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【経済】一尾仁司の「虎視眈々」:◆「投機筋の腰砕け」◆

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

●ボックス圏相場継続、投機筋の腰砕けの印象●


日経平均は16000~17500円のボックス相場(16000~19000円ゾーンの前半部分)が長引いている。来週26日のジャクソンホール会合でのイエレンFRB議長講演まで大きな手掛かりが無く(その先の9月の日米金融政策が大きな焦点)、谷間と言えば言えるが、懸念された夏場の波乱が出ていないことも背景と思われる。ドル建て日経平均は16日に高値168.34ドルまで上昇したが、ドル円100円攻防の円高が抑えている格好でもある(仮に105円なら17500円突破の攻防に移行していた)。

この間、日本株に二つの大きな要因があった。一つは15日発表の4-6GDP。熊本地震の影響でマイナス成長の懸念も強かったが、小幅プラス圏のゼロ成長となった。マイナス金利による住宅押し上げと執行前倒しの公共投資が支えた。もう一つは4-6月期企業業績。16日の日経報道(対象1571社)では、前年同期比17%経常減益、通期経常利益予想は1.7%増益から0.5%減に下方修正。うち円高ダメージの大きい製造業は4-6月期21.3%経常減益(通期3.8%減益予想)。「4割減益」の目線があったことを考えると健闘していると言える。ただし、為替前提の甘さ、海外情勢の不透明感から懸念視は残る。

ファンダメンタルズから大きな下振れ要素が出なかった面があるが、需給面では日銀のETF買いへの期待が支えたと言われる。もっとも、日銀は8/4に707億円/日の買いを開始して以降、8/10に買い入れただけで、実際は動いていない(人材・成長投資ETFは連日12億円ずつ購入)。3度目のドル円100円割れ攻勢でも動いていないので、後講釈的な側面が強い。

投機筋はドル円100円割れとともに売り崩しを仕掛けてくる懸念はあったが、今のところ腰砕けの印象がある。主に米統計をベースにした攻防で、弱い小売統計などで円買い仕掛け、16日の強めの米7月鉱工業生産指数やダドリーNY連銀総裁の「9月利上げの可能性はある」発言で揺り戻しの展開となった。8/9時点のIMM通貨先物建玉は4万8831枚の円ロング(前週比7131枚増)で、円高目線は解消されていないが、攻め切れていない印象だ。

12日にブルームバーグは、JPモルガン・アセットが日本株ファンドを清算すると報じた。運用不振(11年6月の運用開始以来でマイナス16.3%)から8/4時点での運用額は約17億円まで減少していたと言う。ヘッジファンド・リサーチによると、日本市場で運用するヘッジファンドの上半期収益率はマイナス6.1%、3月末時点運用額は15年6月末比14%減の262億ドル。資金縮小傾向が続いている。おそらく、7年5ヵ月ぶりの低水準(4734億円)となった裁定買い残も、外資系資金の縮小を示していると考えられる。空売り銘柄の買戻し相場にも投影されている可能性がある。

この傾向は原油相場にも表れている。8月初め、40ドル/バレル割れ場面があったが、17日は5営業日続伸、46.79ドル/バレルに戻った。大洪水で全米4位のエクソンモービルのルイジアナ州製油所が稼働停止に追い込まれるなどの要素もあるが、強弱二分(売り建玉、買い建玉双方が過去最高)とされるなか、売り方の腰砕けの印象。

中国やロシアなど、突発的リスクの懸念はなお強いが、為替相場の安定を睨みつつ、ボックス上限を窺う展開が想定される。


以上



出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/8/18号)

《TM》

 提供:フィスコ

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