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【市況】S&P500 月例レポート ― 強気相場の持続か、根拠なき熱狂の復活か(後編)―


●企業業績

 これまでに決算発表を終えた企業の好調な業績が株価を下支えし、押し上げています。現在、201銘柄が2017年第4四半期の決算発表を終えています(S&P500指数の時価総額の49.5%、銘柄数では39.8%に相当します)。そのうち予想を上回ったのは159銘柄、下回ったのは23銘柄、予想通りだったのは19銘柄でした。比較可能なデータがある200銘柄のうち、157銘柄(78.5%)で売上高が予想を上回りました。

 1月に6.4%上昇した金融セクターは、43銘柄のうち36銘柄(83.7%)が予想を上回りました。情報技術セクターは34銘柄のうち30銘柄(88.2%)が予想を上回り、7.6%値上がりしました。ヘルスケアセクターは23銘柄のうち21銘柄(91.3%)が予想を上回り、1月に6.6%値上がりしました。米国の一般会計原則(GAAP)に基づく公表利益は減少しました。これは税額控除の評価減に関連して費用が発生することによるもので(法人税率引き下げにより、繰延税金資産の将来価値が減少するため)、第4四半期の費用が「通常」であった銘柄は極めて少数でした。413億ドルの繰延税金資産が費用処理された結果、2017年第4四半期のGAAPに基づく公表利益は15.5%減少した一方、2018年の業績見通しは引き上げられました(「増益前の痛み」)。

 2018年に関しては、大半の企業が所得税減税による節減を挙げており、見通しは明るく、企業が業績見通しを引き上げて、アナリストがそれに追随する形となっています。通常であれば、1年のこの時期はアナリストが現実に直面して、目標株価、利益予想、買い/売り/保有の推奨を調整するため、通年の業績見通しは引き下げられます。ところが、2018年1月は、営業利益の予想が2018年で5.1%、2019年で5.9%引き上げられました。

 市場参加者は業績予想の引き上げを好み、それを株価に織り込んでいますが、業績の伸びのうちどれだけが所得税減税の効果によるもので、どれだけが実際の生産と売上高の伸びによるものであるかを見極めるべきでしょう。

●トランプ大統領と政府高官

 政府機関の閉鎖を巡って、12月は上下両院が12月21日(木)に再度短期の歳出法案を可決したことで、翌22日(金)からの閉鎖は回避されました。しかし、1月は事態がさらに進み、時刻が1月20日(土)の深夜零時を告げると同時に、政府機関が閉鎖されました。議会での協議は週末にわたって続けられ、21日(日)遅くに計画されていた採決は見送られたものの、翌22日(月)には採決にこぎつけ、4回目のつなぎ法案(バンドエイド、今回は2018年2月8日まで有効)が可決されたことで、政府機関の閉鎖(および政府職員の一時帰休)は短期間に終わりました。しかし、再度閉鎖に陥る可能性があります(さらにバンドエイドが必要であれば、バンドエイドメーカーのJohnson&Johnsonの買い推奨が出始めるかもしれません)。

 最終的な妥協案をまとめる必要があり、さもなければ、米国政府の債務上限が近づき始める中で(現在の上限は20兆4550億ドルで実際の債務額は20兆6000億ドルですが、この差異は米財務省の当面の「やりくり」によるものです)、5度目のつなぎ法案が必要になります(国民にとっても)。

 市場の反応はこれまでと変わらず、政府機関の閉鎖が予想された週の週末を過去最高値で終え、政府機関が再開された22日も再度最高値を更新して引けました。その後も数度にわたり終値と日中の最高値を更新し、1月は21営業日中14営業日で最高値を更新する結果となりました(2016年11月8日の米大統領選以降では84回)。また、市場では、1月の4回の全ての金曜日で最高値を更新し、嬉しい週末となったことから、「花金」と言う言葉が新たな意味が帯びています。ただし、夢を形作ったものは時として悪夢の種をまくことになります。

 トランプ大統領は、輸入太陽光パネルと洗濯機に追加関税を課す計画を発動しました。一部ではこれを「アメリカン・ファースト」を通じた貿易戦争の始まりとみています。韓国のLG Electronics(LGEAF)はこれに対応して、自社製洗濯機の価格が15~20%(70~100ドル)上昇する見通しを発表しました。トランプ大統領はスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムに参加し、米国は「ビジネスに対してオープンである」と宣言するとともに、貿易は公正でなければならないと主張しました。

 トランプ大統領の初の一般教書演説は率直ながらも抑制された内容となり、同大統領は就任1年間の成果を誇示するとともに、雇用、インフラ、貿易面で将来の経済的利益を目指すプランを示しました。

●利回り、金利、コモディティは活発な動きが続く

 米国10年国債の1月末の利回りは12月末の2.41%、2016年末の2.45%を上回る2.72%となりました。米国30年国債の1月末の利回りも2.94%と、12月末の2.75%から上昇しました(2016年末は3.07%)。

 外国為替市場では、ユーロは12月末の1ユーロ=1.2000ドルから1.2412ドルに上昇し(同1.0520ドル)、英ポンドも12月末の1ポンド=1.3498ドルから1.4191ドルに上昇しました(同1.2345ドル)。円は12月末の1ドル=112.68円から109.20円に上昇し(同117.00円)、人民元も12月末の1ドル=6.5030元から6.2893元に上昇しました(同6.9448元)。

 金価格は12月末1トロイオンス=1305.00ドルから1348.70ドルに上昇しました(同1152.00ドル)。原油価格は12月末の60.09ドルから64.85ドルに上昇しました(同53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は12月末の1ガロン=2.589ドルから2.723ドルに上昇しました(同2.364ドル)。

 VIX恐怖指数は月中の最高が15.42、最低が8.92となり、12月末の11.04から13.69に上昇して月を終えました(同14.04、2016年11月8日の米大統領選直前は23)。


[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト

※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。

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