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【特集】藤商事 Research Memo(4):17/3期は2期ぶりの増収増益に転じる見通し

藤商事 <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

(2) 2017年3月期の見通し

藤商事<6257>の2017年3月期の業績は、売上高が前期比31.0%増の50,000百万円、営業利益が同145.7%増の5,000百万円、経常利益が同143.6%増の5,000百万円、当期純利益が同166.7%増の3,300百万円と2期ぶりの増収増益に転じる見通し。

下期のパチンコ機の販売計画は新機種で4タイトルの投入を予定しており、販売台数では6.7万台と上期よりも0.4万台増加する計画となっている。また、投入時期は大半が第4四半期になる見通しだ。第3四半期は、パチンコホール側で、導入されている機種のうち、検定と性能が異なる可能性のある機種について年末までに撤去しなければならないという特殊事業があり、撤去する機種(他社機種)の入れ替え作業が中心となるためだ。なお、下期の投入予定機種には、ホラー系や時代劇系は含まれておらず、萌え系など新領域での投入が予定されている。

一方、パチスロ機は下期に2タイトルを投入する予定で、合計で2.0万台の販売を計画しており、12月には「パチスロ ロリポップチェーンソー」を投入する。同タイトルは2012年に世界で発売され人気を博したホラーアクションゲームをパチスロ機として開発したものとなり、同社が得意とするホラー系の開発ノウハウを生かした機種となっており、今後の販売動向が注目される。

通期のパチンコ・パチスロ機合計の販売台数は前期比3.9万台増加の15万台を計画し、売上高で31.0%増収を見込んでいる。増収効果に加えて部材費のコストダウンなど原価低減効果も引き続き寄与する見通しで、売上総利益は同42.4%増の26,400百万円、売上総利益率は同4.2ポイント上昇の52.8%となる見通しだ。なお、共通部材やリユース品の採用等については、現段階においても実施しているが、更なる原価低減効果を得るために共通部材やリユース品目の拡大を計画している。フルにその効果が寄与するのは2018年3月期からとなる。

販管費については、研究開発費や販売手数料の増加などにより、前期比29.0%増の21,300百万円を計画しているが、第2四半期までの進捗率が42.0%にとどまっており、保守的な印象が強い。特に、従業員数について今期は開発人員を中心に前期末比41名増の499名を予定しているが、9月末時点で前期末比横ばいの461名にとどまっており、人件費については当初計画を下回る可能性が高い。また、販売手数料についても上期が791百万円と計画を下回っており、通期でも下回る可能性が高くなっている。上期の販売手数料率(対売上高)は3.8%で、下期も同水準の手数料率が続いたと仮定すれば、通期の販売手数料は計画比で10億円程度下回る計算となる。

以上から、通期の業績については、年末までのパチンコ遊技機器の回収・撤去による影響は懸念されるものの、会社計画は達成できるものと見ている。

(3)中期戦略

同社は中期戦略として、パチンコ機については年間10?15万台の販売を安定的に維持する体制を構築し、パチスロ機でのシェア拡大に取り組んでいく方針だ。パチンコ機に関しては、「ホラー系」「時代劇系」に続く新たなジャンルの確立に取り組んでいる段階で、若年層の顧客獲得を目指した機種開発を推進していく。特に、今後は射幸性が抑えられるなかで、商品力の高い機種の開発に当たっては、より娯楽性の高い機種のニーズが高まるものと予想され、新スペックの採用などに積極的に取り組み他社との差別化を図ったオリジナル性の高い機種の開発を推進していく考えだ。

一方、パチスロ機に関しては開発体制の強化により、年間の発売機種数を現在の2機種から3~4機種に拡大していく。生産体制についても現在建設中の新工場の稼働により、生産能力を大幅に拡大する計画となっている。2017年5月に既存工場(愛知県一宮市)敷地内にパチスロ機専用の新工場が完成する予定で、生産能力は現在の400台/日から1,500台/日と275%増に拡大することになる。稼働開始時期は2017年夏頃を予定している。新工場にかかる設備投資額は総額で3,624百万円(前期に932百万円支払い済み)となっている。パチスロ機でシェアを拡大できれば、業績も一段の成長が期待できることになる。

その他、新たな取り組みとしてスマートフォン向けのソーシャルゲームの市場に参入している。第1弾として2016年3月に美少女系の本格対戦RPG「マギアコネクト」、7月に麻雀バトルゲーム「アドヴェントガール」の配信を開始した。まだ試行錯誤の段階ではあるものの、新たな顧客層の開拓も含めて同事業を今後も推進していく考えだ。業績に与える影響は軽微だが、今後も複数のタイトルをリリースしていく予定となっている。方向性としてはパチンコ・パチスロ機とのシナジーを高めるため、実機のゲームアプリをシリーズ化し、集客支援ツールとしたい考えだ。スマホゲームで体験した後に、パチンコホールで実際に楽しんでもらう流れを創り出せれば理想的と言える。パチンコ・パチスロ機メーカーでゲームコンテンツを開発しているのは、現状ではセガサミーホールディングス<6460>やフィールズ<2767>を筆頭にその企業数は少ないため、今後の差別化要因となる可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

 提供:フィスコ

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