市場ニュース

戻る
 

【特集】北の達人 Research Memo(4):新たな収益柱の伸長によりバランスの良い事業拡大を実現

北の達人 <日足> 「株探」多機能チャートより

■決算概要

1. 過去の業績推移
北の達人コーポレーション<2930>の過去の業績を振り返ると、定期購買会員数の拡大に伴って業績が伸びているが、特に2013年2月期からの業績の伸びが大きい。これは、それまで「カイテキオリゴ」への業績依存度が高かったところから、新たな主力商品として「みんなの肌潤糖」シリーズや「二十年ほいっぷ」が定着してきたことに起因する。また、2017年2月期からは「アイキララ」など新商品群による業績貢献も上乗せされている。したがって、ここ数年は「カイテキオリゴ」への依存度を引き下げながら、新たな収益柱の伸長により同社の業績が大きく拡大してきたと言える。

また、利益面も、広告宣伝費の効果的な投入により、売上高の拡大に伴って営業利益率は25%を超える高い水準に上昇してきた。2016年2月期の営業利益率が一旦低下したのは、将来を見据えた先行投資等※によるものである。

※積極的な広告宣伝費のほか、組織強化に向けた人件費や外注費等の運営費等。


一方、財務基盤の安定性を示す自己資本比率も、将来の成長のための先行投資に備えて有利子負債を増やしたことから2013年2月期に50.0%まで低下したが、公募増資や内部留保の積み上げによって2016年2月期には86.5%の高い水準に到達した。2017年2月期は長期借入金による手元流動性の確保を行ったことから再び67.4%に低下したものの、財務基盤の安全性に懸念はない。また、資本効率を示すROE(自己資本当期純利益率)についても、2016年2月期には子会社の減損処理等※により一旦低下する格好となったが、高い収益力に支えられて高水準で推移しており、同社の財務内容は極めて優れていると評価できる。

※100%出資子会社(非連結子会社)である(株)オーダーコスメジャパンに対して、当初事業計画との乖離が生じたことから同社株式の減損処理等を行ったもの。


キャッシュ・フローの状況も、大きな設備投資を必要としない事業特性から、投資キャッシュ・フローは潤沢な営業キャッシュ・フローの範囲内に収まり、現金及び現金同等物の期末残高は大きく積み上がってきた。2016年2月期の営業キャッシュ・フローが落ち込んだのは、広告宣伝費の投入や将来を見据えた先行投資に加えて、売上高の拡大に伴う在庫投資によるものであり、2017年2月期は在庫投資の回収もあって大きくプラスに転じている。今後は、強固な財務基盤や潤沢な営業キャッシュ・フローを、これからの成長に向けていかに生かしていくかが課題となってくるだろう。


積極的な広告投資等により足元業績は大きく拡大
2. 2018年2月期決算の概要
2018年2月期の業績は、売上高が前期比96.2%増の5,292百万円、営業利益が同159.0%増の1,403百万円、経常利益が同160.7%増の1,403百万円、当期純利益が同165.9%増の948百万円と3度の増額修正を伴いながら大幅な増収増益を実現した。

売上高は、主力の「カイテキオリゴ」が堅調に推移したことに加え、ここ、1、2年で発売した新商品群が大きく伸長した。その結果、「カイテキオリゴ」への売上依存度は大幅に低下(約40%→約18%)し、売上構成も大きく変化している。上位4商品で売上高の約80%を占めているが、バランスの取れた構成となっているようだ。一方、好採算である新商品群に経営資源を優先配分したことから、「みんなの肌潤糖シリーズ」や「二十年ほいっぷ」には伸び悩みが見られるものの、依然として根強い需要に支えられており、収益構造に厚みが増してきたと言える。

なお、売上高が期初計画を大きく上回ったのは、積極的な広告投資によるところが大きい。その背景には、1)収益性が向上(新商品群の伸びによる粗利益率の改善)してきたこと、2)前期より開始した広告の自社運用※が軌道に乗ってきたことにより、大規模な広告投資を行っても利益を十分に生み出せる体制が整ってきたことがある。特に、広告の自社運用化については、投資効率を高めたほか、状況に応じた機動的な投資を可能とし、その結果、大規模な投資に踏み切れたものと考えられる。

※これまで外部リソースを活用していたインターネット広告について、更なる効率化の追求やノウハウの蓄積を図るため、自社運用化を推進するとともに、当該部門の大幅な人員増強を行っている。その結果、関連する人件費は増えたものの、トータルでの費用対効果は大きく改善しているようだ。


利益面では、好採算である新商品等により原価率が20.0%(前期は23.0%)に大きく改善。一方、大規模な広告投資や体制強化等に伴う人件費により販管費が大きく拡大したものの、増収効果や原価率の改善等により大幅な営業増益を実現。営業利益率も26.5%(前期は20.1%)に大きく改善している。

財政状態については、総資産が「現金及び預金」の増加等により前期末比52.0%増の3,481百万円に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同51.8%増の2,344百万円に増加したことから、自己資本比率は67.3%(前期末は67.4%)と横ばいで推移した。資本効率を示すROEも大幅な増益により48.8%(前期は24.8%)に大きく改善しており、同社の財務内容は極めて優れていると言える。一方、総資産の72.1%を占め、毎年積み上げる傾向のある「現金及び預金」の有効活用は、今後の課題であると同時に成長エンジンとしても捉えることができ、その使い道が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《MH》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均