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【特集】高千穂交 Research Memo(2):1952年、土木建設機械の輸入販売を行う商社として設立

高千穂交易 <日足> 「株探」多機能チャートより

■会社概要

●沿革
高千穂交易<2676>は1952年、土木建設機械の輸入販売を行う商社として設立された。同年には米国バロース社(現ユニシス社)と日本総代理店契約を締結、同社製コンピューターの販売を開始した。国内エレクトロニクス商社の草分けとして、その後も日本初となるOCRシステムや商品監視システム、また自動封入封緘システム、入退室管理システム、クラウド型無線LAN装置などの画期的な商品を市場投入し、国内有数の技術商社となっている。この間、株式は2000年にJASDAQ市場へ、その後2004年に東京証券取引所2部へ、2005年に同1部へ指定された。近年では、日米の上場企業からグループ会社を買収し、RFIDシステム、東南アジアでの商品監視システム・防火システムなども取り扱っている。

●事業内容
同社の事業セグメントは、システム事業とデバイス事業に分けられており、各セグメントの売上高(2016年3月期)は、システム事業11,184百万円(売上高比率56.0%)、デバイス事業8,802百万円(同44.0%)となっている。

さらにシステム事業はセキュリティ、その他ソリューション、カストマ・サービスのサブセグメントに、デバイス事業は電子プロダクトと産機プロダクトのサブセグメントに分けられている。

(1)システム事業

a)セキュリティ(2016年3月期セグメント売上高に占める比率62.6%)
EAS(商品監視システム)、映像監視システム、ストアマネジメントシステム、ディスプレイセキュリティシステム、オフィス入退室管理システム、防火システムなどを扱っている。商品監視(万引き防止)システムの国内シェアはトップクラスとなっている。商品は主に米国センソマチックブランドで、これに監視カメラ等を複合的に組み合わせたソリューションで強固なセキュリティを実現している。これらのセキュリティセグメントの主な顧客は各種の小売業者で業態別(2016年3月期実績)は下図のようになっている。一方で買収した海外子会社(Takachiho Fire,Security & Services(Thailand)とGuardfire)は防火システムを扱っている。特にGuardfireは高度な大型防火システムに特化しており、主な顧客は発電プラントや石油化学プラントとなっている。

b)その他ソリューション(同14.8%)
主要製品は以下のようになっている。

1)メーリングシステム(35.6%):分社した高千穂コムテック(株)がスイスのカーン社製の大型メーリングシステム(封入封緘機)などを販売している。主な顧客は各種請求書や通知書を扱う大手印刷会社や株主関係書類を扱う信託銀行関連会社など。

2) RFID※関連商品(36.2%):2012年に丸紅<8002>から買収したマイティカード(株)が事業を行っている。タグ及び周辺機器の販売だけでなく開発も行っておりトータルでの利益率は高い。これから幅広い分野で導入・成長が見込まれる。

※自動認識技術の一つで、物品の情報を記憶する半導体チップと通信用のアンテナを組み込んだタグを物品に取り付け、それを電波で読み取ることにより、一点ずつではなく一度に複数の物品情報を自動的に認識できるしくみ。小売店では大量の商品の在庫管理(棚卸)の効率向上に最適で、小売店以外でも資産管理、流通管理など幅広い用途で利用可能。

3)ネットワーク関連商品(28.2%):企業ネットワークの安全・効率性を高める機器を販売している。近年では、米国シスコシステムズが買収したメラキ社製のクラウド型無線LAN装置の売上を伸ばしており、企業内に加えて小売店・商業施設、ホテルなどで採用されている。東京オリンピックに向けて増加する訪日観光客のためにWi-Fi設備の設置需要が高まることが期待できる。

c)カストマ・サービス(同22.6%)
システムセグメント内の商品の設置・保守・運用管理などの売上高。毎年の売上に伴う設置工事などに加えて一定期間のメンテナンスがあり、安定したストック型事業である。

(2)デバイス事業

a)電子プロダクト(同39.2%)
主に海外メーカー製の半導体や電子デバイス、センサー等を扱っている。主たる仕入先はアナログ・デバイセズ社、モノリシックパワーシステムズ社、ノウルズ社、オクタジック社など。ピーク時の2008年3月期には185億円の売上を計上していたが、近年では日本市場の縮小などに伴い40億円を割る規模となっている。利益率を向上させるため、技術サポートや複合的なソリューション販売に注力し、付加価値を高めている。

b)産機プロダクト(同60.8%)
快適な社会環境・生活環境づくりを行う顧客へ機構部品(スライドレール、ガススプリング、昇降システム、ソフトクローズユニット等)や電子錠などの「ムーブメント・ソリューション」を販売している。具体的な主な向け先別比率(2016年3月期の内訳比率)は、自動機が38.7%、住設が13.1%、OA/PPCが8.9%、オフィス家具が11.8%、遊技が13.6%、その他が13.9%となっている。ATM向けのスライドレールでは国内トップシェアを誇る。商社でありながら独自の設計やオリジナルプログラムによるシミュレーション解析などを実施し、顧客の要望にマッチした商品開発に取り組んでいる。2011年3月期から2015年3月期まで5期連続で売上を拡大し、安定した収益の柱として存在感を示している。2015年からは米国法人を通じて、米国住宅設備市場への参入を図っている。

(3)主な仕入先と販売先

以上のように同社は非常に多くの商品・製品を取り扱っていることから仕入先は約400社に上るが、主要製品を供給する上位20社が約60%を占める。一方で販売先も多岐にわたっており、取引先の口座数は約2,000社になるが、主要な上位顧客20社が40%を占める。特定の顧客に偏っていることはなく、顧客層は分散されている。

(4)競合、特色、強み

同社は非常に多くの商品を取り扱っているため、それぞれの分野で多くの競合会社が存在する。しかし事業全体において特にこれといった競合会社を探すのは簡単ではない。あえて個別分野での競合会社を挙げれば、商品監視システムでの(株)チェックポイントシステムジャパン、スライドレールでの日本アキュライド(株)(両社とも米国の日本法人)、半導体では規模は異なるが半導体専門商社など。またRFID分野では多くの電機メーカーやシステム会社と競合する。

同社の最大の特色は専門性の高い商材を扱っている点だろう。そのため営業社員であっても技術的に高い専門性・知識を持っており、同社の社員の40%以上が技術系出身となっている。ある意味で専門的なプロ集団とも言える。そのため、同社は売上規模は大きくはないが、売上総利益率は25%前後となっており、一般的な半導体や電子部品商社の売上総利益率(約10~15%)と比べて高い。

高い専門性を備えた社員が多いことから、単に1つの製品を右から左へ販売するだけでなく、顧客のニーズを理解してA製品とB製品にCソフトを組み合わせて最適なソリューションを提供するような提案型営業ができるのも同社の特色であり強みだろう。またそのような専門性を有していることから顧客からの信頼も厚く、顧客の要望に沿って材料段階から企画・設計を行うような場合もある。同社のそのような専門性・特殊性は売上総利益率に現れている。

このような専門性を備えたビジネススタイルというのは、ある意味では「深く・狭く」でもあったが、今後は後述の中期経営計画でも述べるように、専門性を活かしながら先行投資した子会社を十二分に活用し、グローバル市場を視野に横断的に「深く・広く」事業展開を図る計画だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)

《HN》

 提供:フィスコ

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