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【特集】北朝鮮とトランプが支える「金価格」、核と保護主義の影の中で <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―年安値目前まで下落も貿易戦争懸念で下げ止まり、ここからの見通しは―

 は米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測を受けて今月1日に1月2日以来の安値1303.14ドル(ドル建て現物価格)をつけたのち、米大統領の鉄鋼製品やアルミ製品への関税賦課方針をきっかけに下げ一服となった。パウエル米FRB議長が議会証言で利上げ見通しを示したことを受けて年4回の利上げ予想も浮上しドル円はドル高に振れた。しかし、米国の大型減税で財政赤字拡大の見方が強いことに加え、保護主義に対する懸念も強まり、ドル安に転じ、金の下支え要因となった。金がここで下げ止まるのかどうか、当面の材料を確認する。

●米保護主義でトリプル安の可能性

 トランプ米大統領は1日、鉄鋼輸入品に対して25%、アルミニウム製品には10%の関税を課す方針を発表した。ただ、その後にカナダとメキシコが北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で米国に譲歩すれば、検討中の鉄鋼・アルミの輸入関税が免除される可能性を示しており、関税賦課発表は各国との交渉を有利に進めるための戦術との見方が出ている。

 欧州連合(EU)は関税が実際に発動されれば報復関税を課すとし、中国は米国に「自制」を要求した。また、世界貿易機関(WTO)のアゼベド事務局長は、「WTOは米国の鉄鋼とアルミニウムの輸入制限方針に明確な懸念を持っている。各方面の反応からみて、事態が悪化する可能性は大きい。貿易戦争は誰の利益にもならない。WTOは今後も状況を注視する」との声明を発表した。

 米国の関税賦課が正式に発表され、貿易戦争に対する懸念が強まると、中国が米国債売却に動く可能性もある。また、投資資金が米国から引き揚げられると、株安・ドル安・債券安のトリプル安となるシナリオが懸念される。米トリプル安となった場合、金は資金の逃避先(セーフヘイブン)として買われることになろう。

●朝鮮半島の非核化が実現するかどうかが焦点

 韓国は5日、北朝鮮に特使団を派遣した。平昌冬季五輪によって関係が改善し、特使団は北朝鮮の金正恩委員長と会談した。また、韓国は6日、北朝鮮が非核化に向け米国と対話する意向を表明したと発表した。北朝鮮が協議中は核開発計画を停止すると述べたという。これまで米国が北朝鮮の非核化を目指しているのに対し、北朝鮮に非核化の意思はなく、互いの主張は平行線を辿ってきたが、北朝鮮が非核化の意向を示したことで非核化が実現するかどうかが今後の焦点となる。

 米国は主張が平行線であることを見越して2月23日に大規模な制裁措置を発表していた。トランプ米大統領は「この制裁が機能しなければ、第2段階に移行しなくてはならない」と述べ、軍事攻撃の可能性を示唆した。韓国は、文大統領と北朝鮮の金正恩委員長が4月末に板門店で会談することで南北が合意したと発表しており、今回の意向表明が時間稼ぎかどうかを見極めることになりそうだ。パラリンピックは18日に終了し、4月には米韓合同軍事演習が予定されている。北朝鮮情勢の行方と金ETF(上場投信)の投資資金の動向を確認したい。

●東京金は円高進行を警戒

 黒田日銀総裁は2日、再任に向けた衆院議院運営委員会での所信聴取後の質疑で、2019年度ごろに金融緩和を縮小する出口戦略を検討していることは間違いないとの見通しを示した。これまで為替市場で、欧州中央銀行(ECB)のガイダンス変更の可能性が示されるなどし、ユーロ主導でドル安に振れた。日銀の出口戦略が意識されると円高が進む可能性がある。シカゴ円の先物市場で大口投機家が大幅に円を売り越しており、買い戻しが進むと、1ドル=105円の節目を突破し、100円を目指すとみられる。

 また、長期的に為替は購買力平価(PPP)に収束するとみられており、2019年度にかけては企業物価PPPである95円が意識される。金は米保護主義に対する懸念が支援要因だが、円が買い戻し主導で急伸した場合、東京金は短期的に上値が抑えられることになる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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