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【特集】アンジェス Research Memo(5):Vicalに出資・事業提携でDNAワクチン分野を第3の柱へ

アンジェス <日足> 「株探」多機能チャートより

■主要パイプラインの開発状況

(3)その他の開発パイプライン

a)高血圧DNAワクチン
DNA治療ワクチンの1つとして、高血圧DNAワクチンの開発を進めている。大阪大学の森下教授の研究チームにより基本技術が開発されたものとなる。昇圧作用を有する生理活性物質アンジオテンシンIIに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンIIの作用を減弱させることで、長期間安定した降圧作用を発揮するものとなる。

高血圧治療薬の市場規模は国内だけでも8,000億円以上、世界では数兆円規模となっており、この一部を代替することを目指している。現在主力の治療薬としてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(経口薬))があるが、毎日服用する必要があるほか薬価も高いため、発展途上国では医療経済上の問題から使用は限定的となっている。一方、アンジェス MG<4563>が開発するDNAワクチンは1回の治療で長期間の効果が期待され、開発に成功すれば発展途上国も含めて普及拡大が期待される。同社では2017年の中頃に第1相試験をオーストラリアで開始すべく、準備を進めている。

なお、DNAワクチンに関しては出資先である米Vicalと2016年12月に戦略的事業提携契約を締結している。DNAワクチン分野を、遺伝子治療薬及び核酸医薬に次ぐ第3の柱として育成していくことが目的となっている。VicalはDNAワクチンに関して長年の経験と広範な知識・ノウハウを持ち、製造設備も保有している。同社では今後、VicalとDNAワクチン分野での研究開発、製造、薬事などを対象に幅広く事業協力を進めていく予定で、共同研究開発等も視野に入れている。

なお、高血圧DNAワクチンについては、犬慢性心不全を対象とした動物用医薬品としての開発も行っている(大日本住友製薬<4506>の子会社、DSファーマアニマルヘルス(株)と2015年10月に共同開発契約締結を発表)。

b) CIN治療ワクチン(子宮頸部前がん病変治療ワクチン)
韓国のバイオリーダースから導入したCIN治療ワクチンは、子宮頸がん前がん状態の組織を退縮させ、子宮頸がんへの移行、円錐切除手術を回避する効果が期待される乳酸菌L.caseiをベースとした経口剤となる。子宮頸がん予防ワクチンとの違いは、予防ワクチンが子宮頸がんの原因ウィルスであるヒトパピローマウィルス(HPV)未感染者を投与対象者としているのに対して、CIN治療ワクチンは既に子宮頸がん前がん病変であるCIN2/3ステージ(中程度~高程度異形成、上皮内がん)の患者を投与対象とした治療薬ということにある。CIN2/3ステージの全世界の推定年間罹患者数は約1,000万人とも言われており、潜在市場規模は大きい。

同社は2016年12月、森下仁丹にCIN治療ワクチンの独占的開発・製造・販売権を再許諾する契約を締結しており、今後は森下仁丹が開発を行う。森下仁丹に再許諾した背景としては、森下仁丹でも乳酸菌L.caseiの研究を行っていることや、製剤化に必要なシームレスカプセル技術を持っていることなどが挙げられる。特に、シームレスカプセルは腸内で溶解するため、高い薬効が期待される。

なお、現在は東京大学医学部附属病院にて、医師主導型の探索的臨床研究を実施している。これまでの発表結果(2014年9月リリース)では、CIN3を対象とした試験において、投与した17症例において有害事象の発生がなく、適用量を服用した被験者の70%で前がん病変の明らかな退縮(投与開始後9週目)が確認されている。同附属病院ではさらにCIN2を対象として40症例の試験を実施中であり、2017年春にも終了する見込みとなっている(厚生労働省からの補助金を活用)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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