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2018年04月16日17時58分

【特集】ラクオリア創薬 Research Memo(2):ファイザー日本法人の研究所から独立した創薬開発型バイオベンチャー

ラクオリア <日足> 「株探」多機能チャートより

 




■会社概要

1. ラクオリアの事業領域と戦略
ラクオリア創薬<4579>は世界的医薬大手米Pfizerの日本法人であるファイザーから中央研究所が独立してできた創薬開発型バイオベンチャーだ。研究開発型の創薬企業であり、通常の製薬企業とは異なるビジネスモデルとなっている。

医薬品の開発は、元となる化合物を見つける「探索研究」、動物実験で安全性・有効性を確認する「前臨床開発」、ヒトで安全性・有効性を評価する「臨床開発」という大きく3つのプロセスを経て、新薬として承認申請が行われ、当局に承認されて薬として発売されることになる。また、臨床開発は第1相(フェーズI :P-I)から第3相(フェーズIII:P-III)まで3段階に分かれている。この一連のプロセスの中で、同社は探索研究からProof of concept(POC)までを「創薬」と捉え、自社の事業領域としている。

同社のビジネスモデルは、独自に創出した新薬の種(開発化合物)を製薬企業などに導出(ライセンスアウト)することが基本となっている。導出時に契約一時金を受け取るほか、導出先における開発・販売・承認の各段階においてマイルストンを獲得する。さらに医薬品として販売(上市)後は売上高の一定割合をロイヤルティとして受け取る。

このように、同社の収益は導出後に本格的に獲得される収益構造となっている。すなわち、同社の事業領域である第2相臨床試験までの間に化合物を製薬企業に導出して初めて、同社の事業活動が収益化されるということだ。同社が導出した医薬品候補の化合物が導出先企業においてさらに臨床開発され、最終的に医薬品として発売されるまでは、同社自身も引き続き、導出先企業との連携が続くとしている。同社は医薬品の候補となる化合物を“産み出す”ことを事業領域としているが、導出先企業をサポートすることもまた、同社の事業の重要な一部となっているということだ。


イオンチャネル創薬の技術と創薬インフラに強み。イオンチャネル領域で初のライセンスアウトを実現

2. 特長と強み
同社の強みとして2つ挙げることができる。第1の強みはイオンチャネル創薬の技術である。イオンチャネル創薬は難易度が高く参入障壁が高い一方、薬効や製品の市場性の面での期待が大きい、新しい世代の創薬技術である。第2の強みは創薬のためのインフラが充実していることだ。具体的には約38万件の化合物ライブラリーやスクリーニング・ロボット、解析のノウハウなどである。

イオンチャネル創薬は薬の世代としては新しい世代に属している。イオンチャネルとは細胞の生体膜にあるタンパク質の一種で、受動的にイオンを透過させるタンパク質の総称だ。イオンを通過させる経路(チャネル)には、「選択性」という特質がある。すなわち、経路によって通過できる物質が限定され、例えばカリウムチャネル、ナトリウムチャネルなどと呼ばれる。この選択性という特質を活用することで、特定の箇所や疾患に強力に作用するなど、従来とはまったく異なるアプローチの新薬が期待されている。対象となる疾患の領域としては、疼痛、循環器系、消化器系などにおいて効果のある新薬を生み出せるとの期待がある。しかし一方で、副作用をどう分離するかといった点や、創薬プロセス自体にも課題が多いことなどもあり、容易には参入しづらい創薬分野でもある。

同社のもう1つの強みである創薬インフラは、高度な技術・知識を有する研究員チームをはじめ、豊富な化合物ライブラリー、独自の測定機器を組み込んで効率性を上げたスクリーニング・ロボット、精製・分析のノウハウの蓄積といった要素を包含している。同社はこの創薬インフラを活用して、得意とする消化器領域や疼痛領域での開発を進めるほか、大学や公的研究機関、製薬企業などと共同研究を行っている。前述のようにイオンチャネル創薬では様々な課題も多く、同社の充実した創薬インフラがあってこそ、同社のイオンチャネル創薬技術も生きてくると言える。こうした強みが評価され、イオンチャネル創薬分野では複数の製薬企業との共同研究が進められている。

2008年の同社創立以来、同社はイオンチャネル創薬に取り組んできたが、2017年に大きな進捗があった。同社は自社で創出した選択的ナトリウムチャネル遮断薬についてマルホ(株)との間でライセンス契約を締結し(2017年12月25日発表)、導出に伴う契約一時金を受領した。これまで同社のイオンチャネル創薬技術は、複数の製薬企業との共同研究において活躍し、研究協力金という形で収益に貢献してきた。今回のマルホとの契約はイオンチャネル創薬として初めてのライセンスアウトであり、大きな一歩と言える。今後マルホは、選択的ナトリウムチャネル遮断薬開発を進めて医薬品を開発し、全世界を対象に販売を目指すことになるが、同社は開発に応じたマイルストン並びに販売後のロイヤルティを受け取ることになる。


名古屋大学初の「産学協同研究センター」を設置。アカデミア連携が順調に進捗

3. アカデミアとの連携
創薬ベンチャーの同社にとっては、創薬シーズ(医薬品候補化合物のタネ)をどう確保するかは生命線とも言えるポイントだ。この点について同社が進める戦略が、アカデミア(大学)との産学連携だ。地の利を生かせる名古屋大学との連携に特に注力している。

同社は2018年2月20日付リリースで、名古屋大学初の産学協同研究センター「ラクオリア創薬産学協同研究センター」の設置を発表した。同社は2014年4月に名古屋大学環境医学研究所内に産学協同研究部門「薬効解析部門」を設置したのを皮切りに、2015年2月に産学協同研究講座「薬剤科学・分析化学講座」と「新薬創成化学講座」の設置契約を締結し、同年8月には化学研究部が同大学東山キャンパスに移転するなど、同大学との連携を深めるとともに、中部圏におけるバイオ産業の啓蒙と振興に努めてきた。「ラクオリア創薬産学協同研究センター」では、これまでの3つの部門・講座を統合し、新たに「薬効解析部門」と「新薬創成科学部門」の2つに生まれ変わる。将来的には医学系研究科との臨床研究の推進も視野に入れながら、産学連携のもとで名古屋大学発の医薬候補化合物の創出を目指す方針だ。これまでの共同研究のなかでも、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療薬の研究は順調に進捗しているもようだ。

同社のアカデミア連携の取り組みは同社にとってポジティブな効果が期待できるという弊社の評価は、従来から変わりない。今回の「ラクオリア創薬産学協同研究センター」の設置は名古屋大学との結び付きを一段と強めることになり、主目的の創薬について同大学が有する豊富なターゲットや高レベルの基礎研究力を活用できることになる。また、大学主催の企業研究セミナーや合同企業説明会への参加、インターンシップ制度の活用などにより、将来的には有能な若手人材の採用・育成の面でも効果が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《MW》

 提供:フィスコ
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