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【特集】トレードワークス Research Memo(2):金融知識も併せ持つエンジニアによる低コスト・短納期開発に強みを持つ

Tワークス <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

1.会社沿革
トレードワークス<3997>は、現代表取締役社長の浅見勝弘(あさみ かつひろ)氏によって、証券会社のシステム開発を目的に1999年に設立された会社となる。浅見氏は元々、外資系IT企業のエンジニアとして、金融系ネットワークシステムのコンサルティング業務に携わっていたが、1990年台前半の国内の証券取引システムが米国よりも大きく遅れていたことから、国内でも先進的な証券取引システムが普及していくことを予見し、同社を立ち上げた。金融業界向けに当初から特化することを決めたのは、同業界では常に先進的なITシステムが求められており、エンジニアとして一生、システム開発に関わっていくだけのモチベーションを維持していくことが可能な領域と考えたためだ。

会社設立後の第1号の顧客は現在も主要取引先であるネット証券会社で、インターネット証券取引システムを納品した。同社は今でも売上高の約3割強(2017年12月期)を占める主要顧客である。1990年代までの証券会社の取引システムの大半は、大手証券会社系列のシステム開発会社で開発したものが利用されていたが、2000年以降、インターネット専門の証券会社が相次いで設立されるようになり、インターネット取引が急速に拡大していくなかで、これら新興の証券会社などを中心に顧客を開拓し、業績を伸ばしてきた。

提供する製品としては主力のインターネット証券取引システムのほか、ディーリングシステムや取引所売買端末、不公正取引監視システムなど証券会社のディーリング(自己売買取引)やインターネットトレーディング(委託売買取引)に関わる情報システムとなり、各種システムをオールインワンで提供できることから、顧客の多様なニーズにも対応可能となっている。2007年には事業領域を拡大するため、FX取引システムを開発するワークステクノロジー(株)に資本参加し、子会社化した(2016年4月に解散、同社が事業を継承)。また、2015年以降は、従来の販売形態に加えて、SaaS型サービスでの提供も開始している。初期導入コストを低く抑える代わりに、月額利用料及び保守料で安定した収入を得るストック型に近いビジネスモデルとなる。2017年11月には、更なる業容の拡大を図るため東証JASDAQ市場に株式上場を果している。

2.事業内容
同社は金融ソリューション事業とFXシステム事業及びセキュリティ診断事業を展開しており、2017年12月期の売上構成比では約9割が金融ソリューション事業で占められている。

金融ソリューション事業の主な製品は、インターネット証券取引システム、ディーリングシステム、証券取引所売買端末、不公正取引監視システムなど証券会社向けのシステムで、なかでもインターネット証券取引システムが売上高の大半を占める主力製品となっている。同社ではこれら製品を顧客のニーズに合わせてカスタマイズして開発し、保守・運用を行っている。ここ最近ではクラウドサービス(SaaS型サービス)での開発案件が多くなっているが、初期導入費用と月額利用料、保守料等のバランスについては、開発案件ごとに異なっている。

FXシステム事業では、FX会社向けにインターネット顧客向けのFX取引システムを提供しており、売上構成比は1割弱となっている。また、セキュリティ診断事業では事業会社に対してWebアプリケーション診断やネットワーク診断を手動で行い、診断結果の報告や解決方法の提案などを行うサービスを行っている。また、自動診断サービスツールとなる「SecuAlive」の提供も行っている。売上規模は小さく全体の収益に与える影響は軽微となっている。

3.市場動向と同社の強み
同社が主力市場としている証券業界のシステム投資額(ハードウエア除く)は年間1,900億円規模で推移しており、今後も年率1%強の安定成長が続く見通しとなっている。このうち、提供形態別で見るとクラウド利用での提供が全体の7割弱を占め、残り2割強が顧客ニーズに合わせて一から開発するスクラッチ、1割弱がパッケージ製品といった構成となっており、今後はクラウド利用の構成比が年々上昇していく見通しとなっている。

また、証券業界の情報システムに関しては従来から大手証券会社系列のシステム開発会社がシェアの大半を握る構造となっており、トップベンダーの野村総合研究所<4307>、2位の大和総研グループで全体の7割弱を占める格好となっている。これら大手証券やその系列の子会社については、取引証券システムをリプレースできる可能性は低いものの、同社では総合証券会社の取引システムをリプレースした実績もあり、今後もリプレース案件を獲得できる可能性はある。また、異業種からの新規参入も含めてインターネット専門の証券会社が出てくれば新規顧客獲得のチャンスとなる。

同社の強みは、証券に関する深い知識を持ったエンジニアを自社で多数抱えることで、顧客ニーズに最適なシステムを短期間、かつ低コストで設計・開発できることが挙げられる。競合大手と比較して同じ仕様であれば低コスト、短期間での開発が可能であり、証券システムの開発に関しては精鋭集団とも言える。また、証券業界では新たな金融商品の開発や法制度の改正などにより、システムの改修ニーズも頻繁に発生する。こうしたニーズに対しても同様に低コスト、短期間で対応可能なことも強みとなっている。これは同社のエンジニアのスキルが高いことに加えて、システム開発が完全オブジェクト指向で行われていることが大きい。オブジェクト指向※で開発されているため、プログラムの修正や確認作業が容易となり、開発期間の短縮を可能としている。

※オブジェクト指向…ソフトウェア開発技法のひとつ。あるデータの処理をオブジェクト(モノ)にまとめて部品として扱い、部品の組み合わせでシステム全体を構築していく開発手法。部品の再利用や分類がしやすく、開発工程を効率化できる利点がある。


一方で、弱みとしては重大なインシデントが発生した場合の補償などに関しての信用力が、競合大手と比較するとどうしても劣ることが挙げられる。これは同社がまだ創業20年にも満たない新興企業であり、財務基盤もまだ盤石ではないためで、今後実績を積み重ねていくことで解消できるものと思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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