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【特集】3Dマトリック Research Memo(7):2018年は国内で止血材、米国で癒着防止材の承認申請を目指す

3DM <日足> 「株探」多機能チャートより

■スリー・ディー・マトリックス<7777>の今後の見通し

3. 止血材の開発動向
(1) 止血材「PuraStatR」
「PuraStatR」については、前述したように韓国、カナダでCEマーキング認証申請中となっているほか、日本で消化器内視鏡領域に限定した臨床試験を2017年8月より開始している。経過は順調のようで2018年夏に試験を終了し、2018年秋にも承認申請を行う予定にしている。消化器内視鏡領域では既に欧州で多くの実績を積み重ねていることから、承認取得の可能性は高いと弊社では考えている。

製造販売承認申請後の審査期間は平均で約15ヶ月とされており、順調に進めば2019年冬、遅くとも2021年4月期の早い段階で承認される可能性がある。承認取得時には販売ライセンス契約先である扶桑薬品工業からマイルストーン収益800百万円を得られることになっているが、今回は契約の適用範囲である3領域(他は心臓血管外科、臓器出血領域)のうち1領域に限定されるため、受領額については今後の交渉で決めていくものと思われる。また、ほかの2領域のうち心臓血管外科領域についてはPMDAとの協議を開始している。消化器内視鏡領域の進捗を見て、心臓血管外科領域での臨床試験も進めていく予定だ。

(2) 後出血予防材
欧州では「PuraStatR」の適用拡大として、後出血予防材としてのCEマーキング取得を目指している。認証機関から比較試験の追加データを求められたことから臨床試験を追加で実施し、2017年12月初旬に再申請を行っている。過去の臨床データ(ヒストリカルコントロール群:202例)との比較において、「PuraStatR」群の後出血率は50%以上低く、また、76症例すべてにおいてESD(内視鏡的粘膜下層はく離術)実施部位への適用が容易であったこと、「PuraStatR」に起因する有害事象が認められなかったことから、認証される可能性は高い。止血材の申請の際には審査期間で約8ヶ月かかったが、今回は再申請ということもあり、それよりも短期間で審査が終わるものと予想される。現時点で審査は順調に進んでいるもようで、早ければ2019年4月期第1四半期、遅くとも2019年4月期第2四半期にはCEマーキング認証を取得できるものと弊社では見ている。後出血予防材として認証されれば、消化器内視鏡領域において「PuraStatR」の利用価値がさらに高まることになり、売上高の拡大につながるものと期待される。

(3) 次世代止血材の開発状況
欧州では次世代止血材「TDM-623」の開発も進めている。臨床試験用製品は既に完成しており、現在は製品の品質評価と臨床試験に向けたプロトコルの策定作業を進めている段階にある。同社では2019年4月期以降に臨床試験開始のための申請を行う予定にしており、適用範囲は「PuraStatR」と同じく消化器内視鏡術、心臓血管外科手術、における滲出性出血及び、臓器からの滲出性出血となる。また、後出血予防材としての適用も含めて臨床試験をまとめて行うことも検討している。

次世代止血材の開発が順調に進めば「PuraStatR」と競合することになるが、それぞれの特性に合わせて医師がどちらを使用するか判断していくことになる。このため、現在進めている独占販売ライセンス契約交渉への影響が懸念されるが、同社では次世代止血材も含めた形での契約交渉も進めており、契約交渉において支障は生じないと考えている。ただ、止血効果の高い次世代止血材が2~3年後に上市するのであれば、「PuraStatR」の売上げ成長スピードが当初の想定より鈍化する可能性はある。ただ、次世代止血材では「PuraStatR」よりも止血効果が高く、取り扱いが簡便なこと(常温保存が可能)、コストも低いことから、現在、市場開拓が遅れている心臓血管外科領域や一般外科領域での市場開拓が進む可能性が高い。一方、「PuraStatR」については後出血予防材としての機能も含めて内視鏡領域において市場拡大が見込まれる。このため、将来的には両製品がそれぞれの特徴を生かせる領域において成長していくものと弊社では予想している。

(4) 癒着防止材
米国では「PuraStatR」をオーストラリアで既に販売実績がある耳鼻咽喉科領域における癒着防止材として開発を進めていく方針を決定している。既にFDAと協議して策定したプロトコルで動物実験も開始している。比較対象品としてはMedtronic<MDT>の「MeroGel」を採用する。MeroGelはヒアルロン酸をベースとしたジェル状のパッキン材として既に市販されている製品。実験ではウサギの両鼻の鼻内粘膜に障害を付け、片側に「PuraStatR」、もう一方に「Merogel」を塗布し、術後30日目に組織評価を実施し、癒着の有無などを確認する。動物実験のため、期間は数カ月と短期間で終わる見込みで、同社では2019年4月期第1四半期中に510(k)申請を行う予定にしている。510(k)申請ではFDAは3ヶ月程度でデータを確認し審査を終える(追加データの要請・確認の時間は除く)ことから、順調に進めば申請後約半年で販売承認を取得できるものと予想される。このため、現在、複数社と独占販売ライセンス契約または代理店契約の交渉を同時並行で進めている。早ければ2019年にも販売が開始される見通しだ。

(5) 中国での開発動向
中国では、2017年4月にCPCと中国市場における止血材の開発・製造・販売に関するライセンス契約を締結しており、CPCが臨床試験に向けた準備を進めている。現在は、定期的にCPCとミーティングを行い、技術移転を進めている状況にある。今後の開発スケジュールに関しては、CPCの戦略次第となるため流動的ではあるが、中国市場で止血材が上市されることになれば、製品販売額の一定割合のロイヤルティ収入を複数年(5年以上)にわたり受領する契約となっているため、収益にプラスに寄与することになる。

中国の医療機器市場の年平均成長率は約22.5%、外科手術件数は約11%で拡大を続けている。現時点での止血材市場は年間で約200億円超と推定されているが、今後、医療技術の向上や手術件数の拡大に伴って止血材市場も年率2ケタ台の高成長が続くと予想される。なお、CPCは同社のペプチド原材料の主要仕入先の1社であり、ペプチドの研究開発分野では世界的なリーダー企業の1社として知られている。親会社であるGuizhou Xinbang Pharmaceutical Co.Ltd.(ヘルスケア分野のコングロマリット)の傘下には複数の医療施設や医薬品メーカーがあり、製品が上市されれば販売はスムーズに進むと弊社では見ている。

4. その他パイプラインの動向
(1) 歯槽骨再建材
歯槽骨再建材の開発状況については、前回レポート(2017年10月3日付)と特段の変化はない。米ハーバード大学附属病院において実施している2nd Pilot Studyにおいて、 2017年4月までに全12症例に対して投与を完了し、全症例で歯槽骨が再建され、インプラントを埋植後6ヶ月間の観察期間においてもインプラントが安定であることが確認されている。また、対象部位における新生骨の割合も、他家骨を充填した場合と比較して約2倍の水準に達するなど、機能面でも優れているデータが確認されている。

2017年12月までにすべての経過観察が終了したようで、現在はハーバード大学附属病院にて最終レポートをまとめている段階にある。同社は最終レポートの結果を見て、製造販売承認申請を行うか追加試験を行うかをFDAと協議した上で判断していく。時期としては2018年4月までに結論を出す考えだ。現時点では、症例数を増やして追加試験を行う可能性が高いと弊社では見ている。元々の症例数が少ないことや、統計的有意差検定を実施していないためだ。ただ、規模の大きい追加試験を単独で行うことは資金面で難しいため、次のステップに移行する段階で歯科領域の大手医療機器メーカーにライセンスアウトすることを想定している。仮に、ライセンス契約が決まれば550百万円程度の契約一時金を同社では想定している。

(2) DDS材料
国立がん研究センターとの共同プロジェクト「RPN2※標的核酸医薬によるトリプルネガティブ乳がん治療」における医師主導型の第1相臨床試験が終了した。同臨床試験は「がん幹細胞」に特異的に発現するRPN2遺伝子をターゲットとし、その発現を抑制する核酸(RPN2siRNA)と同社が開発した界面活性剤ペプチド「A6K」をキャリアとするDDSを組み合わせた製剤の安全性評価を行うもの。siRNA単独では安定性が低く腫瘍部に届くまでに分解されてしまうことが課題であったが、「A6K」との複合体にすることで安定性が高まり、分解が抑制されることが明らかとなっている。実際、イヌの実験では乳がん腫瘍の縮小効果も確認されている。

※RPN2…がんの転移・浸潤・薬剤耐性を担うターゲット遺伝子。


本治験の結果詳細については、国立がんセンターより学会および論文で発表される予定。第1相臨床試験の結果が良好であれば企業主導型治験への移行及び大手製薬企業へのライセンスアウトの可能性もあり、その結果が注目される。

また、2017年7月にはAMEDによる2017年度「革新的医療技術創出拠点プロジェクト」関連シーズ「橋渡し研究戦略的推進プログラム」に、広島大学医歯薬保険学研究科との共同プロジェクト「がん幹細胞及び抗がん剤耐性がん細胞に作用する革新的抗腫瘍核酸医薬の開発」が採択されたことを発表している。同プロジェクトは、悪性胸膜中皮腫※を対象疾患としたマイクロRNAによる新しい核酸医薬の研究開発を行うもので、同社はマイクロRNAをがん細胞に効率的に送達するためのDDS用材料として「A6K」を提供する。今後3年間で前臨床試験を実施し共同研究開発を行っていくほか、共同特許の出願も予定している。なお、今回の採択による助成金は主に広島大学が受領するため、同社の業績への影響は軽微となっている。

※肺を覆う胸膜の表面に発生するがん。アスベストが発症原因の多くを占めている。現在の治療法は手術を抗がん剤の併用だが、再発も多く診断5年後の死亡率は90%を超える。年間死亡者数は2015年で1,500名超、今後2035年をピークに2?3倍の発症が予測されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MH》

 提供:フィスコ

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