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【特集】マーケットE Research Memo(8):既存のリユース事業とのシナジー効果に注目

マーケットE <日足> 「株探」多機能チャートより

■新規事業:MVNO事業

(1)事業モデルの概要

マーケットエンタープライズ<3135>は2016年8月に、仮想移動体通信(MVNO)事業への参入を発表した。これは同社にとっての新規事業であり、既存事業であるリユース事業とは離れたところに位置する事業に思えるが、必ずしもそうではなく、両者のシナジー効果を狙える、興味深い取り組みだと評価している。

事業内容とスキームは以下のようになっている。同社は光通信と合弁でMVNO事業を行う新会社「MEモバイル」を2016年8月に設立した。出資比率は同社65%、光通信35%で、MEモバイルは同社の連結子会社となる。

MVNOとはMobile Virtual Network Operatorの略で、他の移動体通信事業者の回線設備を利用して移動体通信サービスを行う事業者のことを言う。いわゆる格安SIMのサービス提供者がこれに当たる。一方、MVNOの対立概念にMNO(Mobile Network Operator)がある。これは移動体通信事業者で、いわゆる3大キャリアがこれに当たる。MVNOはMNOの通信回線設備を使用してサービスを提供することになる。また、合弁パートナーの光通信はMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)だ。MVNEとは、MNOとMVNOの間に立って、MVNOの事業の立ち上げ・運営をサポートする存在のことだ。同社が光通信と合弁で事業を開始した意図はまさにここにあると言える。光通信と合弁したことで、同社が単独でMVNO事業に進出するのと比べて、成功への道のりは大きく短縮されたと弊社では評価している。

MEモバイルのビジネスモデルの最大の特徴は、同社がリユース事業において買い取った中古のスマートフォンとSIMカードをセットにして販売することで、端末価格と通信料金のトータルコストで業界最安クラスを目指す点にある。MNOはNTTドコモ<9437>で、ドコモで契約された端末もしくはSIMフリー端末の約200種類が利用可能だ(実際には、同社の在庫の有無に依存する)。また、申し込みから端末受け渡しまでインターネットで完結する手軽さも特徴と言える。

(2)収益貢献の考え方

MEモバイルのサービス開始は2016年9月の予定だ。MVNO事業にかかる目標値としては、「今後3年間で10回線の獲得を目指す」という点だけが掲げられている。現在の日本における格安SIMの回線数が約540万回線(2016年3月末現在)で、2年後には1,000万回線を超える見通しという状況に照らせば、3年間で10万回線という目標は穏当なものに感じられる。

MEモバイルの収益貢献を予想するには、まだ材料が不足している状況であるが、最大のカギは中古端末の仕入れにかかっているというのが弊社の基本的な考えだ。中古端末がある程度集まるという前提に立てば、比較的早期に事業が軌道に乗ってくると考えている。中古端末の買取・販売だけでも一定の利益が獲得できるためだ。現実の状況は、リユース端末の市場は拡大を続けており、需給バランスがタイトな状況にある。買取価格が上昇しすぎると同社が目指すトータルコストで業界最安水準という目標が達成できなくなる恐れもある。反対に買取価格を低く設定すれば端末を仕入れられなくなる可能性がある。

MEモバイル事業のもう1つの意義としては、同社の事業構造がリユース事業とMVNO事業の2本柱体制となることがある。収益モデルとして、リユース事業はフロー型であるのに対してMVNO事業は典型的なストック型であり、相互補完による収益安定性の増大が期待できる。MEモバイルの収益が期待どおりに伸長すれば、2020年度6月期の中期業績目標の達成はもとより、その後の持続的成長に大きく貢献してくると期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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