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【特集】原油、大幅安のなぜ――米シェールオイル大増産と産油国の憂鬱 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司

―砕かれたOPECの野望、減産尻目にシェア拡大に走る米国―

●協調減産は米シェール増産により相殺へ

 年初まで堅調だった原油価格が崩れている。世界的に石油需要が拡大し、石油輸出国機構(OPEC)やロシアなどの価格回復努力の甲斐あって原油高が実現していたものの、米国のシェールオイル増産が存在感をさらに強めて原油高トレンドを揺るがした。

 昨年後半からの原油高局面での主役は、OPECやロシアによる協調減産と需要拡大を背景とした需給の引き締まりだったが、先週6日に米エネルギー情報局(EIA)の月報が発表されたのを切っ掛けに米国のシェールオイル増産に対する懸念が一気に強まった。EIAの見通しに基づくと、米国の増産規模は2017年初めから2018年末で日量220万バレルにも達する見通しで、増産ペースは恐ろしく早い。シェールオイル革命が再び到来し、増産に拍車が掛かっているような雰囲気さえある。

 EIAは米国のシェールオイルの生産動向を掘削生産性報告(DPR)として毎月集計・発表している。シェールオイル革命の真っ只中だった2014年通年で、シェールオイルの生産量は日量127万バレル増えた。その後は原油価格の下落によって一時的な後退を強いられたものの、2017年の増産規模は日量120万バレルに達している。

 2017年から開始されたOPECやロシアなどの協調減産の規模は日量で約180万バレルである。協調減産の約7割が米国の驚異的な増産によって既に埋められ、このままのペースで米国が原油生産量を増やすなら、今年前半には完全に相殺されそうだ。先週からの原油安の背景はここにある。強気の原油市場がまとっていた熱気は既にほとんど感じられない。

●OPEC総会で減産規模拡大の議論も

 OPECなどの取り組みによって世界的な石油の過剰在庫は減少し、協調減産が奏功してきたといえるが、今後は効果を期待しにくくなった。原油高の追い風を受けて拡大したシェールオイル生産量がさらに増えるなら、サウジアラビアやロシアなど主要な産油国は後手に回らざるを得ない。次のOPEC総会は6月である。原油価格の失速とともにシェールオイル増産がピークアウトしないと、産油国は米国がシェアを広げるのを目の当たりにしつつ、不快な2018年の前半を過ごすことになりそうだ。

 イランなどOPEC加盟国の一部は、行き過ぎた原油高を懸念して協調減産の期間を短縮すべきであるとの認識を示していたが、悠長で楽観的な態度は存在する意味を失った。今後の原油価格や過剰在庫の動向次第では、6月のOPEC総会で協調減産規模の拡大や、減産期間の再延長が議論される可能性が浮上する。「在庫減=原油高」の構図は崩壊しており、今後の原油相場は新たなテーマへと移行していくことになる。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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