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【特集】世界同時株安で「ゴールド」は買われるか? 過去のショック安を振り返る <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―リーマンショック時は換金売りで下落、上昇には材料必要か―

 金はドル建て現物価格ベースで1月25日に2016年8月以来の高値1,365.79ドルを付けたのち、米連邦公開市場委員会(FOMC)でインフレ見通しが示されたことや好調な米雇用統計を受けて調整局面を迎えた。ユーロ圏の景気回復見通しや欧州中央銀行(ECB)の金融政策正常化に対する見方を受けてユーロ主導でドル安に振れたことが支援要因となったが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測が高まると、ドル安が一服した。ただ、米FRBの利上げ観測の高まりをきっかけに米株価が暴落して世界的な株安となり、金の下支え要因となる場面も見られた。

 株安で金に逃避買いが入るかどうか、過去の動きを振り返り、株安時の金の反応を解説する。また、当面の材料を確認する。

●リーマンショック時は株安とともに金も下落

 金は通常、他のリスク資産の下落やインフレに対するヘッジとして買われ、ポートフォリオの一部に組み込まれる。他のリスク資産が下落すると、金に逃避買いが入って上昇し、損失を埋め合わせることが期待される。

 ただ、過去の動きを振り返ると、株安とともに金も下落した場面が見られた。2008年9月のリーマンショック時にNYダウ平均株価が9月12日の1万1,421.99ドルから10月末に9,336.93ドルに下落したのに対し、金は763.45ドルから725.30ドルに下落した。金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高を見ると、614.35トンから749.21トンに増加し、逃避買いが入ったが、価格押し上げにはつながらなかった。株式市場での損失を埋め合わせるために換金売りが出たことが金下落の背景とみられている。

 一方、今回の株安は利上げ観測の高まりによる利食い売りがきっかけであり、5日にダウ平均株価が一時1,597ドル下落したことについて、アルゴリズムや高頻度のクオンツ取引によるフラッシュクラッシュとの見方が出ている。米経済の堅調が見直されれば株価の下値は限られるとみられ、新たなポートフォリオが組まれる可能性がある。株価の動向とともに金ETF(上場投信)に投資資金が流入するかどうかを確認したい。

●北朝鮮の軍事パレード計画
 北朝鮮が、大規模な軍事パレードを平昌冬季五輪開会式の前日にあたる2月8日に行う方向で準備しているとの観測が伝わっている。北朝鮮は、北朝鮮軍の創建日を1948年2月8日とする決定書を発表しており、五輪開幕の前日は創建70周年記念日にあたる。

 米国務省は、北朝鮮の軍事パレード計画に不満を示す一方、五輪会場に向かう米国民に対し、韓国の治安対策はあらゆる事態に対応しているとして安心するよう呼び掛けた。

 米韓首脳は五輪期間中は軍事演習を見送ることで合意しているが、北朝鮮が軍事パレードを実施すると、地政学的リスクが意識される可能性がある。

●「アメリカ第一主義」は通商戦争を引き起こすのか

 トランプ米大統領は1月22日、洗濯機と太陽光パネルに輸入関税をかける大統領令に署名した。米大統領はこれにより通商戦争が引き起こされるわけではないとしているが、米商務省が外国からの鉄鋼輸入を抑制する方法に関する調査やアルミニウム輸入が国家の安全保障に及ぼす影響に関する調査を米大統領に報告しており、鉄鋼やアルミニウムの輸入制限が決定される可能性がある。

 また、トランプ米政権は、中国が米国の知的財産を侵害しているとして、米通商法301条に基づき、同国の処罰を現在検討している。米大統領はより公正で互恵的な貿易を求めているが、「アメリカ第一主義」が保護主義につながるとの見方も強く、通商問題になるようであれば、金はヘッジとして買われるとみられる。

 一方、米大統領はスイスのダボス会議で、米国が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)について「もしすべての国の利益になるなら、個別かグループでの交渉を検討する」と述べ、復帰も含めて検討する考えを明らかにした。通商政策で揺さぶりをかけているのか、実際に考えが変化したのか、今後の政策で見極める必要がありそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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