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【特集】<話題の焦点>=食卓の危機、水産物価格の上昇で関心高まる養殖関連株

極洋 <日足> 「株探」多機能チャートより
 東京・築地市場で水産物の価格が上昇している。8月第3週の卸値(中値)は、マグロが1キロ当たり5988円と前年の8月第3週に比べ22.4%高く、サバ(同47.6%上昇)、サンマ(同26.7%上昇)なども値上がりしている。食卓に危機が押し寄せるなか、天然資源に頼らない完全養殖の事業を手掛ける企業にビジネス機会が広がりそうだ。

 水産庁の「平成28年度 水産白書」によると、世界の1人当たりの魚介類消費量は過去半世紀で約2倍に増加。背景には輸送技術の発達による食品流通の国際化のほか、経済が発展した新興国で芋類などの伝統的主食からタンパク質を多く含む肉や魚を中心とした食生活への移行が進んだことが挙げられ、特に中国では1人当たりの魚介類消費量が過去半世紀に比べ約8倍に伸びている。

 一方で、世界の主要な漁場で慢性的な不漁が続いており、これも水産物の価格を押し上げている要因のひとつ。例えば、同庁が8月4日に公表した17年度のサンマ長期漁海況予報では、今年の秋冬に漁場にやってくるサンマの数は、漁序盤(8月~10月上旬)は前年を上回るものの、後半(10月中旬~12月)は前年を下回り、漁は低調に推移する見通し。また、資源の減少が懸念されている太平洋クロマグロについて、同庁は8日に開いた会合で、幼魚(30キロ未満)の漁獲量を約15%減らす新たな漁獲枠を漁業者に伝えた。

 こうしたことから、天然物の相場は乱高下するケースが増えており、価格変動が少ないとされる養殖魚の存在感が増している。企業の取り組みも活発化しており、極洋<1301>とフィード・ワン<2060>の合弁会社である極洋フィードワンマリンは8月16日、11月から完全養殖したクロマグロの出荷を始めると発表。スーパーや外食産業などに売り出すほか、輸出も視野に入れている。

 マルハニチロ<1333>は2010年に民間企業としては初めてクロマグロの完全養殖に成功し、15年6月から商業出荷を開始。ブリやカンパチ、ヒラマサ、マダイなどの養殖魚とあわせ、「よかとと」ブランドで展開している。

 日本水産<1332>は6月、マダコの完全養殖の技術構築に成功したと発表。タコ類は国内で年間7~10万トン流通しているが、全量が天然の漁獲物であり、天然資源に依存しない完全養殖マダコの安定供給体制の確立が期待されている。また、同社は海外でサケやマス、国内でブリやギンザケ、サバ、フグなどを養殖しており、クロマグロについては今下期から販売を開始する予定で、18年度に500トンの生産を計画している。

 このほかでは、OUGホールディングス<8041>のグループ会社がハマチやブリ、マグロの養殖を行っているほか、豊田通商<8015>は10年に近畿大学とクロマグロの中間育成事業で業務提携。ヨンキュウ<9955>は今年6月、ウナギの養殖場を増設することを決めた。

 また、養殖用飼料を販売する林兼産業<2286>や、養殖網を手掛ける日東製網<3524>も関連銘柄として注目。双日<2768>とNTTドコモ<9437>、ISID<4812>の3社は8月8日、マグロ養殖事業の経営効率改善を目的に、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用した実証実験を進めることを明らかにしている。

出所:みんなの株式(minkabu PRESS)

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