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【特集】アジア投資 Research Memo(6):高採算が期待できるプロジェクト資産を積極的に積み上げる投資方針を実行

アジア投資 <日足> 「株探」多機能チャートより

■日本アジア投資<8518>の活動実績

1. PE投資の実績
PE投資については、2社(国内1社、海外1社)に対して合計106百万円(前年同期は9社に対して合計653百万円)の投資実行を行った。「JAIC企業育成ファンド」(ベンチャー企業向けセカンダリーファンド)及び「瀋陽ファンド」(中国瀋陽市の成長企業向けファンド)からの投資となっている。

2. 再生可能エネルギー事業投資(プロジェクト投資)の実績
既に企画・建設中のプロジェクト(2件)を含め、5件に対して合計1,353百万円(前年同期は8件に対して合計1,512百万円)の投資実行を行った。そのうち、メガソーラープロジェクトへの投資実行は3件(新規2件、既存1件)。2018年9月末の保有プロジェクトは企画中のものも含めて合計19件(81.3MW)※となっている。また、メガソーラー以外の再生可能エネルギーへの投資実行は、風力1件(既存)、バイオガス1件(新規)となっており、2018年9月末の保有プロジェクトは木質バイオマス1件(売電中)、バイオガス2件(建設中)、風力1件(企画中)の合計4件(19.6MW)が進行中である。

※合計19件(81.3MW)のうち、売電中が12件(29.3MW)、建設・企画中が7件(52.0MW)という進行状況である。特に、2018年4月から10月までの売電開始プロジェクトは5件(12.5MW)となっている。


3. その他活動実績
(1) 国内IPO の実績
上期における国内IPO実績はなかったが、2018年10年30日にはVALUENEX<4422>※が東証マザーズに上場した(初値換算の時価総額118億円、上場直前の同社保有比率は3.76%)。

※特許・文書解析ツール「TechRadar」、「DocRadar」のASPライセンスサービス及びこれを用いたコンサルティングサービスを提供。


(2) PE投資向けファンド設立の動き
新たなファンド設立は実現しなかったものの、前述のとおり、2017年6月26日に設立した事業承継型バイアウトファンドへの追加出資(600百万円)を2018年6月に受け入れたことに加え、2018年10月にも追加出資(1,400百万円)を受け入れ、その結果、ファンド総額30億円を達成した(2018年10月末時点)。また、2019年3月以降の設立に向けて、2つのファンド※が企画中となっているようだ。

※具体的には、日本各地の中小企業のグローバル化支援(海外へのビジネス展開支援、及びインバウンド需要の取り込みによる成長支援)、及び中国市場での成長が期待される日本のハイテク企業の支援がテーマとなっている。


(3) 再生可能エネルギープロジェクトの売電開始事例
2018年4月から10月までに5件(12.5MW)のプロジェクトが売電を開始した。そのうち2件※1は水上発電所となっており、造成工事のコストが不要なことに加えて、高い発電効率を実現※2できるところに特徴がある。また、別の2件については、太陽光を農業と発電でシェアするメガソーラーシェアリング発電所という新しいスタイル※3を取っており、こちらも造成工事がほとんど不要であるとともに、日照条件にも優れている。また、発電事業収入の一部を20年間にわたり営農支援費用として支払うことで、地域創生にも貢献できる。様々なパートナー企業との協業等により、同社ならではの価値創出を実現しているところは高く評価できるとともに、今後のプロジェクト投資における方向性を示す事例として捉えることができる。

※1 香川県さぬき市中王田(なかおうだ)池、及び東王田(ひがしおうだ)池の2ヶ所。
※2 周辺に遮断物がないため日照条件が良好である上、水面の冷却作用でパネルの温度を低く保ち、発電効率を維持できるところに特徴がある。
※3 農地に支柱を立て一定の間隔を空けてパネルを設置し、その下で大型農機にて大麦を栽培するスタイル。同社とリニューアブル・ジャパン(株)(同社出資先)、東急不動産(株)の共同出資プロジェクトとなっている。


(4)新たなプロジェクト投資への取り組み
2018年10月には試験的な取り組みとして、野菜工場第1号案件※への投資を実行した。野菜工場の建設・運営に実績のあるベンチャー企業との協業であり、運営はベンチャー企業が担当し、同社は建設・運営資金の一部を出資する役割を担う。2019年4月以降の本稼働を予定している。

※建設予定地は兵庫県(敷地面積約820平方メートル)、工場タイプは完全閉鎖型、栽培品目はフリルレタス等を予定している。


以上から、上期業績を総括すると、評価すべきポイントは以下の3つに集約できる。すなわち、1)損益面では大幅な営業損失を計上したものの、第4四半期での株式売却益を見込んでいることから想定どおりの進捗となっていること、2)PE投資資産の売却により資金を回収する一方、高採算が期待できるプロジェクト資産を積極的に積み上げる投資方針が計画どおりに実行されていること、3)その結果、収益構造(安定収益の確保)や財務バランス(プロジェクト資産の積み上げと借入金の削減)にも改善がみられるところである。また、活動面においても、買取価格(FIT)の引き下げ等により、ピークアウトが予想されるメガソーラープロジェクトに代わる、新たな成長ドライバーの育成が課題となっているが、メガソーラー以外の再生可能エネルギープロジェクト(バイオガス等)への投資実行や野菜工場への取り組みなどにおいて一定の成果を残すことができたと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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