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【市況】【フィスコ・コラム】「ルペン大統領」でもユーロ買い?


2017年最大のヤマ場となるフランス大統領選まであと1カ月を切りました。欧州連合(EU)離脱を掲げる極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の躍進に警戒感が広がっています。仮にルペン氏が大統領に選出されたら、先読み困難な通貨ユーロはどのような値動きをするでしょうか。


年末年始には1ユーロ=1.03ドル台まで弱含み、2002年11月以来の1ドル割れは時間の問題と思われましたが、足元は1.08ドル台に持ち直しています。アメリカのトランプ政権の政策運営のもたつきと、連邦準備制度理事会(FRB)による3月利上げ後の調整が背景にあります。欧州中銀(ECB)が従来の緩和方針を転換する気配が広がっていることも、ユーロ買い要因です。ただ、4月23日に行われる大統領の第1回投票に向け、世論調査でルペン氏の支持が強まればユーロは売り込まれ1ドルに接近する場面が予想されます。


第1回投票は全12候補による争いになります。過半数を獲得できる候補者はいない公算で、上位2候補による第2回投票、つまり決戦投票が5月7日に実施されます。直近の世論調査では国民戦線のルペン党首と中道系オン・マルシュ(EM)のマクロン前経済相が並び、社会党のアモン前教育相、共和党のフィヨン元首相が追う情勢です。ただ、ルペン氏とマクロン氏による決戦投票なら中道や左派で票固めが見込めるマクロン氏が優位とみられます。2002年の大統領選ではルペン氏の父親であるジャン=マリー・ルペン氏は、同じ構図となってジャック・シラク氏に敗れました。

2016年12月4日に行われたオーストリア大統領選やつい先日のオランダ総選挙を振り返ると、欧州内では極右候補は支持を集めつつあるとはいえ、選挙で勝利するには至っていないようです。ユーロ圏経済が昨年後半から改善に向かい始めたことも、有権者の判断に影響を与えている可能性があります。歴史的にみても、景気の良し悪しは民族主義に訴える極右勢力の台頭に大いに関係しています。


ところで、国民戦線は「極右政党」と位置づけられますが、ややバイアスがかかった見方かもしれません。マリー・ルペン氏が1972年に同党を起ち上げた時はそうした色合いが濃かったのですが、現在のマリーヌ氏が2011年に党首就任後、移民抑制や難民受け入れ拒否は受け継いだものの、その他の政策は現実路線に転換。労働者や高齢者など社会的な弱者に分類される層を取り込んでいるようです。注目したいのは、移民制限といっても、フランス文化を尊重、保護する移民は拒んでおらず、マリー氏党首時代の排外主義を封印したことです。


この点で、トランプ米大統領がアメリカ経済から見捨てられた白人労働者の救済を掲げ支持を広げたような流れになれば、ルペン氏選出の可能性はあるでしょう。仮に、ルペン氏が大統領となっても、直ちにEUを離脱するわけではありません。政権発足後、6カ月以内にEU離脱の是非を問う国民投票を行う方針です。思惑通りにEU離脱に向けたプロセスが進んでも、正式に離脱するまでは3年程度はかかる見通しです。国民投票では「残留」という波乱もないわけではないでしょう。

ユーロの値動きについては、選挙まで売りが続く分、マクロン氏選出ならリリーフラリ?の急反発が見込まれます。一方、ルペン氏となれば、リスクオフまたはポジション調整のユーロ買戻しに振れ、その後もEU離脱の是非を問うフランス国民投票の実施が決まるまでは上昇基調が続くと思われます。

(吉池 威)

《MT》

 提供:フィスコ

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