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【特集】カドカワ Research Memo(1):2018年2月からのniconico(く)の反響に注目

カドカワ <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

カドカワ<9468>は、大手出版社の(株)KADOKAWAと日本最大級の動画サービス「niconico」を運営する(株)ドワンゴが2014年10月に経営統合して誕生した総合メディア企業である。書籍、電子書籍・雑誌、雑誌・広告、映像の企画・製作・配信、動画サービス、モバイルコンテンツ配信、ゲームソフトウェアの企画・開発・販売、ネット上の学習サービスや専門学校の運営など幅広い事業を展開している。

1. 2018年3月期第2四半期累計業績はほぼ計画通りに進捗
2018年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比1.7%増の101,473百万円、営業利益が同35.3%減の2,858百万円と増収減益決算となった。売上高は、Webサービス事業がポータル、モバイル事業における有料会員数減少により減収となったものの、出版、映像・ゲーム、その他事業の増収でカバーした。営業利益は、映像・ゲーム事業が2ケタ増益となったものの、Webサービス事業における減収や新バージョンniconico(く)への投資費用増、2020年4月にフル稼働を予定している製造・物流工場をはじめとする出版事業における新規事業への投資費用増が減益要因となった。第2四半期累計の会社業績計画は開示していないが、全ての事業セグメントでほぼ会社計画通りに進捗したと見られる。

2. 2018年3月期は先行投資負担により増収減益を見込む
2018年3月期の通期連結業績予想は、売上高が前期比3.1%増の212,000百万円、営業利益が同31.1%減の5,800百万円と期初会社計画を据え置いた。niconico(く)や出版事業における書籍製造・物流拠点稼働に向けた関連投資などの戦略投資費用で1,700百万円、「君の名は。」効果の一巡やWebサービス事業における音楽配信サービスの減収など既存事業で900百万円の減益要因を見込んでいる。ただ、当初10月に予定したniconico(く)のサービス開始時期が2018年2月28日に後ろ倒しになったため、Webサービス事業に関しては業績の下振れが予想される。注目されたniconico(く)のサービス内容については、11月28日に会社側から発表され、ニコニコ動画・ニコニコ生放送に続く3つ目のインターフェースとなる「nicocas(ニコキャス)」のサービスを新たに開始するとしている。「ニコキャス」では動画・生放送・双方向・映像合成を一体化したインターフェースを実現しており、ユーザー生放送をベースに双方向性と協同性を高める豊富な新機能を搭載していることが特徴となっている。生放送配信者と視聴者がよりアクティブにコミュニケーションを取ることで、番組を盛り上げることが可能となる。また、スマートフォンでもniconicoで初めてログイン不要で視聴が可能となるなど、利便性も高めている。同社ではスマートフォンユーザーでも楽しく遊べるコンテンツや機能を今後充実させ、10代のユーザー層を中心に有料会員数を拡大していくほか、都度課金収入等の増加によってWebサービス事業の再成長を目指していく考えだ。有料会員数は2016年9月の256万人をピークに2017年9月末は228万人まで減少したが、当面の目標として256万人までの回復を目指していく。当初のサービス開始時期からは遅れたものの、今後の反響が注目される。

3. メディアミックス戦略と出版事業の新書籍製造・物流システム導入による収益性向上に期待
同社は今後もネットとリアルを融合したメディアミックス戦略を国内外で展開しながら事業を拡大していく方針だ。Webサービス事業ではniconico(く)で復活を目指すほか、出版、映画・ゲーム事業ではメディアミックス戦略によりIPコンテンツの収益性向上と収益最大化に取り組んでいく。また、出版事業においては少量生産・短納期に対応する新たな書籍製造・物流システムのテスト稼働を開始しており、2020年春に完成する所沢の書籍製造・物流拠点において本格稼働を開始する。同システムの導入によって、需要に見合った少量生産を低コストで実現できるほか、返品率低減による収益性の向上が見込まれる。加えて、同システムを国内外の出版事業者向けソリューションサービスとして展開することで事業規模も拡大していく可能性がある。現状は先行投資ステージである業績も、これら施策を推進していくことで中長期的には着実に成長していくものと弊社では予想している。

■Key Points
・知的財産(IP)をマルチメディア展開し、収益最大化を実現するノウハウが強み
・2018年3月期業績は期初計画を据え置くが、2018年2月からの新サービスniconico(く)の反響に注目
・メディアミックス戦略の推進により、中期的な成長拡大を進める

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《TN》

 提供:フィスコ

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