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【特集】サムティ Research Memo(5):16/11期は大幅増収増益で着地、最終益は2期連続で過去最高を更新

サムティ <日足> 「株探」多機能チャートより

 

■業績動向

2. 2016年11月期決算の概要
サムティ<3244>の2016年11月期の業績は、売上高が前期比36.3%増の52,409百万円、営業利益が同44.7%増の8,586百万円、経常利益が同75.3%増の6,788百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.9%増の4,628百万円と大幅な増収増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は2期連続で過去最高益を更新した。ただ、期初予想に対しては、売上高、営業(経常)利益が下回る結果となっている。不動産事業における販売予定物件に期ずれがあったほか、不動産賃貸事業でも収益不動産の取得が全体的に後ろ倒しとなったことが想定を下回った要因である。もっとも親会社株主に帰属する当期純利益では期初予想を上回っており、期ずれ等の影響を除けば、好調な不動産市況を追い風として順調に拡大したと評価してもよいだろう。

売上高は、2015年11月期における特殊要因※が剥落した「不動産賃貸事業」が減収となったものの、「不動産事業」が開発流動化(「S-RESIDENCE」シリーズの販売)を中心に大きく拡大した。また、「その他の事業」も2015年11月期に取得したホテル2物件(長崎、宇都宮)が期初から寄与したことで順調に伸びている。

※「水戸サウスタワー」(現在は売却済)のキーテナントであったヤマダ電機<9831>からの賃貸契約解除の申し入れに伴い、2015年11月期決算において違約金収入約17億円を売上計上したもの。

損益面でも、前期における特殊要因の剥落がマイナス要因となったものの、好調な不動産市況等による影響や利益率の高い開発流動化の伸長などにより営業利益率は16.4%(前期は15.4%)に改善し、増収効果と合わせて大幅な営業増益を実現した。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が期初予想を上回ったのは、予定していなかった固定資産売却益を特別利益に計上したことが要因である。

一方、仕入れの状況については、開発用地20物件(取得額は約115億円、売上規模282億円相当)、棚卸資産(販売用の収益不動産)13物件(取得額は約95億円)を取得した。また、固定資産(自社保有の収益不動産)についても22物件(取得額は約185億円)に投資している。なお、開発用地の中には、2017年12月に竣工予定の福岡の大型ホテル物件(客室数287室)の等ホテル用地も数物件含まれている。

財政状態は、仕掛及び販売用不動産の積み上げや自社保有の収益不動産(固定資産)の増加等により総資産が141,170百万円(前期末比16.0%増)に拡大した。それに伴って、有利子負債も長期借入金を中心に95,568百万円(同20.1%増)に膨らんだが、自己資本も内部留保の積み増しや新株予約権付き社債の転換等により32,551百万円(同15.7%増)に増加したことから、自己資本比率は23.1%と横ばいで推移した。

各事業の業績は以下のとおりである。

(1) 不動産事業
売上高が前期比52.6%増の43,783百万円、セグメント利益が同117.8%増の8,071百万円と順調に拡大した。特に、開発流動化が「S-RESIDENCE」シリーズ7棟(そのうち、SRR向けが4棟)の販売により増収に寄与した(前期は実績なし)。また、再生流動化についても一般事業会社やSRR向けに18物件(そのうち、SRR向けが8物件)を売却したが、比較的大型物件が多かったことから大きく伸長した(前期実績は23物件)。売却物件の中には、「水戸サウスタワー」や「センターホテル東京」などが含まれている。投資分譲についても15棟628戸の販売が好調であったことから順調に伸びている(前期実績は10棟551戸)。一方、アセットマネジメントについては、SRRの立ち上げに伴うプラス要因があった前期に比べて減収となったものの、ほぼ想定内である。なお、不動産事業が期初予想を下回ったのは、販売予定であった「S-RESIDENCE」シリーズ1棟が期ずれとなったことや、再生流動化における売却予定物件の一部を入れ替えたことが要因であり、実態としては業績の下振れを意味するものではないと言える。

また、損益面では、好調な不動産市況等の影響や利益率の高い開発流動化の伸びなどによりセグメント利益率は大きく改善しており、増収効果と合わせて大幅な増益を実現した。

(2) 不動産賃貸事業
売上高が前期比19.3%減の7,288百万円、セグメント利益が同42.3%減の2,550百万円と減収減益となった。2015年11月期の「水戸サウスタワー」における違約金収入(約17億円)の剥落やキーテナント入れ替えに伴う不稼働期間の発生等がマイナス要因となったが、その分は想定内である。稼働率は総じて高い水準を維持しており、特殊要因を除けばおおむね好調に推移していると言える。ただ、期初予想を下回ったのは、収益不動産の取得が全体的に後ろ倒しとなったことにより賃料収入が下振れしたことが要因である。最終的には、固定資産として新たに22物件(取得額185億円)を取得する一方、13物件を売却した(特別利益約235百万円を計上)。売却については予定外であったが、好条件の引き合いがあったことにより売却に踏み切ったものとみられる。

また、損益面でも、特殊要因の剥落等によりセグメント利益率が35.0%(前期は49.0%)に低下したが、実質的な利益率の高さに変化はない。

なお、注目されている大型商業施設の「ピエリ守山」については、オールドネイビー(ファッションブランド)の日本撤退に伴う退店の影響(約420坪)が気になるものの、その半分のスペースについては既に後継テナントが決定している。また、2017年2月10日にはニトリ<9843>が新たに出店したほか、付帯施設の追加等によるバリューアップに向けて順調に進展していると言える。現在、販売用不動産(棚卸資産)として計上していることから、いずれ売却も視野に入れているものと考えられるが、時期については様々な要素を勘案しながら検討するものとみている(同社の中長期経営計画の中にも織り込まれていないようだ)。

(3) その他の事業
売上高が前期比80.6%増の1,853百万円、セグメント利益が同38.9%減の123百万円と増収ながら減益となった。前期に取得したホテル2物件(エスペリアホテル長崎、ホテルサンシャイン宇都宮)が期初から寄与したことで大幅な増収となった。ただ、損益面では、建設・リフォーム事業における工事原価の上昇が利益を圧迫する要因となった。また、運営委託費の発生(新たなホテル2物件については運営を外部委託)も利益の伸びを抑える形となったようだ。

3. 開発計画(パイプライン)の状況
「S-RESIDENCE」シリーズの開発状況は、2016年竣工分が3物件(268戸)、2017年竣工予定分が10物件(1,071戸)、2018年竣工予定分が4物件(449戸)と合計17物件(1,788戸)が進行している。2018年分については、まだ仕込みの段階であるが、販売予定価格による売上高では合計約260億円(前期実績の約2.8倍)が積み上がっており、今期から来期にかけて売上高に貢献していくものと考えられる。首都圏5物件(東京2、神奈川2、千葉1)及び関西圏10物件(大阪10)のほか、愛知(名古屋)1物件、北海道(札幌)1物件となっている。そのうち、北海道(札幌)については高級ファミリー賃貸マンションを予定している。

一方、投資分譲の開発案件の状況は、2016年竣工分が7棟(593戸)、2017年竣工予定分が10棟(456戸)、2018年竣工予定分が12棟(637戸)と合計29棟(1,686戸)が進行している。こちらも2018年分については、まだ仕込みの段階とみられるが、販売予定価格による売上高では約317億円(前期実績の約3.1倍)が積み上がっている。東京20棟、大坂8棟、京都1棟となっている。

したがって、都心を中心に用地仕入れの環境は厳しさを増しているが、SRRを中心としたビジネスモデルの優位性を生かすことで、用地仕入れにおいても戦略的に取り組むことができる同社にはアドバンテージが発揮されていると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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