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【特集】KLab Research Memo(1):過去最高の売上高及び各段階利益を更新。新作タイトルも順調に立ち上がる

KLab <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

1. 会社概要
KLab<3656>は、「世界と自分をワクワクさせろ」をビジョンに掲げ、スマートフォン向けアプリを中心にモバイルオンラインゲームの企画、開発を手掛けている。主要タイトルには、既存の「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル」、「BLEACH Brave Souls」などがあるほか、足元では、新作タイトル「キャプテン翼~たたかえドリームチーム~」(以下、キャプテン翼)や「うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live」(以下、シャニライ)も順調に立ち上がってきた。日本の人気漫画やアニメーションをゲーム化し、運用するところに強みがあり、海外への展開にも積極的である。海外売上比率は約19%を占め、過去4年間で4倍以上に拡大してきた。また、上位4タイトルで売上高の大部分をバランスよく構成しており、特定のヒットタイトルへの依存度が高い業界においては非常に安定的な収益構造と言える。

ここ数年は、スマートフォンゲーム市場全体に停滞感が漂うなかで、新規タイトルの不振や方針転換等に伴うリリースの見送りなどにより、業績に伸び悩みが見られた。しかしながら、足元では運営力及びマーケティング力の進化により既存タイトルが好調に推移していることや固定費の圧縮や変動費化が進んできたことに加えて、注目を集めている新規タイトルが順調に立ち上がったことから、同社は本格的な成長フェーズに入ってきたと言える。

2. 2017年12月期決算の実績
2017年12月期の業績は、売上高が前期比36.6%増の26,777百万円、営業利益が同283.7%増の4,891百万円と増額修正予想(レンジ)の上限値を更に超える大幅な増収増益となり、過去最高の売上高及び各段階利益を更新した。売上高は、既存の主力タイトルが年間を通じて想定以上に好調であったことに加えて、新規タイトルが第3四半期以降の大幅な業績の伸びをけん引した。利益面でも、増収効果や収益体質改善の成果により大幅な増益(利益率の向上)を実現した。

3. 2018年12月期通期業績の見通し
2018年12月期の通期業績予想(レンジ形式)※について同社は、売上高を33,500百万円(前期比25.1%増)~38,500百万円(同43.8%増)、営業利益を3,750百万円(前期比23.3%減)~6,250百万円(同27.8%増)と見込んでおり、レンジ上限の場合は、2期連続で大幅な増収増益となる見通しである。4 本から6 本の新作タイトルリリースを想定する一方、既存タイトルについてはライフサイクルの進行に伴う減衰傾向(自然減)をたどる予想である。

※同社は前期よりレンジ形式による「通期業績予想開示」を採用している。


弊社では、順調に立ち上がった「キャプテン翼」や「シャニライ」が海外展開を含めて通年寄与することなどから、仮に新作タイトルが不振であったとしてもレンジ内での着地は十分に可能であると評価している。したがって、前期同様、新作タイトルや「キャプテン翼」及び「シャニライ」の海外展開などの結果次第では、業績が上振れ、レンジ上限値を更に超える可能性にも注意が必要である。

4. 成長戦略
スマートフォンゲームを取り巻く環境変化が厳しいなか、ここ数年にわたって同社は、内部開発によるゲーム事業中心から、外部開発/パブリッシングによるゲームタイトル数を増加させるほか、非ゲーム事業の推進により、三分鼎立(さんぶんていりつ)の状態を目指してきた。ただ、前期の新作タイトルが順調に立ち上がり、既存タイトルも好調であったことから、ゲーム事業のボラティリティの高さが経営に与えるリスクが後退したことを理由として、好調なゲーム事業に経営資源を集中し、更なる成長を目指す方針へと舵を切った。同社は、ゲーム事業を更に成長させるために、1)Japanese IPs(有力IPの獲得)、2)Global Growth(海外パブリッシングの強化)、3)Original Creations(自社IP創出)の3つのキーワードを掲げ、持続的な成長を目指す戦略である。

弊社では、スマートフォンゲーム市場の先行きに不透明感があるなかで、海外への展開、残存者利益の享受(外部リソースの活用を含む)が同社の成長を支えるものとみており、その動向に注目している。また、運営力の高さが発揮されてきたことや、「リスクヘッジよりも売上成長」をキーワードとしたゲーム事業への集中・非ゲーム事業等の整理も経営の安定性を評価するうえで、プラスの材料と捉えている。今後も、日本のIPを展開していくノウハウや独自のマーケティング力を生かして、いかに同社ならではの新たな価値を創出していけるかが成功のカギを握るだろう。

■Key Points
・2017年12月期は計画を大きく上回る増収増益により、過去最高の売上高及び各段階利益を更新
・既存タイトルが好調に推移したほか、新作タイトルが順調に立ち上がった
・収益構造が安定化したことから、好調なゲーム事業に特化する方向へと事業方針を変換
・今後も、有力IPの獲得、海外パブリッシングの強化、自社IP創出などに取り組む

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《NB》

 提供:フィスコ

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