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2016年07月24日11時12分

【市況】【フィスコ・コラム】それでもトルコ、買いますか?


7月15日にトルコで発生した軍によるクーデター未遂事件は、同国が投資先として適格かどうかを考え直すきっかけになったのではないでしょうか。10年以上にわたる経済成長で国内総生産(GDP)の規模は今やスイスよりも高い世界18位となりましたが、この事件により世界各国から流入していたマネーは他国に逃避するでしょう。今後エルドアン政権が盤石になるほど、その傾向は強まるのではないでしょうか。


中東地域に位置するトルコは、サウジアラビアやイランなど近隣諸国と良好な外交関係を構築して貿易を拡大してきました。それによって地域を緊張緩和に導いたエルドアン大統領の政治手腕は評価されるでしょう。最近ではイスラエルやロシアとの関係も回復に向かいつつあります。仮にクーデターが成功していたら、「火薬庫」の中東で均衡が崩れ、収拾のつかない事態に陥ったと思われます。15日はこの事件が市場に伝わり、トルコリラだけでなく主要通貨もリスク回避の動きをみせたのは、こうした背景があるからです。


国内的には、エルドアン大統領は2003年3月、トルコ首相に就任すると公約通りに改革を進め、経済成長を促進させました。2007年の総選挙では、自身が所属する公正発展党(AKP)は支持を広げました。2014年には初の大統領選に臨み、当選。翌2015年6月の総選挙でAKPは過半数割れとなりましたが、愛国的な思想を煽る政治手法が奏功し、同年11月の再選挙では過半数を確保しました。


しかし、近年は権力基盤を強化するため、政権に批判的なジャーナリストを投獄し、ツイッターなどSNSから国民を遠ざけるなど、自ら進めた民主化に逆行する政策を推進していることで人気は凋落傾向にあります。こうした強権的な政治スタンスに対する強い不満がクーデターに発展したと推測されています。これにより、トルコの政情不安は増幅され、長期的な投資先としての懸念が強まったことは確かです。治安への懸念から海外からの観光客は激減が予想されます。米格付け会社ムーディーズは18日、トルコ国債の格付けに関し投資適格等級から投機的水準への引き下げの可能性に言及しています。


一方、力でクーデターを抑え込んだ強い指導者として、エルドアン大統領への支持は高まりましたが、トルコにとってはかえって仇になるでしょう。政権側が中銀に対して公然と利下げを要求し、中銀の独立性の観点からトルコ国債が格下げされた経緯もあり、今後こうしたケースが常態化されていくのではないかと危惧します。実際、未遂事件から4日後の19日、トルコ中銀は翌日物貸出金利(上限金利)を9.00%から8.75%まで0.25%引き下げました。上限金利の引き下げは5カ月連続です。ゼイベクチ経済相は「クーデター未遂事件を考慮すれば、今回は据え置きでも理解できる」としていたのに、エルドアン政権の意向を汲んだ中銀が利下げに踏み切ったとの見方は否めません。


エルドアン政権の力による解決法は、市場を歪めるとして強く非難されるべきです。また、クーデター未遂事件後の死刑復活論議や非常事態宣言など独裁色を強める状況は、かつてのトルコを「取り戻す」方向に向かっていると筆者は認識しています。

吉池 威

《MT》

 提供:フィスコ

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