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【特集】急上昇「ゴールド」の勢いは続く? 利上げ、北朝鮮、仮想通貨の影響は <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行

―検証・金価格上昇の可能性、目先ポイントと2018年の材料―

 金は12月に急伸し、年明け後にドル建て現物価格は3ヵ月半ぶりの高値1,325.61ドルを付けた。東京金先物価格も急伸し、2年半ぶりの高値4,793円を付けた。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測を受けてファンド筋の買い越しが縮小し、一部が売り方に回ったが、年末年始にドル安に振れ、買い戻し主導で上昇する格好となった。金はこのまま上昇を続けるのか、利上げ見通しなどを受けて戻りを売られるのか、目先のポイントを解説するとともに今年の材料を確認する。

●米FRBの3回利上げ予想も市場は2回織り込む

 昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されるとともに、当局者は今年の3回利上げを予想した。イエレン米FRB議長は昨年11月の講演で「低インフレを放置するのは非常に危険だ」と強調し、利上げ見通しが強まった。ただ、米FOMC議事録では低インフレに対する懸念も示されており、利上げが進むかどうかは経済指標次第だ。

 シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフェドウォッチによると、米短期金利先物市場が織り込んでいる利上げ確率は12月の1.75~2.00%が35.7%と最も多く、利上げ回数は2回にとどまっている。利上げ観測が後退すると、ドル安に振れ、金の支援要因になる。

 ただ、ニューヨーク原油が2014年12月以来の高値を付けており、今後のインフレにつながるようなら利上げ観測が再び強まる可能性が出てくる。また、米国の労働市場がひっ迫し、賃上げにつながるかどうかも焦点だ。

 2月にはパウエル理事が次期議長に就任するが、現行路線が継承されるとの見方は強く、緩やかな利上げが続くとみられる。市場の動きでは米国債のイールドカーブのフラット化には注意が必要だ。数年後の景気後退に対する懸念が強まると、米株価が急落し、金に逃避買いが入る可能性も出てくる。

●北朝鮮の対話の行方と欧米の政治リスク

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が1日に韓国との対話を表明し、板門店の南北直通電話回線を再開した。「核のボタン」で言葉の応酬が見られたが、「新年の辞」からは米国との衝突を回避するために韓国との対話に動いた感がある。9日には韓国と北朝鮮の南北高官級会談が開かれた。

 ただ、北朝鮮の平昌冬季五輪への参加が表明されたが、韓国との核兵器を巡る対話は拒否された。核兵器は米国だけを対象としているとされ、米国との対話があるかどうかが焦点となる。トランプ米大統領は対話に前向きな姿勢を示している。当面は2月9日の平昌五輪開催までにどこまで対話が進むかを確認したい。また、米韓首脳は電話会談で、冬季五輪中に合同演習をしないことで合意しているが、対話が進まなければ五輪後に軍事行動の可能性が残る。

 ロシアが2016年の米大統領選に関与したとの疑惑や、英国の欧州連合(EU)離脱交渉、ドイツの連立交渉、スペインのカタルーニャ州の独立問題など、欧米の政治リスクが残っていることは金の支援要因だ。

 米紙ワシントン・ポストによると、ロシア介入疑惑を巡る捜査の一環で、トランプ大統領は数週間以内に聴取を受ける可能性があるという。トランプ大統領は6日、ロシア疑惑について「共謀はなかった。犯罪とは無関係だ」と記者団に述べ、モラー氏の捜査チームの聴取に前向きな姿勢を明らかにしている。今年は米国の中間選挙があり、トランプ米大統領の選挙に向けた動きも確認したい。貿易赤字削減のため、他国への圧力が強まると、ドル安要因になる。

 一方、英国のEU離脱交渉は昨年12月に離脱条件となる第1段階の協議が終了し、第2段階である将来の通商関係に進めることで合意した。ただ、メイ英首相は年明けの内閣改造で、合意なき離脱も想定し、「決裂担当相」の新設を検討していることが伝えられた。

●金の独自要因と新たな要因

 金市場で中国やインドなどの実需筋は1,300ドル台の高値では買いを見送っている。1月は中国の旧正月を控えて需要が堅調となる時期だが、今回は年末年始の急伸を受けてプレミアムが下落し、実需筋の買いが見送られていることが示された。金ETF(上場投信)からの投資資金流出も上値を抑える要因であり、実需筋や機関投資家の買い意欲が強まるまでは調整局面になるとみられる。

 新たな要因としては 仮想通貨の動向を確認したい。2017年に仮想通貨は急騰したが、中国が9月に規制を導入すると乱高下した。12月にはシカゴ・オプション取引所(CBOE)やシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の先物市場でビットコインが上場され、投資家の関心が高まった。ゴールドマン・サックス・グループはビットコインについて、金に比べボラティリティーが高く、流動性が低く、金の代わりにはならないとの見方を示している。ただ、米国との関係が悪化したイラン政府は経済制裁を迂回する目的で仮想通貨導入の枠組みを整備し、取引が増加した。決済通貨としてであり、金投資の目的と異なるが、取引が増加すれば何らかの影響が出る可能性もある。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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