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【特集】神戸物産 Research Memo(4):17/10期も引き続き増収増益見込み、業務スーパー事業がけん引役に

神戸物産 <日足> 「株探」多機能チャートより

■今後の見通し

1. 2017年10月期の業績見通し
神戸物産<3038>の2017年10月期の連結業績は、売上高が前期比5.5%増の252,400百万円、営業利益が同1.4%増の12,000百万円、経常利益が同32.9%増の11,600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同55.7%増の7,100百万円と増収増益基調が続く見通し。引き続き主力の業務スーパー事業がけん引する。為替前提レートは110円/ドルと前期並みの水準を見込んでおり、営業外での為替差損益は見込んでいない。現在、113円/ドル台で推移しているため、営業利益段階までは仕入れコスト高となり収益圧迫要因となるが、営業外では為替差益等が見込めることになる。セグメント別の見通しは以下のとおり。

(1)業務スーパー事業
主力の業務スーパー事業では、店舗数を前期末比30店舗増の777店舗まで拡大する計画となっている。新規出店に関しては首都圏エリアを中心に増やしていく方針だ。また、既存店売上高は前期比で2%増、全店ベースでは同4?5%の増収を見込んでいる。

前期はPB商品や輸入商品の取扱いを増やしたことが収益拡大要因となったが、NB商品と比較して単価は総じて低いため、直近では客単価が前年を割り込んできていることが課題となっている。このため、今期は自社商品の開発強化と同時に、客単価アップの見込めるNB商品の品ぞろえも強化していく方針となっている。また、集客効果の高いテレビCMや各店舗でのイベントキャンペーンなどに広告宣伝費を積極投下していくほか、FC加盟店への支援策として卸価格の調整や販管費の削減に寄与する什器の開発などを進めていく方針となっている。特に、首都圏では今後、小型店舗が多くなると予想されるため、小型店舗でも効率的に販売できる什器の開発を進めていく。

また、生産子会社では老朽化した工場の移転・改装などを進めながら、更なる生産性向上に取り組んでいく。その他、損失が続いていた(株)神戸物産エコグリーン北海道では主力生産品であるジャガイモの生産方法を一から見直したことで収穫量がアップしており、新規顧客(食品メーカー)の開拓も進んでいる。

月次売上動向を見ると、全店ベースで11月が前年同月比12.1%増、12月が3.2%増となっており、会社計画をやや上回るペースで推移している。単独ベースの業績で見れば12月は売上高、営業利益ともに過去最高を更新するなど順調な滑り出しとなっている。今後の為替動向や消費動向にもよるが、今期も業務スーパー事業は拡大基調が続くものと予想される。

なお、海外市場への取り組みとして2016年4月にシンガポールに「業務スーパー」を初出店したほか、米国でもJPN Mart Inc.が運営する日系のスーパーマーケット「Seiwa Market」(カリフォルニア州2店舗、テキサス州1店舗)内に約500アイテムのオリジナル商品の販売を開始している。また、2016年秋より香港のスーパーマーケット向けにも間接的に卸販売を開始している。日本の食材に特化したチェーン店で、2017年10月期は海外で最も伸びが期待されている。

(2)神戸クック事業
神戸クック事業は、売上高が前期比横ばい、営業利益は黒字化を見込んでいる。不採算店舗の整理を進めていくことや、黒字化した「神戸クックワールドビュッフェ」については今期よりFC募集を再開し店舗数を拡大していく考えだ。総菜の「Green's K」については、目標に近いところまで店舗収益力がついてきており、来期以降にFC展開を再開していくことを目指している。

(3)クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業は、ジー・コミュニケーショングループの見通しをそのまま業績計画に織り込んでいる。主要子会社であるジー・テイストの2017年3月期の業績計画が売上高、営業利益ともに減収減益計画となっていることから、今期の計画には若干の減収減益で織り込んでいるものと見られる。

(4)エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業は、メガソーラー発電事業において事業計画の見直しを進めている。電力会社との接続ルールの変更や買取価格の引下げなど市場環境が当初の想定から変化しており、同社が投資基準とする回収期間(12年)を超える案件も出てきているためだ。現在、計画中のプロジェクトから取捨選択し、最終的には最大で50MW程度の水準になることが予想される。残りのプロジェクトについては売却することになり、若干の売却益が発生する可能性がある。

2017年10月期においては、大阪と徳島で建設中のプロジェクトが稼働する見込みで、2017年10月時点での発電能力は前々期並みの15.6MW程度まで回復する見込みとなっている。稼働時期にもよるが当期は発電能力が前期の期初段階と比べて低下していることから、若干の減収減益になると見られる。

(5)その他
「ホットラグーン大分」に関しては、現在、月間3,000人規模の来場者数で推移している。2016年春の熊本地震の影響で井戸水の水量が減少しているため、現在、インフラ設備の改修を同時に進めている段階にある。2017年春には水量も適切になる見込みで、本格的に広告宣伝活動を開始する予定となっている。中国など海外からの旅行客も取り込む計画で、目標来場者数は年間で10万人となる。

一方、北海道の函館で進めている観光果樹園については開園に向けた準備を進めている段階で、まだ開園時期は確定していない。同果樹園果物は地熱を活用した温水エコハウスで栽培されており、青パパイヤなど国内では珍しい作物の栽培を計画している。なお観光事業に関しては、地域活性化、雇用創出などの社会貢献を目的とした事業であり、業績面での寄与は織り込んでいない。

2. 中長期的な経営戦略
同社は中長期戦略として、主力事業となる業務スーパーの国内店舗数を1,000店舗まで拡大していくことを掲げている。2016年10月期末時点で関西エリア228店舗に対して首都圏エリアでは191店舗となっていることから、首都圏エリアを中心に今後も店舗数の拡大は可能と見られる。

また、同社は日本最大規模の六次産業化を目指し、2008年より国内自社工場や自社農場のM&Aを積極的に実施し、また消費者にとって魅力的な自社商品をベストプライスで提供してきたことが、飛躍的な収益性成長の原動力となってきたが、今後はより一層、開発力に磨きをかけると同時に、衛生管理体制の充実や品質管理体制の強化なども推進し、「安全・安心」の面でも消費者から評価される企業を目指していく考えだ。

業務スーパーの海外展開に関しては、まだしばらく時間がかかりそうだが、当面は国内における業務スーパーの店舗数拡大によって安定成長が続くものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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