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【経済】【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆米ハイテク株調整◆


〇イベント通過で、米株バランス調整の動き〇

9日のNY株はハイテク株が2.7%安となった一方、このところ軟調だった金融株が+1.9%、エネルギー株+2.5%となった。つれて、NYダウは0.42%高、ナスダックは1.80%安と明暗を分けた。ハイテク牽引役の一つ半導体大手エヌビディア株は寄付き後高くなったが急落、一時15%安(終値6.5%安)、空売り専門投資情報会社の下落予想に反応した格好。アップル(3.9%安)を筆頭に、フェイスブック、アルファベット(グーグル)、マイクロソフトなど軒並み3%前後の下落となった。日本株でもエヌビディア株取得で買われていたソフトバンク株(9日の日経平均104円高、ソフトバンク寄与額74.71円)などが要注意となろう。

米ハイテク株が急落するような材料は無かったが、それまでの集中買いによる反動、ポジション調整の色彩が濃い。上記にアマゾンを加えた5銘柄で今年の米株上昇の約5割(48%)を稼いでいたとされ、早めの上期運用益確定の動きが出たものと思われる。集中買いの背景は、トランプ政策への期待後退、米債利回りの低下シナリオ、AI&IT化加速への期待などがあったと見られる。その俎上にあったドル安展開は、英総選挙の保守党敗北による英ポンド安、ECB理事会での緩和姿勢継続によるユーロ軟化、コミ?前長官議会証言で目新しい動きは出なかったことなどで揺り戻しとなった。

指標米10年物国債利回りは2.20%前後で大きな動きは無かったが、売買交錯し、「持ち高調整の動き」と伝えられた。長期金利は先週前半にボトムを付け、利益確定に転換した可能性がある。利上げが確実視される今週のFOMCを前に、ポジション調整が出易いタイミングでもあった。早めの利益確定の動きと見ると、月末に向けては上期評価益向上のため、一旦「株高賛成」に向かうと考えられ(去年はブレグジット波乱で失敗)、下期入りの7月前半に再び売られる様だと流れが大きく変わる可能性がある。

NY取引所の騰落銘柄数は上げ1.68:下げ1、ナスダックは1.03:1と上げ銘柄数が多く、合算出来高は約87億株(20営業日平均67億株)と活況だった。5銘柄の集中物色はニクソン時代の「ニフティ・フィフティ」に擬える向きもあったが、もう少し幅広い「株式の時代」潮流は変わっていないと考えられる。

「株式の時代」は、1)歴史的な金融緩和で膨張したマネーが、債券から株式へシフトする(元に戻る。グレートローテーションと呼ばれる)局面、2)「財政の限界」があり、「企業が牽引する時代」に向かっており、企業=株式の再評価に向かっている、3)ダボス会議が「2050年の先進6か国の年金不足224兆ドル(2京5000兆円)」と試算するなど、各国共通の年金不足は増税(アレルギーが強いことが英国でも示された)や債券利回り上昇では賄えない。経済成長、適度なインフレ、高収益投資環境などが必要で、企業収益拡大の追い風になる、などが大きな背景と考えられる。

今週は13-14日の米FOMCが最大の焦点。15-16日は日銀政策決定会合もあるが、FOMC後に発表される米経済統計(5月鉱工業生産、住宅着工など)に関心が向くと思われる。ドル建て日経平均は180-183ドルの動き、ドル円は110円攻防にあり、180ドル×109円=19620円~183ドル×112円=20496円ゾーンが計算値となる。夏相場(7-9月四半期ラリー)シナリオの模索局面と考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/6/12号)

《CS》

 提供:フィスコ

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