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【特集】ザイン Research Memo(2):ファブレス半導体メーカーで売上総利益率の水準は世界トップクラス

ザイン <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

1. 会社沿革
ザインエレクトロニクス<6769>は1991年に現代表取締役会長の飯塚哲哉(いいづかてつや)氏が、東芝<6502>から独立して起業したファブレス半導体メーカーである。1992年に韓国のサムスン電子と半導体メモリ及び液晶の開発設計を目的とした合弁会社、ザインエレクトロニクス株式会社を設立し、1998年に合弁を解消するまでサムスン電子の半導体メモリ及び液晶開発の一翼を担っていた。一方で、1997年には初の自社ブランド半導体製品となる液晶ディスプレイ向けのデジタル信号処理用LSIを開発、販売を開始し、その後は高速画像伝送技術で業界のけん引役となり、ファブレス半導体メーカーとしての事業基盤を固めていく。2010年以降はテレビや液晶モニタ市場の利益率低下や日系セットメーカー凋落の影響もあって業績は停滞期を迎えたが、その後は民生機器市場から産業機器、車載市場へと市場領域の拡大を進めながら、再成長に向けた事業基盤の構築を進めている段階にある。

同社では事業基盤の多角化を進めるため、M&Aにも注力している。2003年に高周波無線通信用半導体のファブレスメーカーであったギガテクノロジーズ(株)を吸収合併しつつ、世界大手半導体メーカーから半導体開発チーム一体での採用を行ったほか、2009年には台湾半導体メーカーより携帯電話などのカメラに用いられる画像処理用半導体の事業を譲り受けた。また、2016年には新たに高速データ伝送技術を用いた半導体やIP製品の開発販売を行うシリコンライブラリ(株)に出資し、持分法適用関連会社としている。海外展開としては2000年に台湾、2010年に韓国、2013年に中国にそれぞれ販売拠点を設立したほか、2018年には米国にも子会社を設立した。米国での子会社開設は、世界で活用されるレファレンスデザインを構築する協業パートナーとのコラボレーションを確立すること、北米顧客に対する営業活動や技術サポート活動等をより強力かつ迅速に推進していくことなどが目的となっている。

2017年12月末時点の連結対象子会社数は海外販社4社で、そのほかに持分法適用関連会社が1社となっている。連結従業員数は2017年12月末で133名、うち約7割が技術系社員で占められ、技術開発型の企業と言える。

2. 事業の内容
同社は半導体の企画・開発・販売を行い、製造については国内外のファウンドリーに委託するファブレスメーカーである。販売については直販だけでなく、販売代理店経由でも行っている。売上総利益率は60%以上と高く、世界の中でも上位5番目にランクされ、付加価値の高い半導体を開発・販売していることが特徴となっている。

(1) 主要製品
現在の製品ラインナップは映像情報などの大容量データを高速伝送する際に用いられるインターフェース用半導体が主力で、全売上高の約7割を占めている。画像処理用LSI (ISP)が2割強、残りが電源ICやモーター駆動用IC等となっている。そのほか、同社が開発した高速情報伝送用半導体のコア部分をIPとしてグラフィックスメーカー等にライセンス供与し、設計技術料及びロイヤリティー収入なども得ているが、売上構成比としては1%程度と軽微となっている。

主力のインターフェース用半導体は、LVDS製品や「V-by-OneR」シリーズが大半を占めるが、ここ数年は「V-by-OneR」シリーズの売上げが拡大し、インターフェース用半導体の約半分を占めるまでになっている。特に、2008年に映像伝送用の新標準規格として世界に提案した「V-by-OneRHS」は、データ伝送速度が4ギガビット/秒と高速伝送を実現し、高解像度のフルHD画像を1対のケーブルで伝送可能としただけでなく、独自開発の伝送技術によって伝送可能距離を延伸し、使い勝手も向上した製品となっている。従来のLVDS製品に比べて、ケーブル本数が6分の1に削減できるほか、付随するノイズ対策費用含めてシステムのトータルコスト削減に大きく寄与する製品として採用が広がっている。

なお、同社は大容量データの高速伝送が必要なテレビ市場において、10億7千万色の色表現力に対応した10ビットLVDS製品の量産を2003年に世界で初めて開始しており、その後も2005年にフルHD対応品、2007年にフルHD倍速対応品をいずれも世界で初めて市場投入してきた。2008年にはV-by-OneRHS技術を発表し、2011年に4Kテレビなど高解像度映像機器内の高速インターフェース用半導体として同技術がデファクト・スタンダード(事実上の世界標準)となるなど、2000年以降のテレビやモニタの高精細化に大きく貢献してきたと言える。

また、主力製品の1つであるISPは、主にモバイル機器用やセキュリティカメラ用の画像処理プロセッサとして販売されている。同社製品の特長は、画像処理プロセッサに手振れ補正機能を実装し高速処理を実現したこと、ワイドダイナミックレンジや赤外光にも対応していること、また、DRAMが不要でカメラモジュールの小型化・低コスト化・低消費電力化に寄与すること等が挙げられる。特に、DRAMを不要としたことで、従来品と比較して小型化を実現している。

(2) 市場別、地域別売上の構成比
2017年12月期の市場別売上構成比を見ると、産業機器向けが65%(うち5割が事務機、2割がアミューズメント機器、3割がセキュリティカメラほか)と最も大きく、車載機器向けとモバイル向けが各13%、民生機器向け9%となっている。事務機向けは国内外の大手メーカーに入っており、セキュリティカメラでは国内及び中国の大手メーカー向けに販売している。また、民生機器はテレビや液晶モニタなどが中心で、顧客は中国、台湾、韓国メーカーなどアジアメーカーが中心となっている。

地域別売上構成比では日本が71%を占めており、中国10%、韓国9%、台湾8%、欧米他2%となっている。為替はすべて米ドル建てで取引きされているため、円高は売上高の目減り要因となるが、半導体の製造を一部、海外のファンドリーに委託しており仕入コストも低減するため、売上総利益率への影響はほとんどない。ただし、ドル建て資産を保有しているため、期末の為替レート差による評価差損益が営業外で発生することになる。2017年12月末時点では約20百万米ドル分の資産を保有している。

(3) 主要顧客
同社の主要顧客は、国内では事務機器メーカーや大手家電メーカー、アミューズメント機器メーカーなど、海外では韓国のサムスン電子やLG電子グループ、台湾の主要液晶メーカーやPC関連メーカー、中国の主要テレビメーカーやセキュリティカメラメーカー、欧州ではFicosa等の車載機器メーカーとなっており、グローバル企業が多くを占めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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