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【経済】【フィスコ・コラム】7月は年後半のヤマ場

ドル円 <日足> 「株探」多機能チャートより

早いもので、2016年も前半が終了しました。ドル・円は120円26銭でスタートした後、年初から激しい円高に見舞われ、足元では一時的ながらとうとう節目の100円を割り込みました。特に、6月の市場の混乱は歴史に残るのではないでしょうか。年後半のヤマ場である7月も重要イベントが目白押しです。なかなか予測は困難ですが、あえて見通しを立ててみましょう。


6月23日の欧州連合(EU)離脱を争点とした英国民投票では、投票前のキャンペーンでEU残留支持を訴えていた英労働党の下院議員が右翼的思想の男に殺害された事件が、英国の残留を決定づけたと思われました。しかし、まさかの離脱。24日の金融市場は世界的に大荒れとなりました。ポンドは暴落し、リスク回避的な動きが強まりドル・円は記録的な下げ幅で2013年11月以来、2年7カ月ぶりに節目の100円を割り込みました。


英国のEU離脱を受けた先行き不透明感は後退しておらず、7月はリスク回避的な動きからドルと円の買いが続きそうです。ドル・円は7月も引き続き日米の金融政策が焦点となるでしょう。英国民投票前は、英国のEU残留決定なら米7月利上げとの見方が市場に広がっていましたが、離脱を受け消えました。仮に残留だったとしても7月26-27日のFOMCで引き締めなかったのではないかと筆者は考えます。


というのは、英国民投票前に、タカ派で知られるブラード・セントルイス連銀総裁が講演で「向こう2年間で利上げは1回」と発言したほか、イエレンFRB議長も議会証言で引き締めに慎重な姿勢を示していたからです。7月8日発表の6月雇用統計は、非農業部門雇用者数は+18万人の予想ですが、5月が前月比+3.8万人という記録的な低水準にとどまったことを考えると、6月分の統計が想定通りでも7月利上げの根拠にはならないでしょう。


ドル買いの最大の拠り所は、現時点の市場コンセンサスである年内1回の引き締めの可能性が示されるかどうかです。イエレン議長の米国経済を楽観視した発言により株高が誘発され、それに反応したドル買いが続いていますが、7月に発表される4-6月期決算で米国企業の低迷ぶりが示されれば、この拠り所も失うことになるでしょう。そうなると年1回の利上げも危うくなり、ドル売りに振れやすくなります。このタイミングで再びドルは100円を割り込むかもしれません。


一方、日銀は4月27-28日の決定会合で追加緩和策が議論されたことが議事録から明らかになり、7月28-29日開催の決定会合での緩和実施が期待されています。このため、緩和見送りの場合にはリスクオフの円買いに振れそうです。ただ、逆に緩和に踏み切っても効果が薄いとみられれば警戒感による円買いに振れる可能性もあります。いずれにしても、7月の日銀決定会合は円買いの手がかりになるのではないでしょうか。


政治情勢も重要なイベントです。7月10日投開票の参院選は、与党の勝利が予想されてはいるものの「20歳以下の若い世代は自民党に批判的」(自民関係者)との声が聞かれ、「アベノミクス」に厳しい審判が下る可能性もあります。また、11月8日の米大統領選に向け、共和党は7月18-21日に、民主党は同25-28日にそれぞれ党大会を開催し、指名候補を正式決定します。英国民投票を教訓とするなら、本選は「トランプ対クリントン」と決めつけない方がいいのではないでしょうか。「波乱」の年は、まだ半分残っているのですから。

吉池 威

《MT》

 提供:フィスコ

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