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【特集】シンワアート Research Memo(6):新規事業の進捗とアジア戦略における新たな展開に注目

シンワアート <日足> 「株探」多機能チャートより

■成長戦略とその進捗

シンワアートオークション<2437>は2014年5月期より新中期経営計画(5ヶ年計画)をスタートした。成長戦略の柱は、オークション事業の拡大と新規事業の育成による安定収益源の確保、アジア戦略の3つである。日本の美術品オークション市場の再生に貢献するとともに、「アートから始まる富裕層向け総合サービスカンパニー」へと事業ドメインを拡充することにより、安定収益源の確保と財務基盤の強化に取り組む計画である。最終年度である2018年5月期には売上高14,500百万円と大きな飛躍を目指している。

(1) オークション事業の拡大
同社は、長期間にわたるデフレ経済の下で停滞してきたオークション市場の回復、ひいては本来あるべき市場規模に再評価されることを目標に、「日本近代美術再生プロジェクト」と銘打ち、資本力を駆使した大きなプラットフォームを構築することでオークション事業の拡大に取り組む方針である。具体的には、同社がマーケットメイク機能※を果たすことで市場に厚みを持たせ、取引の活性化と市場の拡大に結び付ける戦略である。加えて、自ら取引の当事者となることは、富裕層とのネットワークを構築する上でもプラスの効果が働くと考えている。同社は、日本の美術品オークション市場は最低でも1,000億円~2,000億円の規模が適正な水準と考えており、その市場規模を支えるためには、最低10,000百万円以上の純資産を確保し、安心できるプラットフォームの運用を実現しなければならないとしている。

※同社が当事者として取引に参加することで市場の流動性や効率性を高める手法のこと

足元では、回復に向けた道筋が見えてこない状況にあるが、同社としては、外部環境の好転を待ちながら、財務基盤の強化や富裕層ネットワークの拡大、人材面の強化など、プラットフォーム構想の実現に向けて「日本近代美術再生プロジェクト」を着実に進めていく方針としている。

(2) 新規事業の育成
オークション事業で培ってきた富裕層マーケティングが活かせる分野へと事業領域を拡大することで安定収益源の確保と財務基盤の強化を図るところに狙いがある。エネルギー関連事業では、富裕層向け節税商品開発販売として取り組んできた太陽光発電施設の販売事業が順調に拡大し、主力商品に育ってきた。今後も更なる拡大(中古品市場の育成を含む)を目指すとともに、他のエネルギー分野においても新たな展開を視野に入れているようだ。また、医療ネットワークを生かした医療機関支援事業も、診療報酬ファクタリングを一旦凍結としたが、アンチエイジングや医療ツーリズム(インバウンド展開)が新たな収益ドライバーとして徐々に立ち上がってきた。医療コーディネーター業務や医療通訳養成講座を開始するなど、稼働後の円滑な運用を行うための体制整備にも取り組んでおり、あくまでも慎重なスタンスで推進する方針としている。もっとも、今後はアジアへの進出(アウトバウンド展開)も模索しており、実現すれば展開スピードが一気に加速する可能性もある。

一方、新たに開始した保険代理店事業は、新たな顧客層の開拓を進めている。現在は経営資源の制約等により足踏み状態にあるが、ある程度の実績が見えてくれば将来に向けた事業拡大のイメージがつかめるものと考えられる。

(3) アジア戦略
アジア戦略は、ASIAN ART AUCTION ALLIANCE との連携強化により、アジア圏でのプレゼンスを高めることである。特に、アジアの富裕層を日本のオークション市場に呼び込むことや、オークション以外にも医療ツーリズム等による事業拡大を目論む。

2016年10月には中国の海航資本集団との連携(対日投資及び文化事業支援など)に向けた戦略提携を締結するなど、将来を見据えた活動にも大きな進展があった。また、ミャンマー事業でも新たな構想を描いているようであり、今後の動向に注意する必要がある。

弊社では、オークション事業におけるプラットフォーム構想の実現には時間を要するものと捉えているものの、富裕層マーケティングにおける強みを生かした独自の新規事業が順調に立ち上がってきており、持続的な成長の実現は可能であると判断している。今後も「アートから始まる富裕層向け総合サービスカンパニー」として富裕層ニーズを的確に捉えた同社ならではの事業展開に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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