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【市況】S&P500 月例レポート ― 長期上昇の“終わりの始まり”か短期調整か? (1) ―


 S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●求めよ、さらば与えられん

 求めよ、さらば与えられん ― いや、少なくとも発表はされました。関税の対象が全ての地域になるのか広範囲に及ぶのかは、舞台裏で交渉が進んでおり(北米自由貿易協定:NAFTA、EU、中国)、兵站(ロジスティックス)が練られている最中であるため、依然として不明です。

 一方、ウォール街では交渉は行われず、投資家は具体的な内容のない報道に反応し、なぜか市場に悪影響が及ぶという前提で取引が行われました。ニュースは何もないものの ― 不透明感は市場の最悪のシナリオです ― 状況を悪化させたのは、これまでの上昇(強気相場は2018年3月9日に9年目に突入)に対する緩やかな値固め(というのが一部の見方)の持続と、ボラティリティの上昇です。ボラティリティは最低1%上昇した日が12日、最低1%下落した日は11日ありましたが、2017年はそれぞれ4日ずつでした。さらに2%台を見ると、2%以上の上昇は1日、2%以上の下落は5日あったのに対して、2017年は2%変動した日が皆無でした。

 ウォール街では貿易戦争への懸念が高まり、相場は売られたものの落ち着きを保っており、仮にこれを急落に分類したとしても「相対的に」通常の急落と言えるでしょう。市場全体のトーンは依然として概ね楽観的ですが、保有銘柄の少なくとも一部を売却している向きがいるのは明らかです。というのは、貿易戦争はないだろうとの期待以外にも、2週間後に本格化する2018年第1四半期の決算発表で過去最高が更新されると、依然として期待されているからです。また、この季節は相場の押し上げ要因が多く見込まれることもあります(確か「期待しなければ失望はしない」という格言があった気もしますが)。

 当局はソーシャル・メディア企業のFacebook(FB)に対する圧力を強めており、米上院はFacebookのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)をはじめ、Alphabet(GOOG, GOOGL)やTwitter(TWTR)のCEOに対して、個人情報の流出問題に関する公聴会で証言するよう要請しました。また、全米37州の司法長官や英国の当局も状況についての調査を行うことを発表しており、こうした動きはさらに広がるとみられます。

 これまでプライバシー保護に関する問題への対応や規制が不十分な中、情報技術関連企業は成長を許されてきました。現段階では、ようやく「議論」が始まったばかりで、どのような法律が制定されるのか、ビジネスモデルにどのような影響があるのか、全く不明です。明らかなのは、この問題がしばらく続くという点です。多くのCEOがプライバシー方針に関する議論や対応に追われ、他の事業に集中する時間を奪われることになるでしょう。

●3月のまとめ

○3月のS&P 500指数は2,640.87で取引を終え、2月末の2,713.83から2.69%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス2.54%)しましたが、下落率は2月のマイナス3.89%(同マイナス3.69%)から改善しました。S&P 500指数は過去3ヵ月では1.22%下落と(同マイナス0.76%)、過去3ヵ月ベースでは2016年10月(マイナス2.18%)以来、第1四半期としては2009年第1四半期(マイナス11.67%。S&P 500指数の終値は797.87)以来の大幅な下落となりました。過去1年では11.77%上昇し(配当込みのトータルリターンは13.99%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2,139.56)からは23.43%(同26.96%)の上昇となりました。

 S&P 500指数は3月中に最高値を更新することはなく、終値での最高値更新は年初来で14回となっています(直近の高値更新は2018年1月26日で2,872.87)。最高値の更新は2017年に62回あり(1995年の77回に次ぐ過去2番目の更新回数)、大統領選以降で84回となりました。ダウ・ジョーンズ工業株価平均は24,103.11ドルで取引を終え、2月の24,943.71ドルから3.70%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス3.59%)。2017年12月末の24,719.22ドルからは2.49%の下落となりました(同マイナス1.96%)。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均も3月中に最高値を更新することはありませんでした(年初来では終値で最高値を11回更新しました。直近の高値更新は2018年1月26日で26,616.71ドル)。最高値の更新は2017年に71回と過去最高を記録し(1896年以降、1995年は69回)、大統領選以降で99回となっています。

○S&P 500指数の時価総額は3月に6,670億ドル減少して22兆4,960億ドルとなり、世界の株式市場の時価総額は1兆2,640億ドル減少して(このうち6,820億ドルが米国市場の減少分)53兆9,670億ドルとなりました。年初来では、S&P 500指数の時価総額は3,250億ドル減少し、S&Pグローバル総合指数の時価総額は8,230億ドル減少しました(このうち3,830億ドルは米国市場の減少分)。また、大統領選以降では、S&P 500指数の時価総額は4兆190億ドル増加し、世界の株式市場の時価総額は10兆410億ドル増加しました(このうち4兆8,390億ドルは米国市場の増加分)。

○米国10年国債の利回りは2.74%と、連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpの利上げが実施される中、2月末の2.88%から低下して月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

○英ポンドは2月末の1ポンド=1.3989ドルから1.4028ドルに上昇し(同1.3498ドル、1.2345ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.2336ドルから1.2303ドルに下落しました(同1.2000ドル、1.0520ドル)。円は2月末の1ドル=109.20円から106.41円に上昇し(同112.68円、117.00円)、人民元は2月末の1ドル=6.3489元から6.2990元に上昇しました(同6.5030元、6.9448元)。

○原油価格は2月末の1バレル=61.77ドルから5.2%上昇して64.96ドルで取引を終えました(同60.09ドル、53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は、3月末は1ガロン=2.764ドルと、2月末の2.676ドルから上昇しました(同2.589ドル、2.364ドル)。

○金価格は2月末の1トロイオンス=1,331.80ドルから0.2%下落して1329.40ドルで取引を終えました(同1,305.00ドル、1,152.00ドル)。

○VIX恐怖指数は2月末の19.85から上昇して19.97で月を終えました(同11.04、同14.04)。月中の最高は26.22、最低は19.60でした。

○ビットコイン(価格低下を背景に、市場の関心もやや失われました)は2月末の11,727ドルから下落して7,202ドルで取引を終えました(同13,850ドル、968ドル)。月中の最高値は11,694ドル、最安値は7,033ドルでした。

○ボトムアップベースで算出した1年後の目標値はS&P 500指数が3,010(現在値から14.0%上昇)、ダウ平均は27,718ドル(同15.0%上昇)と、相場が下落する中にあって、底堅さを維持しています。

※「長期上昇の“終わりの始まり”か短期調整か? (2)」へ続く。

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