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【経済】グローバリズムと自由貿易の後退とその行方


先週、英国のEUからの完全離脱(ハードブレグジット)と、米国のトランプ新大統領の就任という2つの大きなイベントがあった。
 2つの出来事を通してみると、時代の大きな逆流を感じざるを得ない。英国の欧州連合(EU)完全離脱は移民政策を優先に考え、EUという単一市場からの離脱やむなしという結論に傾いたものであり、その点においては積極的に望んだ結果ではないとはいえ自由貿易の後退といえる。一方、トランプ新大統領の演説で目立ったのは、極端なアメリカ第一主義と保護主義の主張だった。その姿勢は徹底的に米国の国益を優先し、自由貿易など認めないというもので、貿易をあたかも相手国との利益の奪い合いと捉えるような言辞であった。
 両国の動きやEU域内の反EUの高まりから、これまで世界経済の発展とともに進んできたグローバリズムと自由貿易が明らかに後退する流れとなっている。
 グローバリズムや自由貿易が行き過ぎて、その反動が出てきたということができようが、さらにこのまま保護主義の流れが強まり、貿易戦争やブロック経済化のような事態にならないか心配する向きもある。
 ただ、最も保護主義的な中国が自由貿易の推進を主張するなど、「反動に対する反動」も出てきつつある。日本は自由貿易推進派に立ち、米国以外のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)推進国と協力して米国に翻意させる構えだ。
 米国自身もグローバリズムによる恩恵を大きく受けており、保護主義政策の実行により経済が逆に停滞すれば国内の動きも再逆転する可能性もある。トランプ新大統領の支持率が異例に低いことからも、保護主義政策がうまく行かなかった場合の非難は大きなものになるだろう。
 ともあれ、保護主義で世界貿易にあまりにもブレーキがかかればまた自由貿易の機運が高まるのは間違いない。
 世界経済や自由貿易の発展は進んで行くにせよ、二歩進んで一歩下がるといった具合に、後退や揺り戻しがありつつ進んで行くのだろう。 
 ただ、今年のEUにおける各国の選挙は、それが一歩下がるというレベルなのか、完全に逆向きに歩を進めだすのかの分水嶺になる可能性があり、目が離せない。
《YU》

 提供:フィスコ

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