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2016年07月20日19時00分

【特集】「いつまで続く人手不足時代」 リクナビNEXT・藤井薫編集長に聞きました! <直撃Q&A>

藤井薫氏(リクナビNEXT編集長)

 日本経済が、バブル期以来の人手不足状態に陥っている。厚生労働省が発表した5月の有効求人倍率は1.36倍と1991年10月以来、24年7ヵ月ぶりの高水準に達した。IT技術を生かした人材の獲得競争が激化する一方、サービス業でも慢性的な人材不足状態が続いている。現在の中途採用最前線の状況について、IT業界などハイテク産業に詳しいリクナビNEXT編集長の藤井薫氏に聞いた。

●藤井薫氏(リクナビNEXT編集長)

Q1 極度の人手不足が続いています。この状態はいつまで続くとみていますか?

 中長期的には、恒常的な人材不足は続いていくと考えています。それには主に3つの要因があります。1つ目は、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)の減少です。生産年齢人口は、90年半ばからピークアウトして以来、減少の一途をたどっており、これが最も大きな構造的な要因です。2つ目は、景気連動による求人倍率の変化と産業構造のパラダイム変化、いわゆるサービス経済化です。直近起こったイギリスのEU離脱の景気に対する影響が心配されますが、今やGDPの約7割を占める内需中心のサービス業のシェアは今後も拡大することが予想されています。オリンピック景気も含め、引き続き、サービス産業の人手不足感は強まっていくと思われます。3つ目は、デジタル・インテリジェンス化によるタレント不足です。全産業がIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、アナリティクスを用い、生産性を上げる動きを加速しています。そうした新しい技術パラダイム変化に伴って、これまでにないビジネススキルやテクニカルスキルを持ったタレント人材の争奪戦が、国境を超えて過熱しているのです。仮に不景気になっても、このデジタル化の波は続いていくと思います。したがって、こうした3つの要因を合成して、今後も今の人材不足の状況は続いていきそうです。

Q2 IT分野の求人倍率が高水準となっていますが、これはなぜでしょうか?

 リクルートキャリアが発表している6月の転職求人倍率は1.80倍でしたが、職種別で見てみると、インターネット専門職(Webエンジニア含む)は、5.10倍と未曾有の人手不足が続いています。また、自動走行に使われるセンサーなどの組み込み・制御ソフトウエア開発エンジニアが4.06倍となっており、全産業においてスマート化を加速させる2大職種の人材獲得競争が激しくなっています。

 IT業界のメーン・バトルフィールドは、これまでのスマートフォンなどから、IoT、AI、それにインダストリー4.0といった分野へとパラダイムシフトが起きています。「KKD(勘と経験と度胸)」から「KDD(Knowledge Discovery in Database)」へと表現しているのですが、データベースから新たな知を発見することが、競争優位をもたらす時代を迎えています。例えば、メルマガひとつを流すにしても、これまで勘や経験に頼っていたものを、顧客の経験を向上させるために、どんな順番で何をお薦めするかについては、AIが最適な打ち手を自動抽出する時代となりつつあります。新しい20年が始まろうとしているのです。そんななか、いままでSI(システムインテグレーター)やソフトウエア専業会社といった世界にいたITエンジニアが、自動運転で沸き立つ自動車業界や、IoT技術開発を加速する電機メーカーから熱烈なラブコールを受けるといった具合に、異なる業界からの求人需要が増え続けています。

Q3 パラダイムシフトが進行するなか、一部IT系人材の賃金は高騰化しそうですね。

 IT業界のトップ級の人材の年俸は、アスリートに近い状態となりつつあります。大リーガーに何十億円の年棒を払うようなもので、トヨタ自動車 <7203> は、AI技術の研究・開発を推進する研究所を米国に設立。5年間で総額10億ドルを投資するとも伝えられています。AIの世界のトップ級の人材を集めるために、給与や開発環境や権限委譲など、IT特有のスピード感のある環境を整備する、いわゆる“労働特区”のような動きも加速するでしょうし、それによって、異なる業界への人材の流動性も高まっていくと思います。

Q4 一方で求人倍率が低い職種などはありますか?

 オフィスワーク事務職の求人倍率は0.45倍と、あまり高くないのですが、長く働ける、かつ汎用性があるため人気が高く、なかなか席が空かないのが現状です。ただ、よりスペシャリティの高い経営企画や経理、マーケティングになると有効求人倍率が1倍を超えています。また、制作・編集・ライターは0.90倍と倍率が低いように見えますが、オンライン・マーケティングでは人材不足となるなど、実際に求人倍率が低い職種を探す方が難しいほど、どこも人材不足となっています。

 顧客接点で商品・サービスの価値を換金化する営業職も求められています。例えば、フリーミアム型(基本的なサービスは無料で提供し、一部機能を有料で提供するビジネスモデル)のオンラインゲームでよりビジネスのマネタイズを加速するには、オンライン広告を提案して換金化できる営業力が必須です。ゲームなど、ヒットしたオンラインサービスにおけるセールスは、急激かつ大量な求人が立ち上がることが特徴です。デジタル関連商品の開発リードタイムが早まるなか、マーケティングや販売に向けて大量の人材を投入することが求められています。このため人材派遣や、アルバイトといった分野も高水準の需要が続きそうです。労働生産人口の減少、製造業からサービス業へと産業構造の変換、全産業のデジタル・インテリジェンスへの移行。こうしたパラダイム変化の中で、人材への需要は、地方、そして都心部ともに日本全国で、構造的に逼迫してゆくことが予想されます。

(聞き手・吉野さくら)

<プロフィール>(ふじい・かおる)
1988年リクルート入社。以来、人材事業のメディアプロデュースに従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長を歴任。2007年からリクルート経営コンピタンス研究所に携わる。14年からリクルートワークス研究所Works兼務。16年4月より現職。


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