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【経済】【フィスコ・コラム】見極めまだまだフィリピンペソ


フィリピン中銀が9月22日に政策金利の翌日物借入金利を3%に据え置くことを決めた後、フィリピンペソは下落し、2009年9月以来、7年ぶりの安値圏に値を下げました。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)による今後の利上げペースに不透明感が増しており、ドル買いは強まらないとの見方からペソは下げ渋っています。今年5月に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領の極端な政策が今後の政権運営、ひいては通貨の値動きにも影響するかもしれません。


元ダバオ市長のドゥテルテ氏が5月9日に行われた任期満了に伴う大統領選挙で当選を果たしましたが、選挙戦では「(麻薬密売人ら)犯罪者は殺害する」など過激な発言で物議をかもしました。大統領に就任後、同氏は「公約」通り麻薬撲滅政策を進め、7月までに2000人以上が殺害されています。こうした「超法規的殺害」を国連や米国が問題視。この問題にオバマ大統領が異議を唱えるなら騒ぎを起こすとドゥテルテ氏が発言していたことで、今月ラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で両国の首脳会談は中止となり、ドゥテルテ氏の注目度はさらに高まりました。


実際に麻薬撲滅は成果を見せ始めているもようで、世界180カ国を対象とした腐敗指数ランキングが95位のフィリピンで規律が高まれば、投資やビジネスの活性化につながる可能性もあります。フィリピンは目先も6%台の高成長が見込まれており、リーマン・ショック後ほぼ一貫して右肩上がりのフィリピンの株価が今後も騰勢を強めれば、さらにペソを押し上げるでしょう。国内的には社会に広く蔓延した麻薬問題の根絶に乗り出したことが知識層からも評価され、同氏の支持率は90%にのぼると報じられています。


国連などが超法規的殺害に対する非難を強めていますが、フィリピン政府は「内政干渉」としてはねつけており、この問題について今後も議論が激化しそうです。言うまでもなく、たとえ改革のスピードは緩やかになっても、別の手段による解決を目指す方が同国の国際的な信用力につながることは間違いないでしょう。エッジの効きすぎた政策は特効薬となっても、効果は長続きしないからです。


一方、もともとドゥテルテ氏は親中派として知られていたドゥテルテ氏の対中政策も注目されます。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が今年7月、南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を退けフィリピンの申し立てを受け入れたため、中国は仲裁判断の受け入れを断固拒否し両国間は急速に冷え込みました。ただ、ドゥテルテ氏はその後、中国との対立は無益として関係改善を探る動きに転じています。フィリピンは長年にわたる米国との協力関係を転換しようとしており、中国やロシアとの接近はアジア地域の安全保障にも影響が見込まれます。


10月には日本訪問が予定されているようですが、反中・親米の日本との関係は今後も維持されるのか、あるいはどのように変化していくのか、首脳会談が注目されます。

(吉池 威)

《MT》

 提供:フィスコ

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