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【特集】SDエンター Research Memo(3):フィットネス事業を中期成長エンジンとして位置づける

SDエンター <日足> 「株探」多機能チャートより

■各事業部門の現状と成長戦略

(1)フィットネス事業

a)足元の業況
SDエンターテイメント<4650>はフィットネス事業を中期成長エンジンの中核として位置付け、「フィットネス中期ビジョン」を策定している。そのけん引役としてグループ型のダイエットプログラム「FIVE」に期待をかけていたが、FIVEはテストマーケティングだけで開発中止となった。2016年3月期は売上高2,207百万円(前期比3.3%減)、営業利益227百万円(同14.5%減)と減収減益で着地した。営業利益率は1.3ポイント低下し10.3%だった。

2016年3月期は店名変更1周年キャンペーンや、入会3ヶ月以内の在籍者に対する無料サポートシステムの実施などの施策を通じて入会者増と、定着率向上に努めた。しかし、不採算店舗の閉鎖(ハーティノルベサ店、SDフィットネス新所沢店)の影響もあり、売上高は前期比減収となった。利益面では、減収要因に加えてFIVEの開発及び多店舗展開の計画を中止したことに伴う費用増加があり、前期比減益となった。

b)成長戦略
同社はFIVEの開発は中止したものの、フィットネス事業を成長エンジンとして中長期的成長を図る成長戦略自体に変更はなく、「フィットネス中期ビジョン」についても、2020年度のフィットネス事業の売上高100億円、同営業利益20億円という業績目標も含めて従来から変更はない。

FIVE開発の元々の狙いは、見学入会率・退会率等のKPI(重要指標)の改善向上策のうち平均単価向上の一つの策として準備されたものである。FIVEに代わる新たな成長の施策として、同社はMC付きで参加者グループを盛り上げる「スピニングバイク」、フィットネスジム内個人レッスン型ダイエットプログラム「SLIT」、加圧プログラム等の有料プログラムの推進とオリジナルサプリメントの開発販売をあげている。

SLITの大きな特徴は、フィットネスジム内のオープンスペースに設置してある既存の器具を利用することとマンツーマンの指導体制であることとにある。同社側からすれば、基本的に設備投資は不要で、その分より大きなリターンを期待できる。

SLITは既述のように設備投資を伴わないため、ほぼ全店舗にプログラムを導入済みだ。足元の販売動向は順調に推移しているもようだ。現状はトレーナーが店舗展開の制約条件となっているため、同社では人材教育に力を入れ、トレーナーの育成・増員を急ぎ、従来からの加圧プログラムに加え、SLITのキャパアップを図っているところだ。

フィットネス事業におけるKPI(重要経営指標)の1つに退会率がある。これをいかに低く抑えるための施策として足元、効果を発揮しているのが「スピニングバイク」だ。これはグループで大音量の中でバイクを漕ぐプログラムだが、先行する秋田広面店では、全クラス満員の状態が続いている。これは1回500円の有料プログラムとなっている。設備投資負担を考えれば、直接的な収益インパクトは限定的だが、休眠会員の掘り起こし、ひいては退会率低下(継続率の上昇)をもたらす効果が認められており、他店への展開や新プログラムへの発展の可能性などが検討されるとみられる。

事業の成長という点では、物販も重要な柱だ。同社はかねてオリジナルサプリの開発に取り組んできたが、自社製品への切り替えが完了した結果、収益性を大きく改善させることに成功している。今後、販売が伸びてくれば、利益への貢献度も大きなものになると期待される。

弊社では、同社のフィットネス中期ビジョンで掲げられた業績目標の実現には、店舗数拡大も必要なのではないかと考えている。同社では有料プログラム収入や物販収入そのものの増収とともに、有料プログラム浸透に伴う顧客とのコミュニケーション機会の増加による「退会者の出にくいお店作り」ができることで、既存店の収益額並びに利益率を上げ、新規出店可能な水準に向上させるのを目標としている。この基本のほかに、店舗数拡大に関して、同社ではマルチブランド化と新サービスの導入という視点から、新業態の店舗展開も計画している。具体的な新ブランドや業態の中身は明らかにされていないが、24時間オープンのジムや特定のプログラムに特化したジムなどが想定されているようだ。弊社では、出退店が機動的にできるような契約内容や規模を維持することが重要な条件になるのではないかと考えている。今後の新型店舗展開の動向を見守りたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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