年3月期業績見通し
ネットイヤーグループ<3622>の2019年3月期の連結業績は売上高で前期比1.5%減の6,100百万円、営業利益で80百万円(前期は51百万円の損失)、経常利益で79百万円(同53百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で前期比82.1%減の56百万円と期初計画を据え置いている。

売上高はrakumo売却の影響で130百万円の減収要因となるため、実質ベースでは微増収となる。期初計画では、同社単独ベースで前期比1ケタ増収を見込んでいたが、当第2四半期累計で10%減収とやや弱含んで推移しており、下期も収益改善を優先して受注活動を行っていることから、通期では計画をやや下回る可能性がある。ただ、子会社のトライバルメディアハウスは受注が好調で、期初計画を上回る勢いとなっており、全体ではほぼ会社計画どおりとなる見通しだ。

営業利益に関しても売上高の傾向と同様に、同社単独ベースでは40百万円程度の黒字見込みから若干下振れする可能性があるものの、トライバルメディアハウスの増益でカバーして、3期ぶりに黒字転換する見通しだ。rakumo売却の影響を除けば、営業利益は前期比で141百万円の増益となる計算だが、前期は不採算プロジェクトで2億円の損失となっていたため、不採算プロジェクトが大幅に縮小するだけでも計画の達成は可能と見られる。なお、人件費については人員が前期末比で数名程度減少する見込みのため、横ばい水準となるものの、教育研修費用やマーケティング費用等が増加する見通しだ。

下期の取り組み方針としては、プロジェクトの収益性改善施策を継続していく方針で、特に、外注比率の低減と内製率の向上による収益性改善を推進していく方針となっている。当第2四半期累計の単独ベースの外注比率は44%と前年同期比で1ポイント低下しているが、社内のエンジニアを活用することでさらに引き下げていく考えだ。このため社内の教育研修をより充実させ、エンジニアのスキルアップも図っていく。ここ最近は難易度の高いプロジェクトのニーズが増えており、外注依存度も高くなっていたが、社内エンジニアのスキルアップを行うことで、内製率も上昇していくものと予想される。


売上拡大施策により再成長軌道に乗せる
2. 売上拡大施策
同社では収益性改善施策によって企業体質を筋肉質なものに変えた後で、売上高を拡大していくフェーズに展開していく計画となっており、その種まきも始めている。具体的には、2018年5月にEUで施行されたGDPR(一般データ保護規則)に企業のWebサイトが対応しているかを診断する「GDPR対応簡易調査サービス」の提供を同年8月に開始したほか、11月にはBtoC企業向けに「カスタマージャーニー分析サービス」の提供を開始しており、これらサービスをフック役として新規プロジェクトの受注を獲得していく戦略だ。このうち、「GDPR対応簡易調査サービス」についてはサービス料金が10万円からと低料金となっており、業績への影響は軽微だが既に数社から受注を獲得している。また、「カスタマージャーニー分析サービス」とは、今までマーケティング担当者の知識や経験、発想に基づいて作成していた「カスタマージャーニーマップ」を、顧客の行動データを収集したうえで定量的・科学的に分析を行い、典型的な行動パターンを抽出して可視化していくサービスとなる。企業は同サービスを活用することで属人的なマーケティング施策ではなく、データ分析に基づいた最適なマーケティング施策を打つことが可能となる。

顧客の行動データはWebサイトやモバイルアプリ上の回遊パターンだけでなく、電子メールへの反応やリアル店舗での来店、購入記録など全ての行動履歴をデータとして収集し、ビッグデータ分析により複数の行動パターンを抽出、それぞれの特性に合わせた最適なマーケティング施策を打てるようにする。同社ではデータを収集・分析するためのデータマネジメントプラットフォームの運用サービスも行っており、プロジェクトの開発から運用サービスも含めて受注できれば受注単価も上昇することになる。

また、2018年11月には企業のサービス開発を支援する「デジタルサービスデザイン部」も新たに組織化した。例えば、企業のブロックチェーン技術を活用して何か新しいサービスを開発したいといった曖昧な要望に対して、同社のエキスパート人材が、プロジェクトのミッション設定や実現可否の検証、費用対効果などの課題解決を行い、プロジェクトの実現に向け支援を行っていく部署となる。プロジェクトの企画・構想段階から企業に入り込むことで、その後のプロジェクト受注につなげていく取り組みとなる。

同社の業績は、大型開発プロジェクトが一巡した2016年3月期以降、その穴を埋めるべく採算をやや度外視した受注活動を行った結果、不採算プロジェクトが発生、その収束に追われて新規受注活動が行えず、さらに業績が悪化するといった負のスパイラルが続いてきた。しかし、2019年3月期でプロジェクトの収益改善にほぼ目途が立ち、採算を重視した受注活動を進めていくことで、2020年3月期以降は再成長フェーズに移行していくものと期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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