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【特集】テクノスJPN Research Memo(4):ERPの技術力、ユーザー企業のビッグデータ経営に対するサポート力が強み

テクノスJ <日足> 「株探」多機能チャートより

■強みと事業等のリスク

(1)同社の強み

テクノスジャパン<3666>の強みとして、1)ERPに関して、業界内でいち早く着目し、数多くの導入を行ってきた幅広い経験とノウハウに基づいた質の高いコンサル能力と技術力を有し、豊富かつ優秀な人材とその育成体制を確立していること、2)国内トップクラスのデータサイエンティスト集団を保有し、グループでユーザー企業の「ビッグデータ経営」をコンサルから対応できる体制を既に構築していることを挙げることができる。

1) ERPにおけるコンサル力、技術力、プロジェクトマネジメント力と豊富かつ優秀な人材
同社はERPが普及していない90年代半ばにERPの将来性を予見し、業界内でいち早くSAPを始めとするERPソリューション事業の事業基盤の整備、拡充に注力。以後、電気・電子機器、精密、機械、化学等の製造業分野を中心に100社以上に及ぶERPパッケージ導入実績を有する。これらの経験、実績に基づいた質の高いコンサル能力、技術力、プロジェクトマネジメント力を有している。

プロジェクト管理に関しては、全社横断的に計画、実行、検証、振返りができるようプロジェクト管理室を設置し、受注前よりリスク面に関して厳重なチェック体制を敷いていることに加えて、日常的にグループ間・担当者間におけるプロジェクト内の情報共有を徹底しているほか、独自の開発標準基準SWAT (Standard Working At Tecnos)の活用及び標準ツールの活用を通じてプロジェクト管理の精度を高める取り組みも行う。加えて、プロジェクトの導入スピード・品質向上のため、創業時より培ってきた経験、技術をもとに業種・業務別にテンプレート「Factシリーズ」を開発、提供していることも生産性を高める原動力として働いている。

人材に関しては、グローバルビジネスの展開を視野にユーザー企業のグローバル進出を強力に支援することを重点課題とし、クオリティの高いサービスを提供できるコンサルタント要員や、グローバルビジネスを展開できる即戦力となる語学堪能な社員の育成に注力。少人数精鋭で多くのビジネスを成功させるために、マルチタレント社員を育成し、さらにチームワーク力を高めることを目指している。この結果、同社のベンダー各社の認定資格保有者数は極めて高い水準を維持。主力のSAPに関しては、SAPシステムに関する知識やノウハウを評価し、一定の基準を満たした技術者として認める認定コンサルタント数は457名(2016年2月末現在。複数の認定を取得しているコンサルタントは取得数で人数を算出)を数え、国内パートナー企業185社中第9位となっている。さらに、足元の語学堪能なコンサルタント要員数は40名体制(2016年4月1日現在)となっており、海外売上高は全体の4分の1を占める規模となっている。

こうしたERPのトップランナーとして蓄積された導入経験、ノウハウは、SAPを始めとするベンダーや、ユーザー企業から高い評価※を受けており、結果として同社の収益性の高さにつながっている。2016年3月期の売上高営業利益率は12.4%と情報処理サービス企業平均の3.48%を大きく上回る水準にある。

※SAPジャパンがSAPビジネスへの貢献度や顧客満足度を評価し、そのパートナー企業に対して贈るアワードをこれまでに9度受賞しているほか、東洋ビジネスエンジニアリングがMCFrameビジネスへの貢献が目覚しいパートナー企業に贈る「MCFrame Award」を5度受賞している。

2)数多くのデータサイエンティストを抱え、ビッグデータ経営を総合的にサポートするグループ体制を構築
ビッグデータの利活用に当たっては、導入されている基幹業務システム(ERP)とビッグデータの連動が重要で、企業の優勝劣敗を左右する決め手になると考えられている。こうした状況下で、同社グループは、TDSEが総勢50名のデータサイエンティストを抱えていることが強みである。加えて、同社が保有するERPのコンサル能力と技術力を、子会社TDSEが保有するビッグデータの解析力と連動させることにより、ユーザー企業のビッグデータ経営における課題解決に向けた総合的なサポート体制を構築している数少ない企業グループを形成していることが大きな差別化要因として働いていると考えられる。特に、足元ではデータサイエンティストの不足が国内企業全般に及んでいることを考慮すると、同社グループの先行優位性は際立っていると言える。

(2)事業等のリスク

事業等のリスクは、特定ERP製品、特にSAPへの依存度が高いこと、製造業ユーザーのウエイトが高いことを挙げることができる。

特定ERP製品、SAPへの依存度は2016年3月期で80%強になっており、SAP製品の市場競争力が低下した場合やSAPジャパンが日本における営業政策を変更する場合などには業績に深刻なマイナス影響が出る可能性がある。一方、エンドユーザ業種別の売上ウエイトを見ると、製造業が全体の6割を占める。このため、国内外の景気悪化や為替動向によりユーザーである製造業企業の業績が悪化する局面では、ユーザー企業のIT投資予算の削減の動きにより、同社の業績に悪影響が出る可能性があることに留意する必要がある。

加えて、人材の確保・育成は重要な経営課題であると同時に大きな事業リスクでもある。ERP事業に加えて、ビッグデータ事業においても、他社との差別化の観点から優秀な人材の確保が極めて重要。同社では、人材の確保と、採用後の教育に注力しており、複数の技術や多言語等に対応できグローバルに活躍できる人材へとマルチタレント化を推進する教育体制を整えている。しかし、人材を適時確保できない場合や人材が大量に社外へ流出しまう場合、あるいは人材の育成が同社グループの計画どおりに進捗しない場合等には、業績にマイナス影響が出る可能性がある。特に、国内トップクラスのデータサイエンティスト集団となっているTDSEにとっては、人材流出はTDSEの先行優位性が揺らぐことになり、同社グループのビッグデータ戦略に大きな影響が出る可能性がある。

このほかのリスクとして、開発工数の増加及び不具合発生、ユーザー企業の個人情報流出などが挙げられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )

《HN》

 提供:フィスコ

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