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【特集】ラクオリア創薬 Research Memo(7):テゴプラザン(P-CAB)のグローバル展開の動向に注目

ラクオリア <日足> 「株探」多機能チャートより

■中長期の成長戦略

2. 導出候補プログラムの状況
ラクオリア創薬<4579>は2017年3月時点において、消化器疾患領域で5プログラム、疼痛領域で2プログラム、抗菌薬で1プログラムのパイプラインを抱えている。導出の成否は化合物のポテンシャルは言うまでもないが、医薬品メーカーの事情や医薬品市場でのニーズ(市場性)などにも左右される点に注意が必要だ。

主要な導出候補プログラムの詳細は以下のとおりだ。

(1) カリウムイオン競合型アシッドブロッカー/P-CAB(RQ-4/tegoprazan)
前述のようにテゴプラザンは韓国・台湾・中国及び東南アジア地域について、韓国CJヘルスケアに導出済みであり、同社が導出を目指すのは日本及びCJヘルスケアの担当領域以外のグローバル市場を対象とするものだ。

テゴプラザンについて同社は、日本での第1相臨床試験を2015年8月に終了させている。同時期にCJヘルスケアが韓国で第3相試験に着手していたため、同社はその推移を見守りつつ、グローバル展開の可能性を探ってきた。前述のようにCJヘルスケアの第3相試験が2017年前半に終了の見通しとなり、それが需要ドライバーとなって導出の動きが活発化してくることを弊社では期待している。

また、テゴプラザンは2016年5月25日の特許査定により、食間伝播性収縮運動(IMC)のPhase III収縮の発生によって改善される、胃食道逆流疾患(GERD)、機能性消化不良、腹部膨満感、不快感及び便秘などの消化管運動異常が関与する疾患または症状を改善する消化管機能調整剤、または消化管運動賦活化剤に関する権利が認められた。この特許は日本においてはすべてのP-CABに対して網をかけられるものだ。これをわかりやすく言うと、先行するタケキャブRであっても上記のIMCのP-III収縮発生による効能発現をうたって販売した場合には、同社の特許を侵害したことになるということだ。武田側も特許侵害は回避する行動をとると考えられるため、今回の特許査定で直ちに同社が財産的なメリットを獲得するわけではないが、同社が目指すテゴプラザンの国内での導出には追い風になると期待される。

適応症たる胃食道逆流症用医薬品ではPPIが現在の主流であり、その市場規模は全世界で2兆円とも言われている。P-CABはPPIの置き換えを狙う次世代新薬と期待されている。P-CABでは、前述のように武田がタケキャブR(一般名はボノプラザン)を発売済みでトップを走っており、同社のテゴプラザンはそれに続くポジションとなっている。国内市場の現状は、PPIの武田のタケプロンR、第一三共のネキシウムR、エーザイ<4523>のパリエットRが大きな売上高を記録している。しかし、タケキャブRも発売後順調な成長を見せており、2016年度は第3四半期までの累計売上高が247億円と発表されている。今後の一段の伸びが期待される状況だ。

(2) 5-HT4部分作動薬(RQ-10)
RQ-10は胃不全麻痺、機能性胃腸症、慢性便秘などを適応症とする化合物である。セロトニン受容体の1つ(5-HT4)を標的とする薬剤で、同じ薬理作用を持つ薬剤にモサプリド(大日本住友製薬<4506>がガスモチンRの商標で販売済み)がある。

韓国・台湾・中国・インド及び東アジア市場を対象に、韓国のCJヘルスケアに導出されているが、CJヘルスケアでの開発は一旦ストップしている状況だ。同社は、国内及びCJヘルスケアの契約地域以外のグローバル市場を対象に導出を目指している状況だ。

同社は2013年5月に英国で第1相臨床試験を終了しており、RQ-10 の非常に強い薬効と高い安全性が示された。その後、米国ヴァージニア・コモンウエルス大学(VCU)においてパーキンソン病患者を対象とした医師主導治験が行われている。この治験に対しては、2016年4月に、マイケル・J・フォックス財団パーキンソン病研究機関から3年間で総額86万8,000ドルの研究助成金が授与されることが決定し、2016年8月にパーキンソン病患者への投薬が開始されるなど、治験は順調に進んでいるもようだ。

全体を俯瞰すると、このVCUでの医師主導治験がRQ-10の開発ステージが最も進んでいる状況にあるとみられる。同社はVCUでの治験結果を突破口として導出に向けた働きかけを強めていく方針だ。前述のように、英国での第1相試験が終了しているため、欧米市場を対象とするケースであればこの第1相試験の結果を援用してすぐに第2相試験に入れる点は1つのポジティブポイントになると考えられる。

将来の市場規模を考える上ではガスモチンRの売上高が参考になるだろう。同薬は後発医薬品の登場で近年は売上高が減少基調にあるが、ピークの2011年度には212億円の売上実績を有している。

(3) 5-HT2B拮抗薬(RQ-00310941)
5-HT2Bは消化管ホルモンの1つであるセロトニン(5-HT)受容体の一種であり、本化合物(RQ-941)は5-HT2Bの活動を抑制することで薬効を実現するタイプのものである。内臓痛改善や消化管運動の正常化の効能が期待される。群馬大学との共同研究等により、排便異常を抑制しつつも正常な腸には過分な影響を与えないことが示されたことから、下痢型過敏性腸症候群(IBS)への適応を狙っている。同社は、前臨床試験(in vivo薬効薬理試験、薬物動態試験、毒性試験、安全性薬理試験)の評価の結果、臨床ステージに進めることが可能と判断し、2015年7月に第1相臨床試験を英国で開始して、現在も継続中である。

英国での第1相試験は、健康成人における安全性、忍容性、薬物動態などの評価後、少数例の患者を組み入れる試験デザインとなっているのが大きな特徴だ。今年に入り、被治験者(患者)を集める動きが加速してきたため、2017年後半に第1相試験終了のめどが立ってきた。RQ-941は、物質特許について5大特許庁(日本、米国、欧州、中国、韓国)で特許査定を受けている。RQ-941には、潰瘍性大腸炎やクローン病といった自己免疫疾患における腹部症状改善薬としての対象拡大の可能性が見えてきていることも、ポジティブ要因と考えている。現在継続中の第1相臨床試験の終了時が、導出が期待される1つのタイミングと考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《NB》

 提供:フィスコ

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