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【特集】GMOペパボ Research Memo(7):「minne」の購入率・購入単価引上げを狙った施策の効果に注目

GMOペパボ <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

(3)2016年12月期業績見通しと「minne」の下期の取り組み

GMOペパボ<3633>の2016年12月期については、売上高6,850百万円(前期比20.2%増)、営業利益0百万円(前期は営業損失621百万円)と2ケタ増収、かつ営業利益は収益改善を見込む会社計画を据え置いた。

2ケタ増収は、「ロリポップ!」「カラーミーショップ」などの既存事業の継続的な成長と「minne」の流通額の増大を予想することによる。一方、営業利益ゼロと予想するのは、2015年12月期に続きハンドメイド市場の拡大、「minne」を圧倒的No.1にするために、プロモーション強化や流通拡大のための積極投資を継続するためだ。なお、同社では、ホスティング事業やEC支援事業が堅調に推移していることから、「minne」の投資をコントロールしながら営業利益0百万円を達成するとしている。

○下期の取り組み
a)主力事業の取り組み
下期の取り組みについてみると、ホスティング事業及びEC支援事業では、上期と同様に有料契約件数の増加と顧客単価アップを図る。

b)「minne」の取り組み
2016年12月期における「minne」は、「ターゲットの拡大」と「お買い物体験の最大化」をテーマに、主に流通額(年間100億円を目標)の拡大を目指している。第2四半期までの累計で40億円の流通額実績に対して、年間100億円を目指す期初計画に変わりはない。同社では、第3四半期以降、流通額を構成する主要なKPIのうち、プロモーションの展開により上昇傾向にあるDAUを除き、サービス開始当初に比べ低下傾向にある購入率と横ばい傾向となっている購入単価をそれぞれ上昇させることにより、下期60億円の達成を目指す考えだ。

まず、購入率の上昇に関しては、「minne」訪問後の作品検索から作品購入までをストレスフリーで体験できるように機能を改善・拡充することにより対応する。具体的には、操作性を向上するために、UI/UXの改修・改善を継続することに加えて、キャリア決済の導入※など決済方法を拡大することにより、カゴ落ちをしていたユーザーを出来る限り拾う体制を整えることにより購入率を向上させる。

※作品購入時の支払方法として8月3日から「auかんたん決済」を追加した。「auかんたん決済」とは、auのスマートフォンやPC等で購入したデジタルコンテンツ・ショッピング等の代金を、月々の通信料金と合算して支払うことのできるサービス。引き続き、他キャリアでの展開を目指す。

一方、購入単価の上昇に関しては、クオリティと価格のバランスが取れている作品が目につきやすくなる仕組み作りに取り組む。具体的には、「ハンドメイド=安い」というイメージを払拭するために、これまで行ってきたクオリティと購入体験の満足度が高い作品を中心に特集やピックアップによる紹介を継続することにより、適切な価格が生まれるような仕組み作りを継続する。加えて、6月末にリリースしたオウンドメディア「minne mag.(ミンネ マグ)」を通じ、ハンドメイド作品の作家、作品自体の魅力を深堀し伝えることにより、「minne」やハンドメイドの認知を一段と拡げる。さらに、これまで蓄積したビッグデータを活用した作品のレコメンドや検索機能について、精度を上げることで、「minne」は欲しいものが適切な価格で購入できるプラットフォームであるという認知度を高め、購入単価の改善を目指す。

c)その他の取り組み
その他の取り組みとして2016年7月1日付けで鹿児島県奄美市と地方創生に向けた連携協定を締結したほか、同日付けで新技術の創造と実践に取り組む研究開発組織「ペパボ研究所」を発足させた。

奄美市との連携協定は、奄美市の「フリーランスが最も働きやすい島計画」に基づき、インターネットを活用した新たな働き方を提案するとともに、その環境づくりや人材育成を支援するというもの。同社では、同社のサービスを使い地方からの情報発信を増やすという奄美市での取り組みの成功事例を起爆材として、他の地方での展開を行うことにより地方創生に対する活動を加速させ、同社サービスの利用拡大を図ることを狙っている。

一方、ペパボ研究所は同社が提供するWebサービスの機能や運営における課題や可能性について、AIやIoT、機械学習、ディープラーニング(深層学習)などを活用することにより、事業を差別化できる技術の創造と実践に取り組むことを目的にしている。

d)2016年12月期見通し
弊社では、2016年12月期業績については、1)主力事業である「ロリポップ!」や「カラーミーショップ」などのストック型サービスの拡大によりホスティング事業、EC支援事業が順調に推移している、2)TVコマーシャルなしで月間7億円程度の流通額を確保できる水準まで認知が拡がっていると考えられることなどを考慮すると、営業利益ゼロの会社計画の達成は視野に入ったと考える。

なお、「minne」の年間流通額100億円の目標達成に関しては、足元の「minne」の月間流通額が月間7億円程度の規模まで成長していることを考慮すると、その達成は視野に入ったと見ている。今後は、第3四半期(7-9月)以降、購入率と購入単価を向上させる取り組みの効果が同社の目論見通りに出るかが、流通額100億円達成後の「日本のものづくりを集めた大きな経済圏を作る」という中長期目標の実現可否を占う重要な手掛かりになると考え、引き続き第3四半期以降の「minne」の流通額の動向を注目する。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )

《HN》

 提供:フィスコ

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