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【特集】「金」再び調整局面に ドル高が逆風、株価動向も焦点 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―次の焦点は米中首脳会談、ファンド筋は買い越しに―

 のドル建て現物相場は10月、株安などを受けて堅調となり、10月26日に7月17日以来の高値1243.07ドルをつけたが、11月に入ると、株高に転じたことやドル高を受けて調整局面を迎えた。

 米中間選挙で民主党が下院を奪還し、ねじれ議会となったが、想定内であったことから株式市場に安心感が戻った。また、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で利上げ見通しが示されたことなどを受けてドル高に振れ、ドル指数は2017年6月以来の高値97.69をつけた。英国の欧州連合(EU)離脱交渉が難航していることや、イタリアがその予算案で欧州委員会と対立していることもドル高要因となった。ただ、米株式市場で企業業績の伸びがピークを迎えたとの見方が強く、株安に対する懸念が残っている。1200ドル付近では金ETF(上場投信)に投資資金が流入し、株安に対するヘッジとして買われた。逃避買いが入ると、金の下支え要因になるとみられる。

●金は米FRBの利上げ見通しが圧迫要因

 11月7~8日のFOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.00~2.25%に据え置くことを全会一致で決定した。ただ、声明では「労働市場が引き締まり続け、経済活動が力強い速度で拡大している」と指摘された。力強い雇用の伸びと個人消費で経済は軌道から外れていないとの見方を示し、緩やかな利上げを継続するとの姿勢を維持した。

 米短期金利先物市場では12月に1回、来年2回の追加利上げを行うことが織り込まれている。ただ、米中間選挙でねじれ議会となったことから、トランプ米政権が大規模減税などの重要法案を通すことは難しくなった。第3四半期の米国内総生産(GDP)速報値は、年率換算で前期比3.5%増と、事前予想の3.3%増を上回った。しかし、前期の4.2%増から伸びは鈍化しており、来年にかけて減税や財政支出による景気浮揚効果は薄れるとみられている。企業業績に対する懸念につながるようなら株安となり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しが後退する可能性も出てくる。

 また、民主党が下院を奪還したことでトランプ米大統領の弾劾措置に伴う全面的な調査権限などを握ることになった。上院は共和党が議席を維持したことから弾劾手続きが実現することはないとみられるが、リスク要因として残る。民主党は、米大統領がセッションズ司法長官を事実上更迭したのは2016年大統領選へのロシア介入疑惑を巡る捜査を抑制するためだとし、緊急公聴会の開催を要求している。

●月末の米中首脳会談に向けた動きを確認

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席との会談で貿易面の対立を緩和できない場合、米国は中国からの輸入品でこれまでの関税の対象となっていなかった品目全てへの関税賦課を12月初旬までに発表する用意があると、ブルームバーグが10月29日に報じ、米中の貿易摩擦に対する懸念が高まった。

 ただ、11月に入り、米中首脳が電話会談したことをきっかけに懸念は後退した。両首脳は、月末にアルゼンチンで行われる20ヵ国・地域(G20)首脳会議に合わせて米中首脳会談を行うとした。9日にはワシントンで閣僚級の外交・安保対話が開催され、両国間の通商問題のほか、アジア太平洋海域での航行の自由から台湾問題に至るまで幅広い地政学上の懸案について意見を交換した。中国は通商問題については両国が相互に納得できる方法で「遠くない将来に」解決できることを望むと語った。また、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相は9日に電話会談し、協議を再開した。会談で大きな進展はなかったとされたが、今後の貿易摩擦解消に向けた動きが金価格にとって当面の焦点である。

 米中首脳会談では新たな制裁措置の発動を回避することで合意し、これまでの制裁措置が解消されるにはまだ時間がかかるとの見方が強い。10月のペンス副大統領の演説で、米中の新冷戦に対する見方が出ていたが、外交・安保対話が始まり、全面的な対立を回避できるかどうかも焦点である。地政学的リスクにつながらなければ金の上値を抑える要因になる。

●NY金市場でファンド筋は買い越しに転じる

 金の内部要因では、ニューヨーク先物市場でファンド筋が買い越しに転じた。米商品先物取引委員会(CFTC)建玉明細報告によると、11月6日時点で大口投機家はニューヨーク市場で金先物を1万9026枚買い越した。10月9日時点で3万8175枚売り越し、2001年4月以来の売り越し水準となったが、翌週に買い戻し主導で買い方に転じた。

 ただ、10月23日時点の2万9388枚買い越しがピークとなり、高値を買い進む動きは限られている。一方、世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は10月9日時点の730.165トンから11月1日時点で760.822トンに増加した。調整局面を迎えると、755.232トンに減少したが、安値拾いの買いが入ると、12日時点で761.999トンに増加した。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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