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【市況】S&P500 月例レポート ― 「トランプ月間」の一言に尽きる“スーパーラリー”(3) ―


●S&Pは最高値を9回更新、アップルが上昇を主導

 2月のS&P500指数は上昇が持続し、終値での史上最高値を9度にわたって更新するなど、非常に好調なパフォーマンスとなりました。株価の上昇は幅広い銘柄に及びましたが、市場全体にまでは広がっていません。市場が楽観ムードにある背景には、新政権が公共投資を重視する一方、規制には反対姿勢を取るとの見方が大きな材料となっていますが、今のところ、トランプ大統領率いる政権幹部はこの路線に沿った発言を続けており、議会による当初の反応もこの筋書きに沿っているように見えます。向こう数週間は政策の具体的な内容の発表が求められることになり、まず手始めに、3月26日に発表が予定されている2018年度予算案の概要で、医療保険制度がどのような扱いを受けるかが注目されます。

 4月28日には2017年度暫定予算が期限を迎えるため、予算が議会で承認されない場合や修正が行われない場合、現在の政府支出のペースを見る限り、政府機関が16日間閉鎖された2013年10月と同様の事態に陥る可能性があります。

 S&P500指数は2月に相次いで史上最高値を更新して前月末から3.72%の大幅な上昇となり(配当込みのトータルリターンはプラス3.97%)、年初来では5.57%の上昇(同プラス5.94%)、2016年11月8日の大統領選以降では10.47%の上昇(同プラス11.22%)、また、過去1年間では22.33%の上昇(同プラス24.98%)となりました。証券口座の支払い明細書を見て大喜びする投資家もいることでしょう。

 本稿執筆時点で、28日(取引終了後)のトランプ大統領による議会演説は無難なものになった模様で、3月の市場は引き続き上昇で幕を開ける可能性が高くなっています。ただし議員たちが述べているように、「私たちはツイッターですぐにつながる世界にいます」(でも、一体何とつながっているというのでしょうか)。

 セクター別でみると、2月は11セクターのうち9セクターで月間騰落率がプラスとなり、1月の8セクターから増加しました(2016年12月は9セクター)。各セクターのリターンのばらつきは縮小しました。

 パフォーマンスが最低となったのは2.73%下落したエネルギーセクターで(1月は3.64%下落)、年初来でも6.27%下落と騰落率は最下位でした。同セクターは2016年に23.65%上昇しましたが、依然として2014年末の水準を11.40%下回っています。電気通信サービスセクターも0.39%下落し、下落率は1月の3.50%からは縮小したものの、業界内での競争の持続で利益が圧迫されていることを背景に、年初来では依然として3.87%下落しています。

 パフォーマンスが最も好調だったのはヘルスケアセクターで、新政権による修正によってオバマケア(医療保険制度)は同セクターにとって対処可能なものとなるほか、実施に時間を要するとの見方から2月は6.21%上昇し、年初来でも8.49%上昇しました。情報技術セクターは、月初から15営業日にわたる連騰を経て2月は4.87%上昇し、年初来では9.42%上昇と騰落率トップとなっています。上昇を主導したのは、過去最高値を更新したApple(AAPL、2月は12.89%高、年初来では18.29%高)でした。

 金融セクターも、「かなり早期」の段階での利上げと規制緩和(こちらは当面なさそうですが)が予想される中、1月のほぼ横ばい(0.12%上昇)の後、2月は再び上昇基調を回復し、5.01%上昇しました。

 株価が上昇した銘柄は広範に及びました。値上がりした銘柄数が値下がりした銘柄数を大幅に上回り、両者の差は前月から拡大しました。値上がりは382銘柄(平均上昇率は5.40%)と、1月の327銘柄(2016年12月は302銘柄)から増加した一方、値下がりは123銘柄(平均下落率は4.83%)と、1月の176銘柄(2016年12月は203銘柄)から減少しました。10%以上の上昇は1月の39銘柄から38銘柄(平均上昇率は13.62%)に減少しましたが、10%以上の下落は1月の16銘柄から17銘柄(平均下落率は14.92%)に増加しました。1銘柄が25%以上上昇した一方(1月は4銘柄)、25%以上下落した銘柄はありませんでした(1月は2銘柄)。

 2月の出来高は前月比0.5%増だった1月から3.6%増加しましたが、過去1年間の平均月間出来高を4%下回りました(ただし、5年平均を3%上回る)。

 月中の高値と安値の差で見た変動率は昨年1月の2.49%、12月の4.12%から4.40%に上昇しました(過去1年間の平均は4.27%)。1962年以降の年間変動率のチャートに2月と年初来の数値を加えると、今年初めの変動率は55年間で過去最低となったことが分かります。今後、政府の政策発表に伴い市場のボラティリティは高まることが予想されますが、今のところは非常に低い水準にとどまっています。

 利回り、金利、コモディティは引き続き活発な動きを見せました。FOMCが利上げは「かなり早期」に行われるとの見方を示しつつも、3月13~14日の会合(この時期には政策の法制化と予算をめぐる動きが本格化する見通し)での利上げに向けた姿勢を後退させ、追加利上げは5月2~3日あるいは6月13~14日の会合になる可能性が高まったことを受けて、金利は低下しました。しかし、2月28日のFRB高官2人の発言を受けて、今や市場では3月利上げが再び有力視されるようになっています。

 米国10年国債の利回りは1月の2.46%(2016年末は2.45%)から2.39%に低下して月を終えました。30年国債の利回りも2.98%と、1月の3.07%(同3.07%)から低下しました。

 外国為替市場の取引は活発で、ユーロは1月末の1ユーロ=1.0796ドルから1.0586ドルに下落して2月を終えました(同1.0520ドル)。英ポンドは1月末の1ポンド=1.2576ドルから2月末は1.2433ドルに下落しました(同1.2345ドル)。円はドルに対して1月末の1ドル=112.68円から下落して112.85円で2月を終えました(同117.00円)。人民元は1ドルに対して1月末の6.8817元から6.8692元に上昇しました(同6.9448元)。

 金価格は1月末の1,212.40ドルから1,253.40ドルに上昇しました(同1,152.00ドル)。原油価格は1バレル50ドル台前半のレンジで推移し、1月末の1バレル52.80ドルから54.15ドルに上昇して2月を終えました(同53.89ドル)。米国のガソリン価格は、1月末の1ガロン2.326ドルから2月末は2.314ドルに下落しました(同2.309ドル)。VIX恐怖指数は低水準で推移し、1月末の11.99から2月末は12.94に上昇しました(同14.04)。

※「『トランプ月間』の一言に尽きる“スーパーラリー” (4)」に続く。

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