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【特集】ダイコク電 Research Memo(8):次世代ホールコンピュータの開発が最終段階に入る

ダイコク電 <日足> 「株探」多機能チャートより

■成長戦略

(1)これまでの中期経営計画とその進捗

ダイコク電機<6430>は、2015年3月期を初年度とする3ヶ年の中期経営計画を推進してきた。次世代ホールコンピュータが完成するまでの重要な投資期間として位置付けており、業界全体の発展と更なる成長を実現するための事業改革に取り組んでいる。戦略の柱は以下の3つに集約でき、それぞれが同社の中長期的な成長をけん引するものと考えられる。

a)次世代ホールコンピュータの開発
同社が2014 年3 月期から開発に着手した次世代ホールコンピュータは、クラウドサーバーを駆使し、ビッグデータ対応による高度な分析サービスを実現するものである。特に、今までのホールコンピュータにはなかった人間の行動分析までを意識しており、ホール業界の発展に大きく貢献するとともに、他の分野にも応用できる画期的なものを予定している。2015 年3 月期 からの3 年間で約100 億円規模(周辺機器を含む)の研究開発費を投入してきたが、いよいよ来期(2018年3月期)以降の販売開始に向けて最終段階に入ってきたようだ。同社は他社の追随を許さない圧倒的な優位性を確立することで中長期的な市場シェアを50%にまで引き上げる計画である。

2014年9月の春日井工場の拡張(隣接地の購入)も情報システム事業のシェア拡大を視野に入れたものであり、2015年10月中旬から稼働を開始した。生産機能の強化に加えて、生産拠点の統合及び品質保証部門、開発試験環境の整備等を順次進めていく方針である。

b)ストック型収益モデルへの転換
同社は、情報システム事業の収益モデルを、情報機器販売後の利用料で回収するストック型へと転換を進めている。これによって、ホールコンピュータや周辺機器を安く提供することができることから、価格競争力を高める(導入のハードルを引き下げる)ことにより市場シェアの拡大を図ることが容易となるとともに、販売後の利用料は継続的な安定収益源として期待できる。前述したとおり、2016年3月期におけるMGサービスの売上高は前期比13.4%増の3,832百万円と順調に拡大している。

c)自社開発パチスロ遊技機の拡大
今後の成長ドライバーの1つとして自社開発パチスロ遊技機にも注力している。2014年3月期にリリースした「まじかるすいーとプリズム・ナナ」は、オリジナルキャラクターの採用による独自の世界観などが評価されて約4,000 台の販売実績を残した。また、2015年3月期のヒット作品となった「ささみさん@がんばらないすろっと」もストーリー性を重視した新感覚のパチスロエンターテインメントの形を実現しており、アニメに特化したハイクオリティのブランドイメージを定着させている。2016年3月期についても「パチスロ百花繚乱サムライガールズ」が5,100台の販売実績をあげるとともに、息の長い稼働貢献を残したことで話題となった。データを活用した成功パターンが着実に形になってきたと言える。

今後も、「アニメ世代」に注目されている「アニスロ」を中心に展開していく方針であり、出玉の数だけで楽しむのではなく、パチスロ遊技機そのものにストーリー性のあるコンテンツを組み込み、目標とする「アミューズメント化」の実現を目指していく。

(2)新たな中期経営計画「Next50 第一章」について

同社は、今期(2017年3月期)を初年度とする新たな中期経営計画「Next50 第一章」を公表した。今後、市場環境は緩やかに回復に向かうとの想定のもと、市場変化への対応(よりゲーム性を重視したファンの獲得)やパチンコホール経営の変革(データ分析に基づく戦略的な経営判断)に貢献するための事業基盤の強化に取り組む。特に、来期(2018年3月期)以降の販売開始を目指している次世代ホールコンピュータによるシェア拡大のほか、データ分析力や企画開発力を活かした新たな価値の創出により、成長力及び収益力の向上を実現する方針である。最終年度である2020年3月期の目標として、売上高570億円(4年間の平均成長率4.9%)、営業利益40億円(営業利益率7%)、ROE7%以上を掲げるとともに、投資計画も研究開発費100億円(4年間の累計)、設備投資40億円(同)、減価償却費50億円(同)と高い水準を維持する計画であり、さらなる成長に向けた先行費用をこなしながら利益率の向上を目指すシナリオとなっている。

各事業別の目標及び事業戦略は以下のとおりである。

a)情報システム事業
次世代ホールコンピュータによる新たな価値の創出と市場シェアの向上に加えて、SNSや新サービスの投入によりパチンコファンの拡大を図ることにより、2020年3月期売上高380億円、セグメント利益50億円を目指している。また、サービス売上を73億円に伸ばすことにより、ストック型収益モデルへの転換を加速する。

特に、次世代ホールコンピュータの導入により、地域特性に見合った台の入れ替えなど、データ活用に基づいたホール経営への変革を促すことで、ホールの業績回復に向けた貢献と囲い込みを推進する。

また、ファンサービスについては、様々なコンテンツを組み込んだ総合パチンコ及びパチスロ情報提供アプリ(SNS)「パチロボ」や加盟ホールの出玉や新台の打ち方等をPC・携帯・スマホから見ることができる情報サイト「サイトセブン」などを展開しているが、2020年3月期までにコンテンツの充実や新サービスのリリースにより会員数100万人(現在は42万人程度)の獲得を目指し、ファンとホールとの結び付きをさらに強める方針である。

b)制御システム事業
新たな遊びの価値を創出し、パチンコ業界の活性化に貢献するとともに、企画開発力を活かした市場変化への対応により、2020年3月期売上高190億円、セグメント利益10億円を目指している。特に、パチンコ事業については、情報量(DK-SIS)やデータ分析力を活用した企画提案力の強化による差別化戦略に加えて、開発工程の専門性や技術力の強化により開発期間の短縮を図ることで、コスト構造改革やスピード対応の推進など、事業基盤の強化に取り組む。また、パチスロ事業については、これまでの「アニスロ」で積み上げてきた成功パターンの精度をより一層高めることで、ホールの稼働貢献や新規ファン開拓につなげる構えである。

弊社でも、パチンコ・パチスロ業界の先行きについて、自主規制の影響などの短期的な要因からの底打ちと緩やかな回復に向かうシナリオを想定しているものの、構造的な外部環境の変化による不透明感も依然大きいものとみている。ただ、次世代ホールコンピュータの開発に100億円規模の投資を行うことができる同社に大きなアドバンテージがあるのは明らかであり、たとえ市場が縮小傾向をたどっても、市場シェアを高めることにより持続的成長を実現することは十分に可能であろう。また、ホール業界も資本力のあるところを中心に勝ち残り、2極化が更に進む可能性が高く、業界再編の動きは同社にとってプラスに働くものとみている。

一方、自社開発パチスロ遊技台については、期ずれの影響により今期からが本格展開となっており、今後の実績を見守る必要がある。既存メーカーと比べて1 機種に十分な開発費用や時間をかけることができることや、データ分析力を活かした魅力あるゲーム性の追求という点において、同社の優位性が発揮される余地は十分にあり、新たな成長ドライバーとして同社の業績を大きくけん引するものとみている。ただ、既存市場のシェアを奪うというよりも、同社ならではの独自の価値創造により、アニメファンなどの新しいターゲット層を取り込むことで、市場全体を活性化させるところにこそ成功のカギがあるとみており、その成果にも注目していきたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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