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【特集】通商リスク次第の「プラチナ相場」、史上最高値パラジウム動向も焦点 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―プラチナは金堅調支援も米中貿易摩擦懸念再燃なら再び売り圧力―

 プラチナ(白金)の現物相場は10月、金堅調につれ高となり、7月10日以来の高値850.03ドルを付けた。ただ、その後は株安に対する懸念が高まったことやユーロ圏の景気減速に上値を抑えられた。また、11月の米中首脳会談で貿易摩擦解消に向けた進展が見られなければ、米政府は12月初旬までに中国製品に対して新たな追加関税を発動する用意を整えている、と伝えられた。通商リスクが再燃すると、プラチナの戻り売り圧力が強まる可能性がある。

 一方、トランプ米大統領が、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱する方針を発表したことをきっかけにパラジウムが史上最高値を更新した。パラジウムは買い戻し一巡後に利食い売りが出て上げ一服となったが、高値圏での推移が続くと、プラチナの下支え要因になる。プラチナは805.78~850.03ドルの新たなレンジを形成しており、当面は米中間選挙などのイベントも確認しながら方向性を模索することになりそうだ。

●米株安と米中の貿易摩擦に対する懸念

 米企業決算を受けて企業業績の伸びがピークに達したとの見方が強まった。アマゾンの決算で10~12月期の売上高見通しが予想以下となり、年末商戦に対する懸念から投資家心理が悪化した。株安に対する懸念を受けて金ETF(上場投信)に投資資金が戻り、金が堅調に推移していることはプラチナの支援要因だが、リスク回避の動きを受けてプラチナの需要が伸び悩むと、上値を抑える要因になる。

 また、これまでトランプ米大統領が中国からの輸入品全額に課す第4弾の制裁措置の可能性を示唆しており、11月の米中首脳会談で進展が見られなければ、これを発動する用意があるとされた。通商リスクに対する懸念が再燃すると、実需筋が高値での買いを見送ることになる。

 米中間選挙を控えて米大統領が対中制裁を緩めれば株安が一服する可能性もあるが、ペンス米副大統領の演説で米政権が中国への強硬姿勢を強め、冷戦に近い状態が始まったとの見方が出ている状況では、手を緩めることはないとみられる。米大統領は20日、中間所得層向けの「大規模減税」を検討しているとし、中間選挙の数日前に発表する可能性があると述べた。当面は「大規模減税」が発表されるかどうかも確認したい。

●プラチナは買い転換も高値で利食い売り

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク・プラチナでファンド筋が買い方に転じた。ただ、高値で利食い売りが出て上値を抑える要因になった。10月23日時点で1万1662枚買い越し(前週1万3080枚買い越し)となり、買い玉は16日の4万3130枚から23日に4万1498枚に減少し、利食い売りが出た。

 一方、プラチナETF(上場投信)残高は10月29日時点のロンドンで9.47トン(9月末9.70トン)、米国で18.73トン(同18.89トン)、南アフリカで23.15トン(同23.86トン)に減少した。投資資金の流入がなければ一段高は難しい。

●パラジウムは中国の自動車購入税の行方も確認

 パラジウムの現物相場は史上最高値1149.44ドルを付けた。米大統領が、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱する方針を発表し、米ロ関係の悪化が懸念されたことが支援要因になった。ロシアは世界最大のパラジウム供給国である。ロシアのペスコフ大統領報道官は、米国が離脱した場合、ロシアは米国との軍事力の均衡を回復させるために対抗手段を取らざるを得なくなると警告した。

 ただ、米国が実際にINF廃棄条約から離脱するには6ヵ月前に正式に通達する必要がある。米政府はまだ公式な離脱通告は行っていない。INF廃棄条約は米上院の3分の2の議決を得なければ公式に廃止することはできない。しかし、米上院の議決がなくても条約に違反する動きを始めることが可能とみられており、今後の動向を確認したい。米当局者は軍備拡大を進める主な理由として、太平洋地域における中国の軍事力増強を挙げている。

●中欧の自動車販売動向も注視

 欧州自動車工業協会(ACEA)によると、9月の欧州連合(EU27)の新車(乗用車)登録台数は前年同月比23.5%減の109万台となった。9月1日から新たな燃費計測方法として「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」が導入されたことが主因となった。ユーロ圏の景気減速も指摘されており、欧州の新車登録の行方を確認したい。

 一方、中国国家発展改革委員会(発改委、NDRC)が29日、自動車購入にかかる税金の税率を半分にすることを提案すると報じられた。減税となれば自動車販売の拡大期待が高まり、プラチナ・パラジウムの支援要因になる。パラジウムはリースレート(貸出金利)が高止まりし、供給ひっ迫感が強く、強材料が出ると、上値を試しやすい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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