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2016年07月01日16時05分

【特集】あらた Research Memo(5):インバウンド消費の動向が読みにくいことから保守的な計画

あらた <日足> 「株探」多機能チャートより

■今後の見通し

(1) 2017年3月期見通し

あらた<2733>の2017年3月期の連結業績は売上高が前期比0.3%増の679,000百万円、営業利益が同15.8%増の6,600百万円、経常利益が同15.3%増の6,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同11.0%増の3,600百万円と増収増益を見込んでいる。

インバウンド消費の動向が読みにくいことから、保守的な計画となっているが、4月は前年同月比で10%増、5月は6%増と会社計画を上回る滑り出しとなっている。4月については、熊本地震の発生で備蓄ムードが全国的に高まったことが高い伸びにつながった要因と考えられる。紙おむつなどインバウンド需要の反動減が出ている商品もあるが、日用雑貨、化粧品全体の消費動向としては堅調が持続しているものと考えられる。このため今後、市場環境に大きな変化がなければ、業績は上方修正される可能性が高いと弊社では見ている。

収益性に関しても引き続き、物流コストや間接コストの低減、受託物流事業の収益改善により向上が見込まれる。物流費では、返品作業の仕組みを変えることでコスト削減を進めていく。従来は、各物流拠点の返品業務(小売店から返品された商品をメーカーごとに仕分けて配送する業務)に関して、配送を返品先メーカーの指定トラックで行っていた。これを同社が配送業者を集約化することでコスト削減を実現していく。既に、前期よりこうした取り組みを始めており、今期はその取り組みを横展開していく計画だ。また、間接コストの集約化も継続して行っていく方針で、従業員数の抑制により人件費率の改善が見込まれる。受託物流事業に関しては、前期に事業全体で収益化したものの、まだ不採算の拠点が2拠点残っており、今期はすべての拠点の収益化を目指していく。引き続き、取引条件の見直しや庫内での生産性向上を図ることで、収益性の改善を進めていく。前期ほどの増益要因とはならないものの、今期も増益要因として寄与することが見込まれる。

(2)転換社債型新株予約権付社債の発行と自己株式取得について

同社は6月に転換社債型新株予約権付社債の発行と合わせて自己株式の取得を実施した。調達額は60億円で、資金使途としては、関東地域の物流機能強化を目的とした千葉支店関東センターの増床のための設備投資として1,174百万円、社内の経営管理システムのシステム開発投資に800百万円、有利子負債の返済に2,000百万円となっているほか、6月に実施した自己株取得(89.72万株、2,122百万円)の資金として2,000百万円が充てられた。今回の資金調達によって、資本コストの低減が図られ、ROEやEPSの上昇効果が見込まれる。今期業績が会社計画通りに推移したとすれば、ROEで6%、D/Eレシオで1倍という中期経営計画の目標値を達成できる見通しだ。なお、転換価格は2,602円で潜在株式数は、2016年5月末の発行株式総数1,586万株の約14%となる。

(3)中期成長戦略

2015年3月期からスタートした中期3ヶ年経営計画では、「次世代型卸商社」として更なる成長を目指していく基本方針を打ち出し、経営目標値として2017年3月期に売上高679,000百万円、経常利益6,700百万円、ROE6.0%、D/Eレシオ1倍を掲げてきた。このうち、売上高、経常利益に関しては上回る公算が大きく、ROEやD/Eレシオについてもほぼ計画水準となる見通しだ。中期経営計画で取り組んできた成長戦略、並びに収益性の向上や財務体質改善に向けた施策が順調に進み、成果となって表れているものと考えられる。

2018年3月期からスタートする新中期経営計画はこれから策定してくことになるが、引き続き従来の戦略を踏襲し、収益拡大を進めていくことになりそうだ。

a)売上高拡大施策
売上高の拡大施策としては、販売地域・チャネルの範囲拡大、既存顧客での取引シェア拡大、商材ジャンルの拡大が挙げられる。

販売地域・チャネルの範囲拡大では、インターネット流通市場における取り組みを強化している。国内EC市場の拡大に伴い、無店舗型のEC事業者向け売上高が増加傾向にあるほか、2015年以降は中国からの越境ECに関する引き合いも増加していることに対応する。中国でもEC市場が急成長しており、化粧品やベビー用品を中心に日本ブランドの商品が売れているためだ。同社では与信リスクがあるため、取引開始に当たっては前払い決済により、貸し倒れリスクを排除したうえでスタートし、実績など蓄積された段階で掛売りに移行していく方針としている。訪日インバウンド需要の一部が越境ECにシフトしつつあり、今後は中国だけでなくその他の地域でも伸びていく可能性があるだけに、同市場をいかに取り込んでいくことができるかが売上成長のポイントとなる。

一方、アジア市場への展開については、今回の中期経営計画の中で想定どおり進まなかった数少ない取り組みの1つで同社の課題となっている。中国では事業規模を縮小し、取扱商品をペット用品などに絞り、取引先も大手チェーンを中心にして、効率性を重視した経営を行う方針に切り替えている。このため、当面はジャペル香港子会社との連携を強化していく方向となる。また、タイについては現地での日系小売企業の販売支援の拡大に加えて、日系企業以外の顧客開拓を進めていくことができるかが課題となり、次期中期計画での施策が注目される。

既存顧客内のシェア拡大施策については、卸会社としての本来のサービス機能である高い精度での物流サービスや付加価値情報の提供などを、顧客店舗と取引先メーカーの間に立ち最適化していくことで、互いの信頼関係をより強固なものとし実現していく。また、「売れる店舗づくり」に向けた取り組みも、子会社のインストアマーケティングや関連会社である電通リテールマーケティングなどと連携して推進していく方針で、顧客店舗の売上アップを支援していく。また、仕入先メーカーに対しては、同社の商品販売情報を収集・分析して、価値ある情報として提供するサービスを前下期より開始している。

商材ジャンルの拡大施策としては、今後需要の拡大が見込まれるシニアマーケットを対象とした商品の取扱いを強化していくほか、PB商品である「アドグッド」ブランドの商品開発を強化し、売上拡大につなげていく。「アドグッド」ブランドでは、市場トレンドを先読みし、顧客ニーズに合致した「本当に求められている商品」の開発を行っていくことを基本方針としている。売上高としては開発アイテムの増加とともに着実に拡大しており、2017年3月期は35億円程度を見込んでいる。自社開発品となるため収益性も高く、売上規模が拡大していけば利益率向上にも寄与することになる。

b)収益性向上施策
収益性の向上施策としては顧客ごとの収益管理を行っていくことでの総利益率の改善や、物流コスト及び間接コストの低減がある。物流コストの低減では、拠点の再編による効率化を引き続き進めていくほか、2018年3月期以降は首都圏や九州エリアでの増設、及び関西圏でも老朽化した施設の建替えなども予定している。

一方、間接コストの効率化に関しては、各支店で行っている経理業務や受発注、仕入業務などの集約化を進めていく。事務処理センターに関しては現在の7拠点を今期中に5拠点に集約し、業務生産性を10%程度改善することを見込んでいる。また、人員に関しては引き続き採用を抑制していく方針で、自然減もあって売上高に占める人件費率は低減傾向が続くものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《YF》

 提供:フィスコ

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