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【特集】カンロ Research Memo(4):2014年12月期業績の大きな落ち込みはカルピスブランド製品の販売中止

カンロ <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. ターニングポイント
キャンディ市場の競争激化などにより、2000年代後半から売上総利益率と販管費率がともに悪化し、カンロ<2216>の営業利益は減益傾向を続けていた。それが2014年12月期、ついに営業損失に陥った。しかし2015年12月期以降は、売上総利益率と販管費率をともに改善しながら営業利益の増益幅を拡大、2016年12月期には早くも2012年12月期の水準へと戻している。

営業損失の主因は、当時主力製品の1つだったカルピスブランドの飴やグミの販売が中止になったことで、売上高がそれまでの200億円レベルから2013年12月期の183億円へと急減したことである。味の素<2802>が2012年に、商標権を持つカルピス株をアサヒグループホールディングス<2502>に譲渡、カルピスの商標使用権が解約されたことが背景にある。この緊急事態に急遽、当時計画していた海外進出や新規菓子開発を中止して対応したものの、売上高急減による固定費率の悪化をカバーできず、2014年12月期に営業損失に陥ってしまったのである。

しかし、最悪期の2014年12月期も製造費用の中身は率としてバランスが崩れなかった。これは、カルピスブランド製品の採算が特に高かったわけではなかったからで、売上高を回復すれば固定費率が下がって利益も回復するという、比較的安定した収益構造になっていたからと言える。また、販管費率も大きく悪化しなかったが、代理店手数料など変動費の抑制によると思われる。とはいえ、カルピスブランドの販売中止は収益に大きな打撃を与えたため、同社は効率のよい7つの主力ブランド(カンロ飴、ノンシュガーグルメシリーズ、金のミルク、健康のど飴シリーズ、ボイスケアのど飴、ノンシュガーのど飴シリーズ、ピュレグミシリーズ)に経営資源を集中することにし、その結果、収益は急回復したのである。

長期的な収益動向から現在の収益水準を考えると、まず2000年以降、販路としてはコンビニエンスストアが成長、製品は機能性製品やグミが拡大し、売上高・利益の伸びをともにけん引した。しかし2000年代半ばをピークに売上高は微減を続け、利益率は急速に悪化した。競争激化や少子高齢化などキャンディを取り巻く環境が大きく変化したことが背景にあると考えられ、そのボトムがカルピスブランドを販売中止した2014年12月期である。長期的に見ても2014年12月期はまさにターニングポイントだったと言え、その後V字回復し、経常利益は直近ピークの2007年12月期の1,492百万円を望める位置まで戻ってきたのである。


中期経営計画の2年目の立ち上がりも大幅増益
2. 2018年12月期第2四半期の業績動向
2018年12月期第2四半期の業績は、売上高11,274百万円(前年同期比8.2%増)、営業利益602百万円(同26.7%増)、経常利益618百万円(同28.2%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益671百万円(同118.5%増)となった。

2018年上期(1月-6月)のキャンディ市場は、飴の消費は前年並みとなったが、グミの消費が順調に伸長したことで、市場全体で前年同期比微増となった。このような環境下、同社は中期経営計画「NewKANRO 2021」に基づき、品質向上策や提案型営業活動、製造原価の低減、業務の効率化などを推進した。この結果、2018年12月期第2四半期の同社のカテゴリー別売上高は、飴、グミともに主力ブランド商品が伸長し、それぞれ前年同期比9.7%、7.6%の増加となった。特に微減が続いていた飴の市場が微増に転じた理由として、同社の飴の好調がけん引したためと推測できる。その飴だが、発売7年目の「金のミルクシリーズ」や「ノンシュガースーパーメントールのど飴」など主力商品が好調で、加えて2017年に発売した「健康のど飴たたかうマヌカハニー」も定番化しつつある。グミは、「ジュレピュレ」がやや停滞したものの、第2の柱として期待される「カンデミーナシリーズ」が好調だった。

売上総利益率は、主力ブランド商品の売上増加による効率改善、製造ラインの集約による製造原価の低減、品質向上策による歩留改善などにより、前年同期比2.1ポイント増と大幅に改善した。販管費は、売上拡大に伴う販売経費の増加に加え、本社オフィス移転やCI変更、子会社のひかり製菓吸収合併などによる一時費用80百万円が発生したが、売上が伸びたことで率は同1.3ポイントの上昇にとどまった。なお、旧本社ビル売却に伴う固定資産売却益501百万円を特別利益に計上、グミ製造ライン新設のための工場棟改築に係る固定資産の除却損32百万円、休止資産の減損損失35百万円、ひかり製菓吸収合併に伴う特別退職金及び固定資産の除却損41百万円を特別損失に計上した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《HN》

 提供:フィスコ

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