市場ニュース

戻る

【特集】ダイナムジャパンHD Research Memo(2):「チェーンストア理論」に基づき革新的な施策を実行し業容を拡大


 



■会社概要

1. 沿革
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は1967年に、現取締役相談役である佐藤洋治(さとうようじ)氏の父、佐藤洋平(さとうようへい)氏により、佐和商事株式会社として設立された。1970年に創業者が亡くなったため、当時は(株)ダイエーに勤務していた長男の佐藤洋治氏が24歳で事業を継ぎ、業容を拡大させてきた。

同社は大卒者の新卒採用、郊外型店舗・ローコスト店舗の開店、労働組合結成、低貸玉営業の全国展開など、パチンコホール業界における新しい取り組みを同業他社に先駆けて行ってきた。同社が先進的な企業文化を持つに至ったのは佐藤洋治氏に担うところが大きい。同氏は日本に入ってきて日が浅かった「チェーンストア理論」に感銘を受け、ダイエーに入社した。その後、同社を創業した父の跡を受けて同社の経営を行ってきたが、その間、一貫してチェーンストア理論をパチンコホールの経営に応用して業容拡大を図ってきた。同社の大きな強みであるローコストオペレーションもチェーンストア理論に基づくものだ。

チェーンストア理論に学んだ同氏の合理的な考え方は企業文化として同社に根付き、同社を業界の中のトップ企業に押し上げる原動力となった。また、経営理念において顧客第一主義や情報開示、コンプライアンス経営など現代の企業経営で最も重要とされる要素を、かなり早期から取り入れることへとつながり、2012年8月の香港証券取引所への上場を実現する大きな原動力としても働いた。


4つの強みを生かして強固な経営基盤を確立し、他社との差別化を実現
2. ダイナムジャパンホールディングスグループの特長と強み
同社の様々な特長・強みの中で、弊社では1)国内トップの店舗数、2)ローコストオペレーション、3)顧客視点の経営、4)資金調達力の4点に注目している。ポイントはそれぞれの強みが互いにつながっていることだ。すなわち、他社が同社と同じ強さを実現するのは容易ではないということだ。

(1) 国内トップの450店舗を擁していること
同社はグループの店舗数が450店舗(2018年3月末現在)と国内トップを誇る。国内シェアは店舗数ベースで4.3%、遊技機の設置台数ベースでは4.7%となる。

店舗数が多いことは、いわゆる規模の利益(スケールメリット)の獲得につながる。スケールメリットは、店舗の新規出店、改装、遊技機の購入、景品の仕入れ、物流など様々な面に及ぶ。なかでも重要なのは遊技機の購入だ。店舗数が多いことはパチンコ・パチスロ機の保有台数も当然多くなり、遊技機メーカーに対するバイイングパワー(価格交渉力)が強まることになる。また、同社はPB(プライベートブランド)機の開発・導入や、遊技機の社内流通拡大による誘客・コストダウンにも注力しているが、これも店舗数が多い同社ならではの施策と言える。

同社が2015年11月にグループ化した夢コーポレーション(株)を例に取ると、同社グループに入った後、遊技機購入、物流、金融費用などの各項目で総額約7億円の費用を削減した(年度換算ベース)。これは夢コーポレーションの従来費用の12%に相当する水準だ。

(2) チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション
ローコストオペレーションは同社の競争力の源泉であり、成長戦略を含めたすべての施策を実現し、かつ有効ならしめる裏付けとなっているというのが弊社の理解だ。

同社のローコストオペレーションの背景には、チェーンストア理論が理論的裏付けとして存在している。パチンコホール事業の2大経費は人件費と機械費であるが、その直接的な費用の削減だけでなく、少ない従業員数でのオペレーションを可能にする店舗設計や店舗運営システム(一例として“各台計数機”)の導入、新規出店の標準化など、様々な面にチェーンストア理論が生かされ、同社グループ全体としてのローコスト化につながっている。

前述のように同社は国内トップの450店舗を誇る。これは積極的な多店舗展開策の結果にほかならないが、それを可能ならしめたのもローコストオペレーションのノウハウだ。そこで店舗数増大⇒スケールメリットによるコスト削減という好循環が生まれて、現状の地位があるものと弊社では分析している。また、後述する顧客視点に立った経営も、ローコストオペレーションがあるからこそ実現できていると考えている。

同社がチェーンストア理論を経営に活用するに至った経緯は沿革で述べたとおりだ。同社はまた、志を同じくする同業者と、業界団体「パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)」を設立し、チェーンストア理論をパチンコホールの経営に生かす研究を重ねている。またPCSAの活動は、同業他社の経営基盤の強化に貢献しただけでなく、夢コーポレーションのグループ化という形で同社の業容拡大にも貢献した。

(3) 顧客視点に立った経営の実践
同社は5つの経営方針の1つに“顧客第一主義”を掲げ、現に実践している。同様の経営方針を掲げる同業他社はあっても、それを実践できているところは少ないと思われ、同社の特長の1つと弊社では考えている。

同社の様々な経営施策のうちでa)低貸玉営業と、b)射幸性に頼らない営業の2つを特に弊社では評価している。

a) 低貸玉営業
貸玉料(パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その料金)を通常の4円より安い、1円もしくは2円に引き下げた営業形態のことだ。同じ料金でも客はより多くの玉を借りることができ、それだけ長く遊ぶことが可能になる。低貸玉機の構成比を高くした低貸玉店舗を積極的に展開するほか、従来型店舗内でも低貸玉機の設置を増やし、2018年3月末時点では同社のパチンコ機71.1%(業界全体47.2%)、パチスロ機の56.5%(業界全体23.0%)が低貸玉機となっており、業界平均を大きく上回っている。

低貸玉営業店舗は高貸玉営業店舗に比べて集客力があることは明白にデータに現れている。しかしこの戦略を採用するには、相応の企業体力が必要だ。低貸玉店舗は、高貸玉店舗よりも営業収入が低いのに対して営業費用はそれほど差がないので、利益率が低くなってしまうためだ。それをカバーする方策の1つが店舗数拡大による成長であり、同社はまさにそれを実践してきた。

b) 射幸性に頼らない営業
文字どおり、射幸性の高い機種を集客の中心的な戦略とはしないということだ。パチンコ機には大当たりの確率が高いものから低いものまで様々な種類がある。確率が低い機種ほど大当たりした場合の出玉数が多く、コアなパチンコファンほどそうした射幸性の高い機種を好む傾向がある。したがってパチンコホールも低確率機種(すなわち高射幸性機種)の構成比を高めた店づくりをして集客を行っているところが多い。

しかしながら、2017年3月期にこの射幸性に規制が入り、確率の最低ラインが1/400から1/320へと引き上げられ、1/400機種は2016年12月までに撤去された。射幸性に対する規制の背景には依存問題対策があり、2018年2月にも新規則が施行された。射幸性を売り物に集客するというパチンコホールの経営スタイルは成り立たなくなりつつあるのが現状だ。

これに対して同社は、高射幸性機の割合が業界平均に比べて低く、反対に最も射幸性の低い確率1/100タイプの構成比が業界平均よりも20%も高い構成となっている。射幸性規制の強化の影響は同社も避けられないが、従来から射幸性に頼らない営業を目指してきた同社にとってマイナス影響が軽微であると弊社では考えている。

(4) 上場企業の強みを生かした資金調達力
同社は2012年にパチンコホール業界で初めて香港証券取引所に株式を上場した。約3,200社のパチンコホール企業の中で株式を上場しているのは同社を含めて2018年3月末現在3社だけだ。今後予想される業界再編において、買い手となれるかどうかの重要な条件の1つが資金調達力であることは議論の余地はないだろう。同社は2015年11月の夢コーポレーションのグループ化で、上場企業としての強みを生かし、全株式を株式交換により取得した。M&Aに限らず店舗投資や新事業展開などで潜在的資金需要は旺盛で、上場企業であることのメリットは非常に大きく働くと考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《MH》

 提供:フィスコ

日経平均