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【経済】年金運用への批判はあまりにも近視眼的


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年度に、5兆数千億円の運用損失を出したことが明らかになった。 これに対しては「アベノミクスの失敗で国民の大事な年金が5兆円も溶けた」などという声や、年金運用の株式割合の増加対する批判が多く見られる。野党には参議院選挙に向けて争点化しようとする動きもあるようだ。
 しかし、GPIFは前年の2014年度には約15兆3000億円、第2次安倍内閣発足後の累計では約40兆円もの運用益をあげている。
 トータルの運用益を無視して直近の損失のみを問題にするのはいかがなものか。株価が上がっている時には「恩恵を受けるのは富裕層のみ」と批判し、株価が下がると国民全員の年金に大打撃が加えられたと批判するのもおかしな話だ。
 年金基金の運用は目先の株価に一喜一憂するものではなく、長期的な観点から考えるべきだ。株価の上下は必ずあり、◯◯ショックなどは繰り返し起こる。しかし、例えばリーマン・ショックのような何十年に一度のショックですら、その時に投資していればその後大きな収益が得られている。また、超長期的にみると、世界経済は人口の増加に比例して着実に成長している。
 そもそも日本の年金基金は他国の年金基金と比べて著しく国債運用に偏っていた。そして、昨今の世界の「国債情勢」は超低金利・マイナス金利となっているため、国債で安全かつ着実に増やすということも非常に難しくなっている。もとより、消費増税が先送りされ格付けが引き下げられた日本国債の暴落リスクも当然あり、国債でも絶対安全などということはないのである。
 長期的な観点から、バランスをとって株式等(海外含む)の比率を高め、機動的かつ柔軟に運用して行くことは時代の当然の要請であったわけであり、足元の株価下落・運用損のみを取り上げて騒ぎたてるのはあまりにも近視眼的といえよう。
《YU》

 提供:フィスコ

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