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【特集】死角なき米景気、堅調エネルギー需要と原油価格の行方 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

―NYダウ急落も景気拡大に陰りなし、焦点は金利動向か―

●石油価格を左右する米国の需要動向

 米国の石油需要は堅調である。賃金の伸びがなかなか加速せず、インフレ率は停滞期を抜け出していないなど、ごく一部の経済指標を除けば、米経済に死角はあまり見当たらない。雇用環境に不安はなく、株価も堅調であり、消費者はためらいもなく自動車を乗り回し、石油を消費する。米国のガソリン需要は景気と連動する傾向にある。米国は景気拡大期にあり、大規模減税も相まって、今年の米国のガソリン需要は例年以上に強いだろう。

 米エネルギー情報局(EIA)の短期エネルギー見通しを参考にすると、今年の石油需要(ガソリン、ディーゼル燃料など全ての石油製品を含む)は需要期の7-9月期に日量2070万バレルまで拡大すると期待されている。現在の景気動向が維持されるなら、来年の7-9月期には同2100万バレルまで増加する見通し。世界の石油需要は日量9700~9800万バレル程度で推移しており、全体の2割超を占める米国の需要が増減すると、石油価格にあっさりと響く。

●2月株価調整にも米景気は揺るがず

 米国は需要・供給の両面でエネルギー市場の中心である。常識的過ぎるが故に、米国の経済指標を用いてエネルギー価格の動向が十分に解説されることはあまりないものの、景気動向とエネルギー需要の結びつきは強い。

 株価が大きく変動した2月の米経済指標はまだほとんど発表されていないが、2月のミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は99.9となり、1月の95.7から上昇した。金利上昇を引き金として、金融市場が動揺した悪影響は特に見受けられないほか、住宅ローン金利の上昇が消費者心理を悪化させているようにも見えない。2月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数は前月比で上昇、ニューヨーク連銀製造業景気指数は低下、カンザスシティ連銀製造業活動指数は上昇、ダラス製造業活動指数は上昇と、金融市場の狼狽は企業マインドにも反映されていない。

 今週はシカゴ購買部協会景気指数、米ISM製造業景気指数などが発表される予定で、目につくような変化があるなら話題となりそうだが、発表済みの消費者、企業マインド指数を見る限り、警戒する必要はなさそうだ。

 米10年債利回りは2013年1月以来の高水準である3%に接近しているほか、住宅ローン金利の指標である米30年債利回りが上昇を続けているなかでも、金利上昇が景気を阻害している兆候は今のところ見受けられない。拡大を続ける米経済が転換を迎える際には、株価や景況感指数など、先行性のある指標に兆候がまず現れるはずであるが、それがないのであれば、正常化の途中にある金利を経済が受け入れようとしていると思われる。ただ、金利上昇に対する耐性を確認するにはまだ時間が必要だ。

 今後の経済指標を確認するとしても、金利上昇によって米経済が腰折れしないようなら、景気拡大は今後も続くことが期待できる。米景気拡大が、ガソリン需要増加や原油高を連想させる構図となるのだろうか。金利正常化のなかで米経済が自立できるなら、2007年の世界金融危機以降で、景気拡大は新たな局面に突入することになる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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