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【経済】NYの視点:トルコリラ売り継続、当局の措置不十分


米大手金融のゴールドマンサックスはトルコ危機、米中貿易摩擦が深刻化する中、新興諸国にエクスポージャーが多い米国企業に警鐘を鳴らした。アジア危機、ロシア危機に匹敵するような危機への警戒感も強まった。

2016年に発生したクーデターに関与した疑いで拘束されている米国人牧師の開放を求め、米国のトランプ政権は1日から対トルコ制裁を発動。市場は同国経済の先行きを懸念し、リラ売りに拍車をかけた。加えて、トランプ大統領は10日、トルコとの関係は「現在良くない」とし、同国産アルミや鉄鋼関税率を2倍にすると発表。リラ売りにさらに拍車がかかった。

エルドアン大統領は先週末の演説で、「外貨を売り、リラを買う」ことを国民に呼びかけた。12日の演説でも「経済戦争だ」とし、リラ売りはいずれ収まるとの考えで、利上げを容認する姿勢を見せなかった。米国人牧師を開放する意向も見せなかった。リラ安是正で、中央銀行は、市中銀行を支えるため、流動性強化などの措置を発表。金融システムを支援するために、「全ての必要な措置をとる準備がある」とした。しかし、投資家が期待していた利上げなどの措置は取られず、トルコ当局のリラ安に関する対処は不十分との見方で、リラ売りが後退する兆候はまだ見られない。

トランプ米政権は英国での元スパイ毒殺未遂事件に絡み、対ロシア追加制裁も発表している。また、本年始めから、高インフレや通貨安に悩まされていたアルゼンチンはトルコリラの影響を受けて、アルゼンチンペソがさらに下落。対ドルで過去最安値を更新した。アルゼンチンの中央銀行は通貨安是正で、政策金利のLELIQ7日債金利を45%に引き上げた(前回40%)。世界で最も高い政策金利となる。本年4回目の緊急利上げとなった。

新興書状の混乱による米国株式相場の影響は今のところ限定的となっている。しかし、1997年のアジア危機の際、きっかけとなった7月のタイバーツ切り下げが域内新興諸国に波及、10月のダウ平均株価のミニクラッシュまで3カ月かかった。その後、米国の消費者信頼感や消費の悪化につながり、間接的にはドットコムバブルの崩壊という経緯をたどることになる。このことを考えると、今後数カ月は予断を許さない状況だと警戒感も強い。

《CS》

 提供:フィスコ

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