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【特集】日本ライフL Research Memo(4):過去の販売権喪失による減収から学んだことは大きい

日本ライフL <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. ターニングポイント
日本の医療機器関連企業の多くはメーカーか商社の専業である。しかし、日本ライフライン<7575>は商社としてスタートし、その後メーカー機能を取り込み、現在、海外製品の輸入販売と自社製品の製造販売という2つの事業形態を併せ持つ、ハイブリッドなビジネスモデルを確立した。メーカー機能を取り込むきっかけになったのは、2000年3月期の大幅減収である。当時、冠動脈ベアメタルステントの仕入先であったAVEが競合企業に買収され、同社は国内における販売権を失った。同社はそれまでにも同様のケースを何回か経験していたことから、販売権喪失のリスクに備え、1999年にリサーチセンターを立ち上げ、自社製品の開発に着手したのである。

2001年には初の自社製品としてガイドワイヤーを発売し、その後EPカテーテルやアブレーションカテーテルなどへと自社製品を順次拡大した。2009年3月期には、宇部興産<4208>の子会社で国内唯一の人工血管メーカーであったウベ循研※を買収した。これも当時、人工血管の仕入先であったバスクテックが競合企業に買収されたことがきっかけになっており、その後、自社製品の人工血管「J-Graft」シリーズやオンリーワン製品であるオープンステントグラフトを上市することになる。

※ウベ循研はその後JUNKEN MEDICALへと改称し、2017年4月に同社に吸収された。


このように自社製品のラインナップを拡充してきたが、同社の成長に拍車をかけたのが、2012年10月に上市したオンリーワン製品、心腔内除細動システム専用カテーテル「BeeAT」である。「BeeAT」は心房細動のアブレーション治療のおよそ8割で使用され、症例数の増加とともに急速に販売数量を伸ばし、同社の利益水準向上のドライバーとなった。仕入商品の販売権喪失というリスクをヘッジする意味で始めた自社製品の開発だったが、今や仕入商品を上回る売上規模に成長した。ただし、2019年3月期以降当面は、大型の仕入商品が複数発売されるため、自社製品比率はやや低下することが予想されている。


2018年3月期は未実現利益を除く実力ベースでも大幅増益
2. 2018年3月期の業績動向
2018年3月期の業績は、売上高42,298百万円(前期比13.8%増)、営業利益10,671百万円(同38.9%増)、経常利益10,730百万円(同34.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,478百万円(同39.8%増)となった。同社が地盤とする心臓循環器領域では症例数が高い伸びを続けており、これに伴い、自社製品、仕入商品ともに好調に推移した。加えて、未実現利益の調整から売上総利益が膨んで、売上総利益率を大きく引き上げた。このため、旅費交通費や開発費用、支払手数料といった販管費の増加、子会社工場の移転費用及び除却損の発生を吸収して、大幅増益を達成することができた。

利益の伸びが非常に高くなった要因の1つに未実現利益の調整があるが、これは、2017年4月1日に連結子会社JUNKEN MEDICALを吸収合併したことに伴って、合併前に仕入れた在庫の未実現利益の調整を行い、1,170百万円の売上原価のマイナスを計上したことを指す。これに自社製品の利益貢献等が重なり、売上総利益率で3.6ポイントもの上昇となった。こうした未実現利益は本来の実力ではないため、未実現利益を除いて試算(フィスコ試算による)すると、それでも営業利益が9,201百万円(同19.7%増)、経常利益9,560百万円(同19.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,423百万円(同20.0%増)と20%前後の大幅増益となり、実力ベースでも同社は業績を大きく伸ばしたということができる。


既存製商品の好調が大型商品の発売遅れをカバー
3. 2018年3月期品目別売上高の動向
品目別の売上状況は、各品目とも好調で期初計画を上回って着地した模様である。リズムディバイスでは、リードを含めたMRI検査に対応した心臓ペースメーカーをフルラインナップでそろえることができたことから、心臓ペースメーカーのシェアが15%へと大きく回復した。EP/アブレーションでは、心房細動のアブレーション治療の症例数が、当初前提の17%増を上回る22%増と高い水準で増加したことから、オンリーワン製品である心腔内除細動カテーテル「BeeAT」ほか心房細動治療関連製品の販売が増加した。

外科関連では、腹部用ステントグラフト「AFX2」が伸びたことに加え、治療の低侵襲化に寄与すると高く評価されたオンリーワン製品のオープンステントグラフト「FROZENIX」も販売を伸ばした。インターベンションでは、末梢用バルーンカテーテルや心房中隔欠損閉鎖器具が売上高を伸ばしたほか、2018年3月に薬剤溶出型冠動脈ステント「Orsiro」の販売を開始、1ヶ月の販売期間ではあったが売上増加に貢献した。加えて、新領域への挑戦となる大腸ステント「JENTLLY」を2017年6月に限定販売し消化器領域への参入を果たし、2018年1月には販売を本格化している。

なお、内視鏡アブレーションシステム「HeartLight」、スーチャレス生体弁「PERCEVAL」の発売が当初計画より遅れているが、既存製商品の好調によりカバーすることができた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《MW》

 提供:フィスコ

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